(社福)特別区人事・厚生事務組合社会福祉事業団 更生施設「千駄ヶ谷荘」 吉峯 隆泰さん
裏切られても裏切らない
掲載日:2018年3月29日
2018年2月号 福祉のおしごと通信

吉峯 隆泰さん

 

あらまし

  • 異業種での勤務経験から生きた助言を活かし更生施設で働く吉峯隆泰さんにお仕事の魅力を伺いました。

 

 

きっかけはある日突然

大学時代は、「どうやって人生を生きていくか」ということに関心があり、専攻学科以外で、福祉科目も学んでいました。この経験から、「いずれは福祉で働きたい」との思いもありましたが、一般企業で働く経験も人生にとってよりプラスとなると考え、卒業後は一般の会社で働くことにしました。

 

大学卒業後、整体、不動産業などを含め数回転職しました。(社福)特別区人事・厚生事務組合社会福祉事業団(以下、事業団)に入職する前の整体の会社で、業績不振により残るか辞めるかの2択を迫られました。職業の選択を迫られる中、結婚を控えていた私は、偶然にも事業団の募集があることを知りました。福祉は未経験でしたが、学生からの「いずれは」と考えていた思いもあり、即応募しました。

 

どんな経験でも活かせる仕事

指導員として利用者の考えや思いを汲み取り、どのように就労や、アパート生活へとつなげていくか。私の場合、始めはアセスメントを行わず、利用者と一緒に課題を考えます。生活習慣などの課題は、大抵は入所してから見えてくるからです。また、これまでの経験よりも、利用者が今後どのように生きていきたいかが、支援上でも大切であると考えるからです。

 

この仕事は、これまで培った転職経験等がすべて活かされると感じます。整体の経験は、利用者が清掃の仕事で腰を痛めた場合などに、どう気をつければいいかを伝えられます。また、私自身、倒産した会社の事後処理を経験し、会社の選び方、仕事をどう見極めるかなど、仕事選びについてアドバイスできます。

 

振り返ると私は「人の役に立つ」仕事を選んできたのかもしれません。生きた助言ができるのは、さまざまな経験をしてきたからこそだと思えます。

 

何度でもかかわり続ける

施設で長く勤務すると、これまでに担当した利用者が、不本意にも退所後に戻ってくることがあります。本人にとって、千駄ヶ谷荘での日々は「良い記憶」として残っていて、再度チャレンジできる場所として選択してくれたのではないかと思っています。

 

厳しい世間を生き抜いてきた方達だからこそ、利用者の尊厳を考えます。

また、課題を指摘しつつ、利用者から依頼や質問など求められたら、必ず応じることを心がけています。

 

結果、その利用者とは前回よりも更に関係を深められ、それまで見えなかった課題解決への支援ができ、その後、アパートへの転宅につながりました。そして、「最初、もう施設は嫌だと思ったけど、信じて戻ってきて良かった」と最後に話してくれました。嬉しく思うと同時に、私だけの力ではなく、職員全体で良好な関係性を持とうとかかわってくれた結果でもあります。

 

しんどさを超えたやりがい

最初は、人間関係が得意だとは思っていませんでした。ですが、この仕事を長年続けてこられたのは、人の人生にかかわっていける素晴らしい職業だからだと思います。人にかかわれる喜び、やりがいを感じられることが、指導員の仕事の醍醐味だと思います。

 

福祉はサービス業に分類されますが、利用者とは対等な立場です。だからこそ、利用者に向き合い、信頼関係をつくりながら、利用者に怒られることもあるし、時には言うべきことをきちんと言うバランス感覚も必要になります。

 

利用者への良いケアは、良き職場環境があってこそ。多職種で同じ目標をもって、お互いに協力しあっているからこそ、利用者に対する自立に向けた支援ができるのだと思います。

 

この仕事はしんどいことがたくさんあります。ですが、人とかかわった分だけしんどさを超えた「やりがい」があります。これらからも、利用者とともに前を向いて、誠実に自立への支援に取組んでいこうと思います。

 

※千駄ヶ谷荘は、生活保護を受けている方が入所する更生施設の中でも「就労特化型」の男性専用施設。

 

プロフィール

  • 吉峯隆泰(Takayasu Yoshimine)さん
  • (社福)特別区人事・厚生事務組合社会福祉事業団 更生施設「千駄ヶ谷荘」 主任・指導員
    平成19年に入職、24年4月から千駄ヶ谷荘にて現職。
取材先
名称
(社福)特別区人事・厚生事務組合社会福祉事業団 更生施設「千駄ヶ谷荘」 吉峯 隆泰さん
概要
(社福)特別区人事・厚生事務組合社会福祉事業団
http://tswa-swc.or.jp/
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