(社福)若竹会
事業の継続や早期再開を念頭に、日頃からの備えをすすめる
掲載日:2018年10月27日
ブックレット番号:7 事例番号:83
岩手県/平成30年3月現在

 

 

 

 

【運営施設概要】                          平成29年9月現在

 

 

【被災状況】                         

 

 

発災時の状況について

(1)初動・連絡・安否確認

東日本大震災発災時、市街地の法人本部にいた菊池さんは、近くのコンビニエンスストア店員の携帯電話で8mの津波が来ると知り、近くのはあとふるセンターを経由して法人本部から500mほど離れた行政センターに避難。津波が来たことを知らないまま車で市内に入ろうとした人たちに、通行止めや迂回路の情報を提供するなど、交通整理をしている間に夜になってしまいました。その後、山間部を回り施設の状況を確認。結果として、運営しているグループホーム18か所のうち4か所が津波により全半壊したことが分かりました。

「発災後2~3日は、事業所ごとに目の前にいる利用者の面倒を見ることで精いっぱいだった」と菊池さんは当時をふり返ります。

通所事業は一時閉鎖とし、3日目になってようやく法人としての大きな方針や連絡体制が整い始め、とにかく職員が集まって情報共有をしようと、障害関係事業所の代表者を集めて定例ミーティングを行うことにしました。

行政との連絡は、市役所の課長職級職員と菊池さんが個人的につながっていたため、携帯電話のショートメールなどでやり取りをしていました。その他の情報は、避難所に行って把握したり、職員からの伝言等で把握したりするような状況でした。県社協と連絡が通じたのも3日目のことでした。その時点では、ノートパソコンの外部モバイル機能を使用して、テレビ局・ラジオ局・県社協などに必要な情報をメールで発信していました。通信手段が限られ、かつ不安定な状況のなか、すべての利用者の安否確認がとれたのは、発災から2週間後のことでした。

一部の職員には業務用携帯電話を貸与していましたが、携帯電話基地局が被災したため、まったく使えない状態でした。複数の施設を運営する法人にとって、移動手段や通信手段が限られた中での情報収集は必要以上の時間を要するため、それが法人としての迅速な意思決定にとって大きな課題となります。

 

(2)職員への対応

震災では非番の職員1名が犠牲となり、また多くの職員が身内を亡くしたり、家屋被害に遭っていました。そこで、自宅・親族などが被災した職員に対する配慮として、震災から当面の間、津波による被災地域に居住する職員の勤務を免除しました。精神的な配慮が必要だっただけでなく、家庭環境が落ち着かなければ通常業務に就くことは困難だと考えられました。さらに、メンタルケアを兼ねて全被災職員と面談のうえ、3月末まで特別休暇を付与するとともに、発災対応時の時間外手当など支給するなどしました。

一方、少ない職員で一定のサービス提供を続けるため、非常時体制をとりました。通所系のサービスは休止し、入所系のみ常時ケアする勤務体制に変更しました。また燃料が枯渇しており通勤にも支障をきたしていたため、職員用送迎バスを運行するなど労働力確保のための取組みも行い、事業を継続しました。

 

震災時対応を検証しBCPを策定

震災当時、若竹会には危機管理マニュアルはありましたが、これだけ大きな津波への対応は想定していませんでした。そのため、各施設では居合わせた職員が、都度起こったことに対してその場で判断し、対応していきました。

菊池さんは震災を通じて、日頃からの備えが最も大事なポイントだと強く思いました。「関係機関・他法人などとのネットワークづくりは、災害が起こった後では間に合わない。そういった関係づくりも含めた事前の備えを平時にどれだけ準備できるのかが、事業継続や早期の事業再開、再建と直結する」と言います。

若竹会では、震災時の対応をチェックすることこそが災害に備えた取組みの基礎になると考え、さまざまな視点から検証作業を行いました。そして、検証結果をふまえた「非常災害等対策計画」(BCP)を平成24年8月に策定しました。

BCPの基本方針は、「利用者及び職員の生命を守り、継続的・安定的にサービスを提供する」ということと「地域の災害拠点となる」という二本柱です。まずは生命を守るということを最優先で考え、そのあとに生命を維持するためのインフラを確保する流れになっています。さらに他施設利用者などの要配慮者や地域住民を支援する災害拠点となることがめざされています。

策定後はPDCAサイクルに基づいて年1回の見直しを行い、改訂を続けています。「災害はめったに来るものではないので、PDCAのDは避難訓練や炊き出し訓練、机上訓練などを通じて見直していかないと使えるものにならない」と菊池さんは考えています。そして、「施設は利用者の命や安全を預かっているので、サービスを止めることができない。また、お年寄りや子どもをデイサービスや保育園に預けないと働くことができない人もいるので、社会福祉法人は人々のインフラの一翼を担っているという認識が必要」と指摘します。

 

■震災時の事業所ごとの動きをまとめた資料と改定を続けているBCP

 

取材先
名称
(社福)若竹会
概要
(社福)若竹会
http://www.wakatakekai.or.jp/
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