神達五月雄さん
あらまし
- 荒川区男性介護者の会「オヤジの会」の副会長として中心的な役割を務めている神達五月雄さんにお話しいただきました。
両親の介護をしているときに知った男性介護者の会
平成9年頃、同居している父がうつ病・狭心症を立て続けに発症し、介護が必要な状態になりました。父の介護は、足の悪い母が主に担っていました。私は会社勤めで遠方への出張も多い生活をしていたのですが、母一人で父の世話をするのは負担が大きいため、さまざまな場面で介護の手助けをするよう努めました。その後、父は約3年間の在宅介護を経て、自宅で亡くなりました。
父を看取った直後から母が急速に弱り、これから母の介護が始まるのだと予感しました。今度は私が母を介護しなければならないと思うと、父の時とは違ったプレッシャーを感じました。仕事を変えて、自宅にいる時間を多くとれるようにしました。このような時に、「オヤジの会」を知り、介護をしている男性の方たちの経験を聞きたいと思い、入会しました。
「オヤジの会」は、偶数月に一回の「定例会」と、奇数月に一回の「サロンM」が主な活動です。「定例会」は、学習会やセミナーと懇親会がセットになっています。懇親会では少しだけお酒の力を借りて、愚痴や本音を出し合っています。「サロンM」の日は、地域包括支援センターの方も同席し、テーマを設けずに最近の介護の困りごとや自分のことなど、男同士でなんでも語り合える場にしています。
私が入会してから18年以上が経ちました。会員は高齢の方が多く、この間、参加メンバーの顔触れも大分変わりました。世話役の方たちも代替わりして、いまは私が副会長として活動しています。
活動を通して男性介護者の弱みを知る
「オヤジの会」に入って、介護をしている男性が大勢いることを知りました。荒川区内だけでなく、都内・都外からの参加者もいました。参加する男性介護者にはいくつかの共通する弱みがあることもわかってきました。
・家事や日常の買物が苦手
・自分がきちんとやらなくては、と常に完璧を求めて行き詰まる
・地域の中に溶け込めず、愚痴や弱音を吐き出せる息抜きの場を見つけられない、などです。
地域社会と接触する機会を上手につくれずに、心を開いて話し合える相手がいない、そして、家族介護を一人で抱え込んで悩んでいるオヤジの姿が浮かび上がります。私の場合は地域の中にネットワークを持っていたので、孤立や孤独を感じたこともありませんでした。それでも母の介護に疲れて嫌になったり反省したりの繰り返しのなか、苦労を気兼ねなく共有する場を渇望していました。
「男性介護者の会」の存在意義を実感
現在は、さまざまな地域で介護者の会が立ち上がって活動をしています。そうした会の参加者のほとんどが女性です。そのような中に男性介護者が入っていっても、素直に自分の弱みを見せることができません。
男性だけの「オヤジの会」に参加する方も、最初はなかなか自分から話しだすことができません。何度か参加しているうちに、他の男性介護者の方たちも自分と同じような悩みを抱えているんだとわかってくると、安心して徐々に自分の話をするようになります。
介護をしていれば失敗することはあります。イライラすることもあります。でも、それを抱え込まずに誰かに話してしまうことができるかどうかはとても大きな違いです。小さな失敗も一人で抱え込めばストレスになりますが、誰かに話せば笑い話になるんですよ。肩の力を抜いて語り合える場がとても大切だと実感しています。
- 荒川区男性介護者の会「オヤジの会」
- 介護保険制度がスタートする前の平成6年に設立されました。介護は家族が担うものとされていたなかで、家事に不慣れな荒川区の男性介護者たちが「一度、介護をしている男性だけで集まろう」と荒川区の社協や保健所のMSWの支援を受け誕生しました。
http://www.arakawa-dansei-kaigo.jp
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