(社福)国分寺市社会福祉協議会
「福祉総合相談窓口」は相談を受けとめるツールの一つ。地域福祉コーディネーターのアウトリーチによる幅広い相談、既存の相談支援機関による相談の連携強化と合わせることで、包括的な相談支援を構築する。 ―国分寺市社協における重層的支援体制整備事業の取組み
掲載日:2023年11月9日

 

左から 国分寺市社会福祉協議会 地域福祉コーディネーター 山崎祐佳さん

                地域福祉コーディネーター 川端真紀さん

          地域福祉課長 北邑和弘さん

               マスコットキャラクター ふくすけさん

                地域福祉コーディネーター 野村拓夢さん

                 地域福祉コーディネーター 川合真由美さん

 

 

国分寺市は、令和5年度から「重層的支援体制整備事業」を本格実施しています。市では地域福祉計画に基づき、令和元年度から国のモデル事業に手を挙げて「包括的支援体制構築事業」を社協へ委託し、東西2圏域に1名ずつの地域福祉コーディネーターを配置しました。さらに、令和3年度からは重層的支援体制整備事業の「移行準備事業」に取り組み、地域の関係機関との共通理解を深めながら多機関各事業をはじめとする事業を試行してきました。合わせて準備期間を通じて計画的に人員体制を増員し、本格実施にあたっては、地域福祉コーディネーターは東西2圏域に4名まで増員し、市にも直営の相談支援包括化推進員を配置しています。

 

国分寺市社協は平成18年度から小学校区を基盤とした小地域福祉活動「ここねっと」を推進してきました。それはボランティアセンターの地区担当の職員が小地域に出向き、既存の地域活動との関わりを深めながら新たな担い手にもつなげる取組みを積み重ねるもので、その後の地域福祉コーディネーターの活動の礎となっています。

 

重層的支援体制整備事業では、地域福祉コーディネーターは週に1回市役所第2庁舎1階に開設される「福祉の総合相談窓口」で相談に当たり、「どこに相談したらよいかわからない」といった困りごとに対応しています。他の曜日は地域へ積極的に出向き、相談を受けとめて、相談内容に応じて適切な支援機関につないだり、地域でのネットワークの構築、地域力の強化の推進に取り組んでいます。また、令和5年2月に開催した「コーディネーター連絡会」では、重層的支援体制整備事業で包括的相談支援を担う相談支援機関に呼びかけ、複合的な課題を抱える世帯の事例検討を通して、各機関のもつ役割の相互理解を高めました。国分寺市では「福祉の総合相談窓口」に複雑化・複合化した課題を集約して解決するのではなく、地域福祉コーディネーターによるアウトリーチ、そして既存の分野別相談支援機関の持つ力を活かして市内全体の総合相談の機能を高めていこうとしています。

 

国分寺市の重層的支援体制整備事業の全体像

 

Ⅰ 国分寺市における地域福祉計画、地域福祉活動計画

1 市内の圏域とさまざまに取り組まれてきた地域活動

東京都のちょうど重心に位置する国分寺市は、人口128,401人(令和4年12月1日現在)の都市。市内は大きくは「日常生活圏域」である東西の2圏域に分けることができます。社協の地域福祉コーディネーターもその2圏域に配置しています。「東圏域」は、国分寺駅を中心に栄え、商業施設も多く、都心に向かうベッドタウンの一つとしてファミリー層が暮らし、それに伴い社会資源も多くあります。子ども食堂などの活動も盛んです。「西圏域」は、国立駅を中心とした街並みに農地や野菜の直売所などが多く広がっています。そうした景色を残しつつもこちらの圏域では住民層の世代交代が始まっており、農地だった土地に戸建ての家が建つようになり、新しい住民も暮らし始め、小学校のクラスも増加の傾向にあります。

 

こうした2つの特徴のある圏域とともに、市内には、さまざまな地域活動のための圏域があります。例えば、地域包括支援センターは市内に6か所あり、5つの中学校区圏域には50年以上の住民参加活動を重ねてきた5つの公民館があります。そして、10の小学校圏域では社協が小地域福祉活動である「こくぶんじコミュニティネットワーク(ここねっと)」を推進してきました。

 

  圏域 主な活動
ご近所、自治会・町内会圏域 地域活動の発見、共有、見守り、声かけ、防犯・防災等
小学校圏域(10地区) 社協の「ここねっと」などの小地域福祉活動
包括区圏域(6地区) 6つの地域包括支援センター、6つの地域センター
中学校圏域(5地区) 5つの公民館活動における住民参加活動
日常生活圏域(2地区) 民生委員・児童委員協議会の圏域(東部地区・西部地区)、

地域福祉コーディネーターを配置している圏域

 

 

2 小地域福祉活動「こくぶんじコミュニティネットワーク(ここねっと)」

国分寺市社協では『第2期国分寺市地域福祉活動計画』(平成18~23年度)において、地域の特性に応じたコミュニティづくりをすすめるため、「こくぶんじコミュニティネットワーク(ここねっと)」の推進を計画に盛り込みました。市内には130を超える自治会・町内会があり、自治会等ごとにその規模も異なります。そうした中、小学校圏域(10地区)を一つの基盤とし、さまざまに取り組まれている地域活動のネットワークづくりをめざしました。そこで、社協では当時の「地域ボランティア担当」の職員4~6名が10の圏域を分担し地区担当として受け持ち、積極的に地域へと出向きました。この「ここねっと」は、小地域に何かメンバーを固定化するような協議体を作ることが目的ではありません。すでに自治会や公民館による長年の活動が盛んな地域もあります。そうした地域では、既存の会合に社協職員が参加させてもらい、例えば、「行事を実施したいが担い手が不足している」といった課題があれば、社協が市内の大学生たちに声をかけて新たなつながりを作ったこともありました。

 

そもそも職員一人ひとりが担当地区をもつことは、継続的にその地域と関わる中でさまざまな関係者からも顔を覚えてもらったり、そのことを通じて情報も入りやすくなります。こうした地域に出向き、もともとある地域の力を大切にしながら小地域福祉活動をすすめるというノウハウは、その後の地域福祉コーディネーターの活動の礎になったと考えられます。

 

3 市の地域福祉計画と社協の地域福祉活動計画が連携

国分寺市では、平成27年9月に『国分寺市地域福祉計画』を策定し、令和6年度までの10年の計画期間を「前期」「中期」「後期」に分けて各期間に『実施計画』を策定しています。その『実施計画』では、市として「包括的支援体制の構築」をめざし、「地域福祉の担い手の育成」「地域包括ケアの推進」「福祉の総合的な相談窓口体制の推進」が重点施策に盛り込まれました。一方、社協では、コロナ禍には交流機会の喪失や減少、複合的な課題を持つ世帯の表面化等の課題が顕在化した中、コロナ禍に社協が取り組んできた生活福祉資金特例貸付、住宅確保給付金、生活困窮者等への緊急的な食料支援、おうちでできるボランティア事業、食料品の無料配布と暮らしの相談会をセットに実施した「コロナ禍の生活を応援します」事業などの経験もふまえ、令和4年3月に『第4期国分寺市地域福祉活動計画』を策定。そこでは、市の計画もふまえ、多様な地域課題に対応していく「包括的、重層的な支援体制の確立」を目標に掲げました。両計画の策定には社協と市からそれぞれ委員を出し合っています。

 

なお、市では社会情勢の大きな変化をふまえ、現行の地域福祉計画の計画期間を1年間短縮し、次期計画を令和6年度からの計画として策定する予定です。そのため、市は令和5年度から重層的支援体制整備事業を本格実施する際、『国分寺市重層的支援体制整備事業実施計画』を令和5年度の単年度の計画として策定しました。今後の取組みについては、令和6年度から開始となる次期地域福祉計画と一体的に策定する予定です。

 

 

Ⅱ 包括的支援体制構築に向けて地域福祉コーディネーターを配置

国分寺市では、平成27年4月の生活困窮者自立支援法の施行にあたり、社協に自立相談支援事業等を委託しました。その頃、市では平成30年の機構改革で「福祉保健部」が「福祉部」と「健康部」に分かれ、「健康部地域共生推進課」が新たに設置されました。この組織変更を通じて当時、市から社協へ委託事業が増えていた中、社協に関わる所管課が複数にわたるようになったため、改めて社協との連携窓口は「地域共生推進課」が中心に担うようになりました。

 

地域共生推進課は、市の地域福祉計画で重点施策の一つに掲げられた「福祉の総合相談窓口の体制整備」も所管しています。この「総合相談窓口」については、地域福祉計画の『実施計画』(中期)の進捗状況評価で、「各分野における相談支援の体制整備が図られていることから、新たな窓口を設置するよりも、地域に根差した各相談支援機関や団体等の連携の強化による整備としていくことが必要」とされました。そうした体制を実現するため、庁舎内の担当部署間の情報共有と連携を強化するべく、平成30年度に「相談支援総合調整会議」(部課長による調整会議、係長による担当者会議)が庁内に設置されました。これにより庁内の関係部署が連携を深めることによる「総合相談窓口の機能」の強化がめざされました。

 

また、市では地域の相談窓口について関係機関等に意見を聴取しました。そこでは、地域共生社会の実現と包括的支援体制構築に向けた取組みをすすめることを確認しています。そこで、令和元年度、国分寺市は国の「地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制構築事業(=地域共生モデル事業)」に手を挙げました。そして、このモデル事業を活用することで、市は国分寺市社協に「地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制構築事業」を委託し、市内を東西2圏域に分け、各1名の地域福祉コーディネーターを配置することになりました。この流れの中、地域福祉コーディネーターには「地域に出向き、幅広い相談を受けとめ、相談内容に応じて適切な支援機関につなぐとともに、地域におけるネットワークの構築、地域力強化の推進等に取り組む」という役割が市の地域福祉計画『実施計画』(後期)でも明確に位置付けられました。

 

さらに、令和2年度には「地域福祉コーディネーターの体制強化」として、新たに「補助職員」を社協に嘱託職員で1名増配置しました。これは地域福祉コーディネーターが記録作成等の業務に追われてしまうと、地域に出向いた取組みが十分にできなくなることから配置に至ったものです。

 

なお、生活支援コーディネーターは第2層生活支援コーディネーターが6つの地域包括支援センターに1名ずつ配置されており、高齢分野の地域課題にあたっては生活支援コーディネーターにも声をかけ一緒に地域づくりに取り組んでいます。

 

 

Ⅲ 本格実施に向けた「移行準備事業」の2年間

1 事業のスキームや方向性の検討

国分寺市では、令和3年度から「重層的支援体制整備事業 移行準備事業」に取り組みました。3年度には市の同事業所管課となった「地域共生推進課」は、庁内の関係部署と打ち合わせを重ね、前述の庁内担当部署を横断した「相談支援総合調整会議」で重層的支援体制整備事業について検討を行い、さらに、権利擁護センターこくぶんじ運営委員会、地域ケア会議、障害者地域自立支援協議会、要保護児童対策地域協議会、生活困窮者自立相談支援事業連絡会といった場でヒアリングを行いました。また、地域福祉計画に基づき、市が地域福祉の担い手の方々の情報交換や情報共有の場として設置している「地域福祉推進協議会」で意見を聴くことで、事業のスキームや方向性が検討されていきました。

 

市の所管課と社協では、移行準備期間中から毎月、会議を開催し、事業のあり方について意見交換等を行っています。そうした中、社協と市の役割分担として、社協には地域福祉コーディネーターが幅広いネットワークを活用しながら「相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」を一体的に取り組むこと、行政である市には、とりわけ複雑化・複合化した課題をめぐる庁内の関係部署との調整や適切な実施体制の確保に役割を発揮することが期待されます。

 

2 移行準備期間を通じた計画的な増配置

実施体制は、移行準備の初年度である令和3年度は、モデル事業を引き継ぎ、前年度と同じく地域福祉コーディネーター2名と「補助職員」1名の実施体制でスタートしました。4年度には東西2圏域を担当する各1名に加えて全域を担当する地域福祉コーディネーター1名を新たに配置し3名体制としました。さらに、本格実施に入った5年度からは東西2圏域に各2名の地域福祉コーディネーターを配置する4名体制としています。移行準備期間を通じて、試行的に実施する内容を徐々に拡大することに合わせて必要となる実施体制を計画的に拡大してきました。

 

社協の地域福祉コーディネーターは相談支援包括化推進員を兼務していますが、市にも直営の相談支援包括化推進員を1名、配置しています。市の相談支援包括化推進員も、令和4年度に直営の係長を実施体制に組み込み、本格実施となった令和5年度からは直営を2名体制とし、そのうちの1名を相談支援包括化推進員としています。

 

 

3 移行準備期間中の主な取組み

国分寺市では、移行準備期間中、重層的支援体制整備事業の関係機関への周知や相談支援機関との連携強化に向けた共通理解を高めるための取組み、多機関協働、参加支援や地域づくりの試行に取り組んできました。

 

 

(1)「重層事業講演会」を開催

講演会では、学識経験者の講演と市からの事業説明を行いました。行政職員や関係機関を対象としつつ、市民にも周知を広げて開催しました。講演会終了後、地域包括支援センターや障害者基幹相談支援センターから複合的な課題を抱える世帯に関する相談や重層事業に関する問い合わせがあり、関係機関への理解には一定程度つながったものと考えられます。

 

(2)「農福連携」を試行的に開始

市内の農家さんと連携して「体験農園」における就労準備や社会参加による「参加支援」の場づくりをめざしました。思いのほか、今までにつながりのなかった地域の方々から担い手としての参加があり、収穫物を子ども食堂などの団体に提供するなどの新たな交流も生まれました。複合的な課題を抱える方を単に「参加支援」の場につなげさえすればよいのではなく、そういった方々に対する地域からの理解を高めることが必要と改めて気づかされました。

 

(3)「重層的支援会議」を試行的に開催

令和5年3月に重層的支援会議の試行として複合的な課題のあるケースについてプランを検討してみたところ、数多くの意見が出席者から出されました。その後、改めて会議を開いて整理し、数ヶ月を経てそのプランを評価するまでの取組みをすすめています。

 

 

 

Ⅳ 「福祉の総合相談窓口」は、毎週水曜日 9~17時の開設

国分寺市では、移行準備期間中の令和5年1月に市役所の第2庁舎1階の生活福祉課の窓口の一角に「福祉の相談窓口」を試行的に置き、令和5年度からは同窓口を本格的に開設しています。常設ではなく、毎週水曜日の9~17時の開設です。昼休みも窓口を開けなくてはならないので、地域福祉コーディネーターは2名が社協から市役所へ毎週水曜日に出向き、午前と午後の交代で相談窓口に入っています。この窓口へ相談に訪れる方は、相談したいがどこの窓口に相談したらよいかわからないといった方が中心です。そして、地域福祉コーディネーターは、窓口で相談に来るのを待つのではなく、窓口のカウンターから出て、市役所まで来たけれどどの窓口を訪ねればよいかわからないでいる方を見つけては声をかけるといったことにも取り組んでいます。

 

総合相談窓口の開設は週1回にとどめることで、地域福祉コーディネーターは普段の曜日は積極的に地域へと出向くことができます。総合相談窓口を掲げることで相談することができるようになる困りごともあれば、地域に出向いてさまざまな場に顔を出すことで初めて受けとめられる困りごともあります。そうしたことから、福祉の総合相談窓口とアウトリーチによる相談機能の両方が大切となっています。

 

 

Ⅴ 既存の相談機関と複合的な課題の事例検討 コーディネーター連絡会

地域福祉コーディネーターが 毎年度実施する「コーディネーター連絡会」。令和4年度は、重層的支援体制整備事業の本格実施を間近に控える令和5年2月15日に市内関係機関の相談支援担当者や市職員に声をかけて、グループワークを通じた複合的な課題を抱える世帯に関する事例検討と意見交換を行いました。その開催に向けて、地域福祉コーディネーターは、「やはり重層的支援体制整備事業で『包括的相談支援事業』を担うことになる既存の相談支援機関(地域包括支援センター、障害者相談支援事業所、子ども・子育ての利用支援事業の窓口、生活困窮者自立支援事業の自立相談支援窓口)がお互いに共通認識をもって包括的に相談を受けとめていくことが必要」と考え、これらの機関に声をかけての開催の運びとなりました。

 

連絡会の冒頭では、まずは地域福祉コーディネーターの活動報告を行いました。その報告に対して、参加した関係機関の9割近くから「参考になった」との声をいただき、分野別に地域でそれぞれの専門性に基づく力を発揮している相談支援機関に「地域福祉コーディネーターの活動」を身近に感じてもらうことができました。また、市からの重層的支援体制整備事業の事業説明では、「福祉の総合相談窓口」のような一つの窓口に複合的な課題を含むケースを集約することでその課題の解決をめざしていくのではなく、それぞれの分野別の相談支援機関が連携することこそが重要であると強調されました。

 

その後のグループワークでは、①世帯が抱える課題と各関係機関ができる支援や担える役割、②世帯を支援する上での連携のあり方、の2つの視点をもとに、事例検討を通じて各関係機関がそれぞれどのような支援ができ、どのように連携ができそうか意見交換を行いました。この連絡会を通じて、包括的相談支援事業を担う相談支援機関同士がお互いの強みを理解し合えたことは大きな成果でした。

 

 

Ⅵ 国分寺市の『重層的支援体制整備事業実施計画』

国分寺市では、令和4年12月に「令和5年度国分寺市重層的支援体制整備事業実施計画」を策定しています。各事業について以下の実施体制を示しました。

 

1 包括的相談支援事業

既存の分野別の相談支援機関を以下のように包括的相談支援事業に位置づけるとともに、それらの機関と連携した地域福祉コーディネーターによる「福祉の総合相談窓口」、さらにはアウトリーチによる幅広い相談支援を通じて地域住民の相談を包括的に受けとめる体制の構築がめざされています。

 

 

2 地域づくりに向けた支援事業

分野ごとの取組みをすすめつつ、世代や属性を超えて地域住民同士が交流できる多様な地域活動が生まれやすい環境整備を行っていきます。

 

 

<住民主体による地域づくり>

  • 地域福祉コーディネーターによる地域づくりの取組みでは、例えば、「坂の下まで行くのは大変だから、坂の上にも居場所があるとよい」という住民の声をもとに、誰もが気軽に立ち寄れる居場所づくりをめざし、住民主体でやりたいこと、いろんな想いを出し合うことを地域福祉コーディネーターがお手伝いしてきました。そして、家を提供いただける方ともご縁でつながって、ボランティアが運営する“まちのおうち”として「坂の上のひとつ」が誕生しました。まちの拠点であり、多世代交流の場として、誰でも自由に過ごせるオープンスペースとなっています。
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  • こうした住民主体の活動を民生・児童委員や第2層生活支援コーディネーターとも連携しながらさまざまに取り組んでいます。また、生きづらさを抱える当事者の居場所づくりでは講演会などを通じて地域住民からの理解を広げながら取り組んでいます。
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3 新たな機能(参加支援、アウトリーチを通じた継続的支援、多機関協働)

新たな機能である3つの事業は、市の所管課を地域共生推進課とし、社協に委託して実施します。

 

 

多機関協働事業における「重層的支援会議」は本人同意が得られた事案に関し、社協が主催し、案件ごとに構成メンバーを決定し開催します。また、支援に結び付いてないケースについて会議の構成員に守秘義務をかけて開催する「支援会議」は、既存の「相談支援総合調整会議」を活用して市が開催し、関係機関で情報共有を図り、早期発見や早期支援をすすめます。

 

地域福祉コーディネーターはリマインドの意味を含めて支援会議の開催予定を包括的相談支援事業を担う相談支援機関に伝えます。その声かけは、支援の方向性に悩む支援者への支援にもなりえます。「支援会議」は月1回、相談支援機関等から寄せられるケースの中から複合化・複雑化したケースをスクリーニングし、直営の相談支援包括化推進員が庁内の関係部署の調整役を担いながら開催しています。なお、早急に情報共有を図る必要があるケースについては、臨時会を開催し対応しています。

 

Ⅵ 情報共有と活動の可視化

1 情報共有システムを活用

4名の地域福祉コーディネーターは、福祉の総合相談窓口を交代で担ったり、それぞれが地域に出向いてさまざまな関係機関や市民と関わります。そうした中で、国分寺市社協では地域福祉コーディネーター同士で情報を共有していくため、クラウド上で安全に相談記録を共有できる情報共有システムを活用しています。ネットワークを活用した地域活動には情報共有は不可欠です。それぞれケースや地域のキーマンをお互いに知っておくことが大切になっています。

 

2 地域福祉コーディネーター活動の可視化

重層的支援体制整備事業を市民に知ってもらうというよりも、まずは地域福祉コーディネーターの活動を広く知ってもらうことが同事業を通じた取組みに多くの市民の理解と参加を得ていくことにつながります。そのため、「地域福祉コーディネーターとは」というリーフレットや、地域福祉コーディネーターの事業説明のためのプレゼンテーション用データを作成しています。公民館まつりでも、展示スペースで地域福祉コーディネーターの活動を紹介しました。また、SNSでも適宜、積極的に情報を発信しています。これらの機会には、視覚的な資料を作成するなど、市民や関係者に地域福祉コーディネーターを身近に感じてもらおうと工夫しています。

 

地域福祉コーディネーターの積み重ねた実践を発信していくことは「メモリアル」という視点からも大切になります。実践を通じて市民が取り組んできたことを形にして見せて、さらなる積み重ねへと発展させていくことにつながっていくと考えられます。

 

Ⅶ 個別支援にかかる事業と参加支援、地域づくりとの連携

1 生活困窮者自立支援事業、権利擁護事業との連携

国分寺市社協では、令和3年度までは「ボランティア活動センター」の中に「ボランティア事業担当」と「まちづくり支援担当」があり、地域福祉コーディネーターはその「まちづくり支援担当」に配置されていました。令和4年度に社協内を「総務課」と「地域福祉課」の2課体制に分けて、ボランティアセンター担当は「総務課」に残し、「地域福祉課」の中に①権利擁護センターこくぶんじ、②自立生活サポートセンターこくぶんじ、③地域福祉コーディネーター担当の3つを置くように組織を改めました。このことによって、重層的支援体制整備事業を見据えて、3つの相談支援体制の連携を強化しています。特に生活困窮者自立支援事業を実施する「自立生活サポートセンターこくぶんじ」と地域福祉コーディネーターは朝のミーティングも一緒に行い、情報を共有しています。

 

国分寺市社協では、自宅を訪問する際には必ず2名体制で訪問しており、自立生活サポートセンターの職員と地域福祉コーディネーターが一緒に訪問することもあります。同じ利用者を自立生活サポートセンターは生活面の視点で、地域福祉コーディネーターは参加支援の視点で関わることもできています。もともとボランティアセンターとの連携は積み重ねてきており、さらに権利擁護センターとの連携も加わることで地域福祉コーディネーターの活動に厚みを持たせることができます。令和5年度に権利擁護センターの主催した地域の関係機関連絡会には地域福祉コーディネーターも参加し、権利擁護支援における各機関が考える支援の視点を共有しました。

 

自立生活サポートセンターにとっても、地域福祉コーディネーターとの連携が深まることでより地域とのつながりを活かした支援が期待されます。こうした関わりを地域福祉コーディネーターが地域の各分野の相談支援機関との連携を深めて取り組んでいくことで重層的支援体制整備事業が活かされていくと考えられます。

 

2 参加支援の広がりと地域づくり

国分寺市内では、社協が中心となり、令和元年11月に17の社会福祉法人が参加する「国分寺市社会福祉法人連絡会」を立ち上げています。今後は、相談支援における連携はもとより就労準備支援や参加支援に法人・事業所の力を借りていくことも期待されます。

 

また、地域福祉コーディネーターは、参加支援の広がりを作っていくうえで生きづらさを抱える人たちを受け入れる地域の人の理解の輪を丁寧に広げていくことが大切だと考えています。そうしたことから、参加支援の場づくりに地域住民が関わりながら、参加支援と地域づくりを一体的に取り組んでいくことが大切になりそうです。

取材先
名称
(社福)国分寺市社会福祉協議会
概要
(社福)国分寺市社会福祉協議会
https://www.ko-shakyo.or.jp/
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