品川区防災まちづくり部
地域で作成・検証していく「品川区避難支援個別計画書」
掲載日:2018年6月4日
ブックレット番号:7 事例番号:73
東京都/平成30年3月現在

 

行政がかかわることで住民の不安を打ち消せる

品川区では、避難行動要支援者の自宅を支援者が訪問して個別計画書を作成する「戸別訪問方式」と、要支援者を招き会場で作成する「作成会方式」の2つの方式で個別計画書作成をすすめています。

 

支援者からは、「何をすればいいのか分からない」という取組み内容全般にかかわることや、「避難行動要支援者への話しかけ方がわからない」「緊張する」などの声もありました。品川区防災まちづくり部防災課啓発・支援係長の小川晋さんは、「地域の人は、計画づくりをしようという想いは持っていても、実際に取りかかるとなると、さまざまなところに疑問や不安が生じてくる。行政も入って一緒に状況を把握・理解し実践していくことの重要性を感じた」と言います。

 

また、前田さんも、「住民の方が不安や疑問を抱えたままだと取組みはすすまないが、行政が入って意義や目的を丁寧に説明し、その不安や疑問を打ち消すことができれば理解は広まっていくと実感した。行政がきちんと想いを持ってかかわることが重要」と話します。そして、今は要支援者の名簿を受取る団体が増え、「防災区民組織の方々の取組みへの意欲や課題意識が、少しずつでも着実に大きくなっていることを実感している」と言います。

 

 

自分の地域に避難行動要支援者がいることは知っていた人でも、実際に支援者として戸別訪問してみることで、家の中の家具の転倒防止対策がされていないことに気づいたという事例がありました。避難所までの誘導以前に、棚が倒れたら押しよけないとドアまでたどりつけないなど、支援者として訪問することで、支援者としての視点で防災への基本的な対策や日頃からできる取組みへの理解もすすみました。前田さんも「要支援者に限らず、支援者側となる人も含めた地域住民全体の『自助』のベースを上げないといけないことに気がついた」と言います。こうした気づきはその後の支援体制づくりに順次反映させています。

個別計画書の作成に携わった防災区民組織の方同士で報告会を開催したり、それぞれの自治会・町会の総会で災害対策の話題を取り上げるなど、取組みを広げる活動が住民の中からも出始めています。

 

小川さんは、こうした個別計画書づくりをすすめたことによる地域の変化を感じています。「避難行動要配慮者の方には、体調などの事由から町会や自治会への参加を遠慮して、地域とのつながりが持ちづらかった方もいたが、これをきっかけにかかわることができた、との話があった」と話します。個別計画書の作成が当初あまりすすまなかった背景には、防災区民組織の方と要支援者の接点が日頃から少なく、要支援者の生活状況や困っていることがよく分からなかったということもありました。要支援者と交流し、ともに個別計画書を作成・検証していく現在のプログラムは、相互理解と日常のコミュニケーションの輪を広げるよい機会となっています。

 

また、前田さんは、「個別計画書作成への関心は、町会やマンションの防災意識とも比例する。活気ある場所からスタートし、全体の底上げにつなげていきたい」と話します。

防災区民組織1団体あたり平均約20名の避難行動要支援者がいますが、重点的に取組む1年間では、区の職員が入り、研修や作成内容の検証も丁寧に行うため時間はかかり、約5名ずつの個別計画書の作成となります。今の取組み状況について、小川さんは、「防災区民組織の方々に自分たちで作成していける方法を覚えてもらい、次からは地域の方が自分たちでできるように、きっかけをつかんでもらう過程である」と言います。

 

これまで地域住民と区の職員がともに丁寧に積み上げてきたノウハウを、平成29年度に作成した「避難行動要支援者の支援体制づくりの手引き」として、さらに多くの地域・住民が取組めるよう、横に広げる展開が始まりつつあります。防災区民組織に配付する他、研修資料としても活用していく予定です。

 

取材先
名称
品川区防災まちづくり部
概要
品川区防災まちづくり部
http://www.city.shinagawa.tokyo.jp/
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