並木さん(右)伊藤さん(中央)松浦さん(左)
あらまし
- 狛江市視覚障がい者用災害ベスト「こまベスト」の開発にたずさわった並木ヒロ子さん、伊藤聡子さん、松浦明さんにお話をうかがいました。
まわりに気づいてほしい
伊藤さん)
狛江視覚障害者の会の代表をしています。狛江市に災害ベスト配布の要望書を提出したことをきっかけに、開発部会のメンバーになりました。東日本大震災のときに、視覚に障害があることをまわりの人たちに気づいてもらえず大変だったという事例をききました。例えば避難所の掲示物の情報を知るためには、まわりの方の支援が必要です。そのためにも、災害時に目が見えないことを知ってもらう必要があります。
松浦さん)
私は長年、サウンドテーブルテニス(STT)等でボランティアをしており、今回メンバーとして関わっています。以前、静岡県が視覚障害者向け災害ベストを作ったという記事を読み、要支援者への安全・安心の取組みが必要と考えました。
並木さん)
私は視覚障害をもち、現在は相談員をしています。STTやカラオケなどさまざまなサークルにも参加しています。その仲間と「災害にあったらどうする?」と話したとき、気づいてもらえず運を天に任せるしかないかなと言う人もいました。今は、このベストを仲間にすすめています。
様々な工夫をとりいれる
伊藤さん)
最初はリュックやジャケットという案もでましたが、持ち運びやすさ、着やすさを考えてベストにしました。
並木さん)
ベストの反射板には「目が不自由」と文字を入れています。色々悩みましたが、費用面と分かりやすさから文字数は少なくしました。
松浦さん)
文字入り反射板はマジックテープで取外しができます。他の障害の方にも使ってもらえるよう工夫しました。また、緊急時に目立つ黄色の蛍光色にしました。
仲間づくりが大切と気づく
伊藤さん)
苦労した点はベストの配布と周知方法です。目が見えれば広報紙等で使い方を伝えられるかもしれません。でも、視覚障害の人たちに伝えるのはなかなか難しいです。音声版の広報にたどりつける人もいれば、そうしたツールを全く知らない人や障害を知られたくない人もいます。こうした方々にベストをどう周知していけばいいのか、今も考え続けています。
並木さん)
サークル活動で色々な方と知り合えたと思っていましたが、ベストの開発にたずさわったことで、市内には視覚障害のある方が140名もいると知り驚きました。この災害ベストの周知を通して、どこにもつながっていない方たちと少しでもつながれたらと思いますね。市の地域福祉課と協力しながら作ったベストなので、より多くの方の手に届いてほしいです。
松浦さん)
目が見えないために、家にこもってしまう方が多いと感じます。これからもボランティア活動を通して色々な人とつながる「仲間づくり」をさらに行っていきたいです。
伊藤さん)
障害があると地域の防災訓練に参加するのはなかなか難しいのですが、多くの人たちにベストのことを知ってほしいと思います。今度、子どもが通う小学校の防災訓練にはベストを着て参加するつもりです。私たちも色んなところに出かけて、この災害ベストをアピールしていきたいなと思っています。
ヘルプマークを入れるポケット、緊急を知らせる笛、ペットボトルも入るヘルプマークのポケットなど
さまざまな機能をもつ「こまベスト」
【用語説明】
狛江市では平成26年9月から「視覚障がい者用災害ベスト開発部会」5名のメンバーで検討を重ね、作成した。現在は狛江市在住の身体障害者手帳を所持している視覚障がいの方に市役所窓口で無料配布している。詳しくは狛江市地域福祉課まで