あらまし
- 小学一年生の下校時間に合わせて利用者が見守りウォーキングをしている白百合福祉作業所の大垣喜久江所長と支援員の小林浩史さんにお話をうかがいました。
大垣)練馬区社協が運営している白百合福祉作業所は就労継続支援B型事業所として、主に知的障害のある利用者が通っています。箱折りなどの受注作業や「さをり織り」などの自主製品づくりをしていますが、もう一歩、「地域に向けて何かできないか」という活動の一つとして、「しらゆり見守りウォーキング」に平成25年から取組んでいます。これは近隣の石神井小学校の下校時刻に利用者が散歩に出て子どもたちを見守る活動です。特に4~5月は新しい生活に不安の多い新一年生の下校時刻の安全を見守る活動となっています。
小林)利用者の力を地域で活かす活動として始めたものですが、7~8年前から小学校の授業に参加する「地域学習会」に取組んでいます。学習会を始めた頃は、「小学生にどう知的障害を理解してもらうか」というように『我々が間に入らなきゃ』という感覚がありました。でも、「障害者である彼ら」ではなく、「ここにいる人」をわかってもらえればいいんだということに気づかされました。私たち職員が説明するよりも、本人たちが「こんなことしています」「こんなことが好きです」と、直接伝えた方が子どもたちからはたくさん質問も出ます。授業の最後に利用者が「仲良くしてくれますか?」と言うと、「はーい!」という答えが返って来ます。作業所に見学に来てくれると、職員よりも速く箱折りしちゃう姿を見て「すごーい」と、子どもたちの歓声が上がります。これはもう、障害を説明するときにありがちな「○○ができない」という伝え方ではありません。
大垣)ウォーキングを通じて子どもたちから「何やってるの?」「頑張ってねー」と自然な声がかけられたり、あたり前に挨拶を交わしたりすることに大きな意味があると思います。その距離感や関係性の変化は子どもを通じて親に伝わり、親子で作業所に遊びに来てくれたりもします。「子どもに頼まれたから」と作業所で販売している梅干しをお母さんが買いに来てくれたこともあります。
小林)(作業所から離れた)駅前の清掃活動も行っていますが、やはり目の前にある地域に出ることで、そこが「庭」になってきました。「昔、小学生との間であった出来事から関係がうまくいっていない…」という利用者もいました。心からの子どもの言葉にふれることで、利用者自身からは具体的な言葉での感想はなくても、いつもと違う表情など五感全てで感じ取っているのがわかります。
大垣)作業所の帰りに何時間も交差点にたたずんで行き交う人をみる利用者もいます。これは想像ですが、彼らにとって「自宅」と「作業所」を往復する暮らしの中で、その時間は自由に社会と関わることのできる貴重な時間なのかもしれません。
小林)見守りウォーキングは、自分たちから外に出ていく活動です。「安全チェック!」と意気込みながら活動し、散歩途中のバス停で待つ人からは「いつもありがとう」という言葉もかけられます。そして、今では子どもから名前で呼ばれる姿も見られるようになってきました。