(社福)マザアス「マザアス東久留米」、(社福)泉会「日の出舎」、(公社)東京社会福祉士会「「明日葉ステーション」
働きにくさを抱えた人の「働きたい」を支える
掲載日:2018年1月24日
2016年10月 社会福祉NOW

 

 

あらまし

  • 地域の中には、さまざまな理由により「働きにくさ」を抱えた人がいます。東社協では「東京都地域公益活動推進協議会」(*)を設立しました。活動の1つとして東京全体の連携による中間的就労の取組み、「はたらくサポートとうきょう」を推進し、「はたらきたいけれどはたらきにくい人」に対して、はたらく場を提供し、継続的に支援することをめざしています。働きにくさを抱えた一人ひとりの「働きたい」を支え、多様な働き方・生き方が認められる社会を作るために、どのような場やサポートが必要なのでしょうか。実践から考えます。(*)東京都地域公益活動推進協議会社会福祉法人の使命に基づき、地域における福祉課題の解決に向け、社会福祉法人の連携による地域における公益的な取組みを推進することを目的に設立した組織(本号「東社協発」参照)

 

オーダーメイドで受入れ ―高齢者の福祉総合施設 マザアス東久留米

10の事業所を持つ高齢者の福祉総合施設「マザアス東久留米」では、地域に開かれた施設として、ボランティアの方々との交流を大切にするなかで、人とのかかわりが苦手な若者から生活が困窮している高齢者まで、さまざまな「働きにくさ」を抱えた方を受入れてきました。そして、平成27年4月に「生活困窮者自立支援法」が施行されたことから、「取組みを広く知ってもらおう」と、生活困窮者自立支援法にもとづく就労訓練事業の認定を受けました。具体的には、働きにくさを抱えている方で、雇用契約を結んでいる方が6人、雇用契約を結ばずボランティア・インターンシップとして受入れている方が6人おり、そのうち1人を生活困窮者自立支援法下の非雇用型で受入れています。

 

マザアス東久留米では、就労支援機関からの依頼を受け、一人ひとりにあった働き方をつくる「オーダーメイド」を大切にしています。そのためには、「就労支援機関との連携が大切」とマザアス東久留米事務長の藤原将洋さんは語ります。就労支援機関のアセスメントに基づき、本人にあわせた働き方を就労支援機関とともに考え、マッチングします。また、本人の生活面の課題や仕事場で悩んでいることは、できるだけ就労支援機関で聞いてもらい、マザアス東久留米では、仕事の場として、本人ができていること・できていないことを評価して本人に伝えるという役割分担を心掛けています。法人内の体制としては、就労支援機関との連絡調整は法人事務局で行い、実際の受入れは、各事業所で行っています。

 

マザアス東久留米の事業所では、仕事の手順を見直して、清掃を中心に働く方を週に2〜3回、1日3時間ずつ受入れたことで、職員から「1日数時間の短時間勤務の職員はなかなか見つけづらいなか、利用者とゆっくり話すゆとりが生まれた」という肯定的な声が聞かれています。また、本人にとっては、職員や利用者との会話が働きがいにつながっています。

 

マザアス東久留米の特徴は、できるだけ、受入れた施設・事業所内でそのまま雇用につなげようとしていることです。藤原さんは、「雇用につながる可能性があることは、本人の頑張りがいにつながり、現場事業所でも受入れがいにつながる」と話します。ただし、必ずしも雇用をめざすのではなく、安心して定期的に通う場が必要な方には、ボランティアとしての受入れもしています。藤原さんは、「就労でも居場所づくりでも、働きにくさを抱えた方が、一歩ふみ出すきかっけをつくりたい。社会福祉施設は、(1)働きにくさを抱えた人が通うことのできる身近な地域にある、(2)福祉施設の役割として地域のニーズに応えるアンテナがある、(3)柔軟な受入れ方(雇用日数・時間、仕事内容)が可能である、(4)人を支えることを専門とする職員がいるという特徴がある。都内の福祉施設で2人ずつ働く場を提供できれば、千人、二千人の人生が変わるかもしれない」と語ります。

 

マザアス東久留米でのボランティア活動

 

介護業務を担う方も ―障害者支援施設 日の出舎

障害者の入所施設や就労継続B型事業所等をもつ社会福祉法人泉会「日の出舎」では、引きこもり状態だった方や発達障害のある方、疾患のある方等の働きにくさを抱えた方が働いています。日の出エリア統括施設長の西田徹さんが、「改めて考えてみると7人の方を受入れていた」と話すように、日の出舎では、「支援を必要としている方の切迫したニーズに応えよう」という法人の理念に基づき、施設創設以来、自然な形で受入れてきました。必ずしも就労支援機関を通じない形で受入れており、地域の方等からの働きにくさを抱えた方に関しての相談は、年間約10件にのぼります。日の出舎では、生活困窮者自立支援法にもとづく就労訓練事業の認定を受けるかどうかは、現在、検討中です。

 

日の出舎には、働きにくさを抱えて就労した方で、勤続年数が5年を超えている方が4人います。4人は、週5日、1日7時間働いていますが、必ずフルタイムでの働き方をめざすというより、本人の状況にあわせて時間をかけて本人にあう働き方を本人と模索しています。日の出舎での雇用領域は、介護の周辺業務にとどまらず、生活介護の業務を担っている方が、現在、5人います。また、どのような方も非常勤職員としての同一の待遇で受入れていることも特徴の一つです。

 

日の出舎支援課課長の森敏彦さんは、「職場に定着するまでは、遅刻や欠勤、利用者や職員との関係調整、悩みの相談を受けるなど大変なこともある。しかし、その人にいてもらわないと困る場面が必ず出てくる」と話します。ある発達障害のある方は、入浴介助を中心に生活介護をしています。先々の手順を見通して丁寧な介護を行うことから、利用者の信頼を集めています。

 

働きにくさを抱えた方を受入れるメリットとして、統括施設長の西田さんは、「地域あっての施設。何より地域のニーズに応えられることが一番のメリット」と話します。また、「職員にとっても、働きにくさを抱えた方と共に働く経験は、長期的な視野での利用者理解に役立ち、支援の力量が上がっていく」と話します。森さんは、「誰もが介護や子育て、病気などで、柔軟な働き方が必要な時がある。”色々な人が働いているのが当たり前“と思う職員が増えてくると良い」と話します。

 

 

 

日の出舎で作業の補助を行う

 

就労の準備をサポート ―明日葉ステーション

東京社会福祉士会では、練馬区からの委託を受け「明日葉ステーション」を拠点に、主に生活保護受給者の就労準備の支援から、仕事探し、就職後のアフターフォローまで一貫した支援を行っています。

 

その支援の特徴は、ここでもやはり「オーダーメイド」の支援にあります。地区ごとの担当制となっている「就労サポーター」が、福祉事務所からの紹介により、自宅を訪問し、本人の好きなことを一緒に行い信頼関係を築きながら、支援計画を立て、寄り添いながら支援を継続します。

 

明日葉ステーションで実施するプログラムは、コミュニケーションの訓練に主眼をおきながら、一人ひとりの好きなことや得意なことを活かすことを大切にしています。「人との関わりから自分の得意なことを知る。得意なことを活かして、仲間に喜んでもらうことが自信につながり、働く一歩になる」と、明日葉ステーションの鐙真美さんは話します。明日葉ステーションでは、仲間との交流の中で自信をつけ、働くために最低限必要な生活習慣と、働くことへの前向きなイメージをもってもらったうえで、仕事の受け皿を探します。

 

「柔軟な働き方を許してくれる事業所があれば、働ける人はたくさんいる。例えば、週1回から働ける、常時いなくても何かの時に相談できる担当者が決まっている、働く前の準備として定期的に通う場を提供してくれる、そんなところがあれば・・」就労サポーターの海老澤浩史さんは話します。同じく、就労サポーター五十嵐朋惠さんは、「働くことで、別人のように表情が変わり、自信に満ちた顔になる。それをみると、人の心を変えるのは人とのかかわりで、一人ひとりのなかに、人とのつながりを持って働きたいという気持ちがあるんだと思う」と語ります。

 

明日葉ステーションにて

練馬区就労サポーター

五十嵐朋惠さん(左後ろ)

海老澤浩史さん(右後ろ)

堀内桃子さん(右前)

明日葉ステーション

鐙真美さん(左前)

 

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3つの事例から見えてきたのは、地域に、その人に合わせた柔軟な「働く場」をつくっていくことで、働きにくさを抱えた人が、その人らしく働くことができるということです。しかし、平成27年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」下で中間的就労の認定を受けている事業所は都内で35か所(うち、社会福祉法人は3法人14カ所(*))、とまだまだ不足している状況です。今後、社会福祉法人をはじめとしたさまざまな関係機関が、地域で力を合わせ、多様な受け皿をつくっていくことが求められています。

(*)平成28年4月現在

取材先
名称
(社福)マザアス「マザアス東久留米」、(社福)泉会「日の出舎」、(公社)東京社会福祉士会「「明日葉ステーション」
概要
(社福)マザアス「マザアス東久留米」
http://www.moth.or.jp/at_higasi_kurume.html

(社福)泉会「日の出舎」
http://hinodesha.org

(公社)東京社会福祉士会「明日葉ステーション」
http://www.tokyo-csw.org/
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