伊藤邦子さん。手に持つ絵本は「ぬくぬく」福音館書店
作:天野祐吉 絵:梶山俊夫
あらまし
- 地域福祉ファシリテーター養成講座を受講し、自身が住む団地集会室で「ぬくぬくカフェ鷹野」を開催している伊藤邦子さんにお話をうかがいました。
私は保育士や子育て相談員を経験し、12年前に三鷹市に引っ越してきました。仕事を辞めたあとは、コミュニティセンターや絵本ボランティア等の活動をしてきました。
誰が助けてくれるのだろう
コミュニティセンターで活動しているときに、「私が住む都営団地からは参加者が少ないな」と感じていました。少し前までは、敬老会のときにはたくさん集まって話したりお茶を飲んだりして楽しく過ごしていました。近隣の人に聞くと「参加したいけど遠くて行くのが大変」と話していました。年配の方や一人暮らしの方も多いのです。数メートルの距離を移動するのに10分もかかる方もいます。
東日本大震災のショックを経験したことで、高齢者や身体が悪い人に何かあったら誰が助けてくれるのだろうか、役所の人はすぐには来てくれないし、自分たちで助け合うしかないと実感しました。一軒一軒ノックして安否確認するのも難しくて、近くにみんながいつでも集まれる場所があるといいなと思っていました。
そんなとき、近所に住む民生児童委員をしている知り合いが、ルーテル学院大学で開催している地域福祉ファシリテーター養成講座の情報を持ってきてくれました。「一緒に受けてみよう」と誘われて受講することにしました。7日間の座学と2つのグループ学習です。私のように仕事を辞めた人、福祉関係の仕事をしている人、主婦などさまざまな人が集まりました。私は居場所づくりのグループに入り、自分がやりたいことがイメージできていたので、それをメンバーに伝えると想像しやすかったようです。今の活動をメンバーとともにしています。養成講座で指導を受けた社協やルーテル学院大学の先生とは、今でもつながりがあり、心強い存在です。昨年の1月に修了証をいただきました。
みんながあたたかくなれる居場所
昨年6月から、都営野崎アパートの集会室で第一水曜日の午後に「ぬくぬくカフェ鷹野」を開催しています。団地に住む高齢者が集まり、おしゃべりしたり、お茶を飲んだり、将棋を指したりして楽しく過ごしています。80~90歳の方が中心です。参加者や人づてでいただいた衣類や雑貨品を10円ショップと称して、買い物するのが楽しみになっています。暮れの忘年会には、皆でピザをとっていただきました。社協や地域包括支援センターの職員も足を運んでくれています。
カフェの名前は、絵本ボランティアをしていたときに出会った「ぬくぬく」という寒がりの妖怪がでてくる絵本から名づけました。来るもの拒まず受け入れて、みんながあたたかくなれる居場所を作りたいという想いです。
最初はどの位来てくださるかと心配でしたが、毎回20~25名が参加してくれています。自分の住んでいる場所で開催しているので、みんなが主人公のように振る舞っています。帰り際に、「楽しかったわ。こういうのが欲しかったのよ」と話してくれ、その言葉が私たちの原動力になっています。
活動のひろがりとして、健康や介護面等の身近な相談者として「暮らしの保健室みたか」が出向いてくれるのは嬉しいです。今後は、今は少ない男性陣に参加してもらうことや、団地以外の人にも少しずつ広げていけたらいいなと思っています。
地域福祉ファシリテーター6期生が企画したコミュニティ・カフェ。都営野崎アパートの集会室で実施している。
地域福祉ファシリテーター養成講座
三鷹市・武蔵野市・小金井市の社協・市およびルーテル学院大学が協同で、地域福祉活動の担い手を育成するための講座。修了生は、ルーテル学院大学や社協に支えられながら、地域でさまざまな活動を展開している。