劇団FKB88(府中絆バンド88)
福祉専門職だからこそ伝えられる楽しくリアルなストーリー
掲載日:2017年11月29日
2017年5月 くらし今ひと

前列右)清野哲男さん 前列左)川田康隆さん

後列右)広井勝夫さん 後列左)楠原俊介さん

 

あらまし

  • 府中市内で医療や介護をテーマにした劇を上演している多職種劇団「FKB88」のみなさまにお話を伺いました。

 

活動をはじめたきっかけは?

清野さん

我々が劇団を始めたきっかけは府中市地域包括支援センター(以下、「包括」)で行っている「認知症サポーター養成講座」です。市内の11か所の包括が市民向けに開催していました。大人だけでなく、子どもに認知症を理解してもらうため「認知症ってどういうこと?人が年を取って困ることはどんなこと?」か、小学生向けの分かりやすい劇をつくり、見せていこうといくつかの包括で始めました。

広井さん

メンバーは多彩な経歴をもつ多職種の集まりです。現職の福祉専門職である我々ですが、元制作会社でした私を含め、元旅芸人だった清野さん、元俳優だった川田さんがいました。そうすると話は早く、寸劇をつくり上げるための台本を清野さんが、小道具や大道具は元制作会社の私が少ない予算でつくり上げ、出演する役者は元俳優のヘルパー事業所の川田さんをはじめ、さまざまな専門職がその職種を演じるなど、とてもリアルな劇が仕上がりました。

川田さん

活動の輪が広がりはじめたのは、認知症のタウンミーティングで劇を行った場です。都立多摩総合医療センター(旧都立府中病院)の内科部長が偶然会場に来ていて、「今度子どもも巻き込んだ市民向けの企画を行うので、この劇をぜひやってほしい」と依頼されました。そこで考えた劇が、認知症の母と息子の二人暮らしが、地域で発見され、その家族がいろいろなサービスを使っていくという内容です。サービスを利用するにはさまざまな職種の人が関わります。たった2人の市民のために、大勢の人が支援していることを知ってほしいと考えつくりました。映像化した劇は医療介護連携のイベントの際に映像として何度も流され、顔見知りの関係者が出演しているのを発見すると笑いが起こり、劇団への参加希望や、イベントの依頼が増えてくるようになりました。

 

活動をはじめたきっかけは?

楠原さん
福祉用具事業所の私は、本人、家族、ケアマネジャー、自分の4者のみとなっていた視野が、より多角的に考えられるようになっていきました。

清野さん
私は包括の立場として、人と人をつなげていく役割があると思いますが、何かと線を引きがちなところがありました。この活動をしながら自然と線引きをしなくなり、垣根は自分がつくっていたものだと気づきました。
特に医師との垣根がだいぶ低くなりました。普段話す機会の少ない副院長や部長の先生などがこの劇団に参加してくれています。介護側からは医療との壁が高く感じることがありますが、劇では在宅診療している医師が医師役で一緒に出演してくれます。先日、ある高齢者のサービス担当者会議でメンバー全員がFKB88だったということが起こりました(笑)

広井さん
一つの作品をつくり上げる過程で、メンバーのいろいろな専門スキルが発揮される過程を楽しめることも醍醐味です。メンバーがとても協力的で、苦労することがないです。むしろ、劇だからこそ自由にやれる、一生懸命やることをみんなが楽しんでいます。

川田さん
介護を知らない方にも「ヘルパーはどうやってお願いしたらいいか?」「ケアマネは?」「包括は?」と劇を観て気づくきっかけになるよう、広く観てもらえるようになりたいと思います。介護のことに親しみを感じ、分かりやすく伝わるような劇をこれからも作っていきたいです。

楠原さん
今後の野望としては府中市だけでなく、近隣へとひろがっていけたらと思っています。

 

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劇団FKB88(府中絆バンド88)
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