(社福)渋谷区社会福祉協議会
13名の地域福祉コーディネーターを配置し、「福祉なんでも相談」「分室相談」「巡回相談」「LINE相談」と包括的相談支援の間口を広げるとともに、既存の相談機関の垣根を越えた連携、多世代にわたる地域づくりをめざす―渋谷区社協における重層的支援体制整備事業の取組み
掲載日:2024年3月28日

 

Ⅲ 「重層的支援体制整備事業」と渋谷区社協の取組み

渋谷区では、令和5年度から重層的支援体制整備事業を本格実施しています。令和5年度までに都内では 12 の自治体で同事業が実施されていますが、初年度の令和3年度から実施している2つの自治体を除くと、「移行準備事業」を経ることなく本格実施に入ったのは都内では渋谷区が初めてとなっています。

 

本格実施にあたり、区では『渋谷区重層的支援体制整備事業実施計画』が令和5年4月に策定されており、令和5年度からは新たに同事業を所管する「地域福祉課」が設置されています。第1期に当たる同計画は、地域福祉計画の計画期間と合わせて令和8年度までの4年間の計画とし、今後は5年ごとに計画を策定していくことが想定されています。

 

同計画によると、計画の策定にあたっては、区では副区長を座長とする関係所管を集めた庁内検討会が設置され、令和3年には、複雑化・複合化した困難事例等について、庁内関係部署にヒアリングを実施し、その結果、個人や世帯が複数の課題を抱えており、その課題が複数の分野にまたがっているケースがあることわかりました。そうした現状をふまえ、既存の区の相談支援機関(高齢者、介護、障がい者、子ども・子育て、生活困窮の分野ごとの相談窓口)が、連携・協働して相談支援を行う体制づくりの準備がすすめられてきました。

 

1 「包括的相談支援」と渋谷区社協

渋谷区では、重層的支援体制整備事業の本格実施にあたり、「包括的相談支援の体制」に既存の各部門の相談窓口を位置づけるとともに、新たに「福祉なんでも相談窓口」と「福祉なんでも相談分室及び出張相談」を位置づけました。

 

(1)既存の相談窓口

既存の相談窓口として、『渋谷区重層的支援体制整備事業実施計画』では、以下の既存の相談窓口が「包括的相談支援事業」に位置づけられました。渋谷区社協は障がい福祉分野、子育て支援センターにおいて包括的な相談支援の窓口の一翼を担います。今後、地域内での相談機関同士の連携につながるための属性や世代を問わない相談支援の取組みをすすめるため、既存の相談機関と地域福祉コーディネーターとの連携が期待されます。

 

(2)「福祉なんでも相談窓口」

重層的支援体制整備事業の実施に伴い、渋谷区社協では、地域福祉コーディネーターを中心に「福祉なんでも相談窓口」を①窓口相談(区役所2階/分室)、②LINE 相談受付、③巡回型福祉なんでも相談、の3つの相談を担います。区民の相談ニーズの特性に応じたさまざまな形態での取組みです。

 

①-1 福祉なんでも相談窓口(区役所2階)

困りごとを抱える区民が区役所を訪れエスカレーターで2階に上がると、「福祉手続き・相談」の部署が集まったフロアにたどり着きます。このフロアには、区の障がい者福祉課、介護保険課のうち手続きや相談に関わる部門が窓口とともに、生活困窮に関わる相談・支援を担う相談支援課、そして、その奥には渋谷区社協のボランティアセンターと、地域福祉コーディネーターのいる地域福祉課が窓口を構えています。

 

生活困窮者自立支援事業の自立相談支援事業を担う窓口と同じフロアにいるのは利点の一つです。入ってきた相談をお互いにつなぐことで、お互いのネットワークを活かし、包括的相談支援の糸口としていくことができると考えられます。

 

『渋谷区には生活困窮者は少ないのではないか』と思われることもありますが、区内でも8050問題やゴミ屋敷と言われるような課題が、地域福祉コーディネーターのもとに入ります。「近所にゴミ屋敷があって心配だ」。そんな相談が入ると、地域福祉コーディネーターはその家を訪ねます。その際、「このあたりの家を回って困りごとがないかをお聞きしています」と声をかけます。「問題がある」という視点ではなく、本人自身が主体的に解決したいと思う困りごとを小さなことからでも探し、時間をかけて支援の糸口を探っていこうとしています。課題に応じて関係機関と一緒に訪問することもあります。

 

 

①-2 福祉なんでも相談窓口(大和田分室)

令和5年11月に渋谷区文化総合センター大和田の9階に「渋谷区地域共生サポートセンター『結(ゆい)・しぶや』」がオープンしました。同センターは前述の地域福祉コーディネーターの担当エリアでは、「南部」の桜丘町に位置しています。分室での相談は、本庁では対応できない時間に窓口を開設する目的もあります。①-1の本庁の「福祉なんでも相談窓口」は月曜日から金曜日の8:30~17:00に開設しているのに対し、①-2の分室の「福祉なんでも相談窓口」は火曜日から土曜日の10:00~19:00に開設しています。分室の窓口には、10:00~18:45に勤務する地域福祉コーディネーター1名、10:30~19:15に勤務する地域福祉コーディネーター1名の計2名がエリアの担当にかかわらず、ローテーションで出向いて相談にあたっています。

 

渋谷区社会福祉協議会 地域相談支援係
地域福祉コーディネーター
前田泉美さん(東部)、梅山美智子(西部)さん

 

②LINE 相談

福祉なんでも相談窓口では、「LINE相談受付」も実施しています。当初は面談による相談の予約や簡易的な相談への対応を想定しましたが、始めてみると、対面が苦手な方からの相談やひきこもりの方との連絡ツールとしての活用に有効であることがわかってきました。

 

③巡回型福祉なんでも相談

公共施設や各地域で開催しているサロン等に地域福祉コーディネーターが出向き、民生児童委員と一緒に「巡回型福祉なんでも相談」を実施しています。巡回型なんでも相談は、地域に身近な相談窓口になっています。予約も不要で、どなたでも相談することができます。まだまだ関係機関にも知ってもらうべく周知に取り組んでいるところですが、相談に訪れるのは高齢者が多くなっています。民生児童委員が一緒に相談窓口に出てくれることで、担当地区の民生児童委員につないでくれたり、地域に密着した情報提供をしてもらえるメリットがあります。

 

周知にあたっては「お話をお伺いします」とチラシに謳い、呼びかけには「相談先がわからない」「近隣の人を最近見かけなくなったけど…。どうしていいかわからない」「元気に暮らしていくために、地域の活動に参加したい」といった、困りごとから参加してみたい活動のことまで幅広く対象に入れています。実際に窓口で聞く相談は、介護保険の申請のことから、お墓のことでの相談、また、成年後見制度について、といった相談が寄せられます。

 

 

取材先
名称
(社福)渋谷区社会福祉協議会
概要
(社福)渋谷区社会福祉協議会
https://www.shibuyashakyo.or.jp/
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