あらまし
- 板橋区「特別養護老人ホームみどりの苑」と「前野町5丁目町会」で20年続く「合同防災訓練」。いざという時に備えた訓練だけでなく地域の情報を共有したり顔の見える関係づくりをすすめる場にもなっています。
板橋区の(社福)至誠学舎東京「特別養護老人ホームみどりの苑」と「前野町5丁目町会」では、毎年秋に施設と町会の合同防災訓練を行っています。この訓練は、両者が平成4年に締結した「災害活動応援協定」に基づいて毎年実施され、20年以上続いてきました。
平成29年10月5日(木)、今年もみどりの苑の中庭に施設の備蓄品である大きな防災釜を並べ、「前野町 町会合同炊き出し訓練」が行われました。
町会メンバーと職員が手際よく
いよいよ釜に点火。町会メンバーと施設の栄養士が中心となり、てきぱきと調理がすすんでいきます。施設長の金澤香さんは、「毎年の訓練の積み重ねにより、町会の方々はすっかり施設に慣れている。すすんで裏庭から薪を補充してくれたり、訓練開始時刻より先に来て準備や掃除を始めていてくれたりと、助かっている」と言います。
町会の男性メンバーが主となり、新聞紙や薪を使って火加減を調整。
お米の水加減など、調理は女性メンバー、栄養士が活躍。
5丁目町会防災部長の嶋野智光さんは、「合同訓練がはじまるまではみどりの苑に来る機会はなかったが、今では施設の人とも毎年和気あいあいとやれている。このあたりは防災の意識も高く、各町会でも積極的に訓練をしている。しかし、町会員の高齢化がすすみ、実際に有事の時に訓練通りにうまくできるのか、また、若者がいない今後の事を考えると心配な面もある」と話します。防災訓練の実施は、地域住民の防災意識や自助・共助の力を高める事につながってきている一方で、担い手の高齢化は災害時においても課題です。
お米が炊きあがるまでの間、志村消防署と志村警察署の署員より災害時の自助・共助の大切さについての話や、火災への注意喚起などがありました。やがてお米が炊きあがるいい香りがしてきます。
今年は「夜間に災害が発生した」想定の訓練であるため、普段カラオケや民謡などクラブ活動を行う「すみれ部屋」を消灯してご飯を運び、投光器の明かりだけを頼りにおにぎりを握っていきます。その頃、中庭では栄養満点の豚汁が湯気を立ててできあがりました。
職員と町会のメンバーが役割分担をして、あっという間におにぎりが完成
施設と町会が一緒に取組む意義
食事の試食後、施設と町会の懇親会が始まりました。まず、みどりの苑から新たに「水害・土砂災害対応マニュアル」を作成した事と、それをふまえて夏に行った訓練について報告がありました。報告の後、みどりの苑防災管理者の安井仁さんは、町会で抱えている課題や悩み事の中で、施設が協力できる事があるかを町会メンバーに投げかけました。
また、発電機や非常用コンセント等、施設が持っている防災備品の情報を伝えると、町会からも「井戸がある場所を知っている」、「発電機を持っている家がある」、「在宅で特殊な医療機器を使っている人はいない」等、地元ならではの災害時に役立つ情報が返ってきました。懇親会は互いの親睦を深め、顔の見える関係づくりをすすめるとともに、地域の情報交換の場になっています。
みどりの苑では、毎年実施する「みどり祭」のバザー収益を防災用品の購入資金にあてています。今までに災害用トイレセットやソーラー発電機を購入しました。夏祭りや防災訓練の交流を機に、町会から購入してほしい防災用品等がリクエストされる事もあり、長年顔の見える関係を築いてきた間柄だからこそ、互いに相談を持ちかけやすい関係性ができています。
施設と町会が一緒に訓練に取組む事は、災害発生時に地域住民の命を守る事につながります。そのための連携は、一朝一夕でできるものではなく、平時からのよい関係性や、訓練の積み重ねが必要です。そして「施設にできる事」「町会にできる事」のそれぞれを活かした協働が求められます。
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