あらまし
- 平成28年度に本会が実施した「生活困窮者自立支援法における地域のネットワークの活用に関する区市アンケート」結果から、支援の入口(対象者の発見)と支援の出口(社会資源づくり)との連携、地域資源を活用した調布市社会福祉協議会(以下、調布市社協)の取組みを紹介します。
調布市社協では、平成27年4月から生活困窮者自立支援法に基づき、調布市より受託した「生活困窮者自立相談支援事業(調布ライフサポート)」を実施しています。
支援の入口となる困りごとの窓口
調布ライフサポートは、調布市社協内に生活や仕事の悩みの「相談窓口」として開設されました。
「生活困窮者自立支援制度」の中で調布市社協が受託しているのは、必須事業の相談業務、任意事業の学習支援です。相談業務では、生活や仕事など、生活困窮者が抱えるさまざまな困りごとに関する相談に応じて、必要な情報や助言を行います。さらに、相談業務の中での就労支援については、調布市就労サポート事業として別団体が、カウンセング・職業紹介、就労に向けた訓練を支援しています。
調布ライフサポートにおける相談者の平均年齢は48歳ですが、65〜70歳代の相談もあります。
平成29年3月には、就労継続が難しい方の参考になればと、就労が定着している方を対象とした懇談会を初めて実施し、5人の参加がありました。調布ライフサポートの担当である地域福祉推進課地域福祉係係長の多門晶子さんは、「参加された方が自身の生活や仕事を振り返り、ストレス解消法や仕事で工夫をしている点などを話し合った。参加者同士が認め合い励まし合う良い場だった」と話します。
調布ライフサポートの事業を始めたことで、ひとつの窓口だけでは支えきれない相談も、多くの機関の窓口と連携・協力しあえます。また、これまで社協との関わりが少なかった保健所や病院、行政の各部署との連携も増えたことで、社協の相談者支援の幅が広がりました。
地域福祉コーディネーターの活動
調布市と社協が地域づくりの取組みとして連携する、市の補助事業「地域福祉コーディネーター(コミュニティソーシャルワーカー、以下CSW)」は、平成25年4月から実施しており、現在6人体制となっています。
CSWとは、公的な福祉サービスでは十分な対応ができない、制度の狭間で苦しむ方などに対し、さまざまな相談を受け解決に向けた取組みを行います。
開始当初は、CSWの存在と役割を地域住民に周知し、理解してもらうために、自治会や地区協議会、地域包括支援センター、市内にある地域サロン、地域福祉センター等へ赴い
ていました。最近では、CSWの存在が認知されてきたことから、地域住民からの相談件数が年々増えています。
アウトリーチ先では、どこに相談してよいかわからなかった生活課題や、どの支援機関にもつながっていない、地域住民の気づきによって顕在化したケースなどの相談を受けるようになりました。CSWの活動は、支援の入口である「対象者の発見」の役割を担う重要なものとなっています。
そこで、生活困窮者の早期発見につなげるために、調布ライフサポートと密接な協働関係を構築し、取組んでいます。
個別支援から地域支援へとつながる
CSWがかかわる相談には、複合的な課題を抱えた世帯を支援することが増えています。
ある4人世帯(父と母、子、祖母)の事例では、介護サービス(ヘルパー)を利用している父を訪問したヘルパーが、母から「就労せず、ひきこもり気味の子がいる。今後の子の就労について相談したい」と相談を受けました。
ヘルパーからケアマネジャーへ、そして、支援できる範囲を超えるため、地域包括支援センターへ報告が入りました。その後、担当地域の「CSWの存在」を認知していた包括から、CSWへ相談がありました。
結果として、母自身の将来への不安や家族介護へのストレスの軽減、子への就労支援、祖母の孤独解消のための居場所づくりなど、家族それぞれの立場に応じた課題が整理されました。また、近隣でもサロンのような居場所を必要としている方がいたため、住民が主体となった新たなサロンの設立へとつながっていきました。
就労支援の調布ライフサポート、居場所づくりのCSWと民生児童委員、介護サービスの包括とケアマネジャー、この4人世帯の支援には、多くの機関が連携しました。
4機関でケース会議をもち、CSWが調整役となることで、各自に応じた適切な支援が可能となりました。
調布市社協CSWの宍戸美穂さんは「さまざまな方と連携したが、支援の中でも特に、民生児童委員の方がずっと祖母のことを気にかけており、一緒に支援する上でのキーパーソンでもあった。それが、4人世帯の個々の支援から、サロン設立などの地域支援へとつながった」と話します。
課題に対しての工夫と取組み
CSW3年目の宍戸さんは、「今はまだまだ種まきの時期」と話します。普段のアウトリーチでは、つながりをつくるため、地域住民とお話することを重視しています。そのため、CSWのことを周知する方法は、いろいろな場所に参加してPRをすること以外に、例年、年末年始にサロンや自治会等へチラシを配布しています。
今の課題は、地域住民にCSWの存在を情報発信し、知ってもらった後、困った時にどう思い出してもらうか。また、そのために相談しやすい体制づくりも必要になります。
調布ライフサポートでは、生活費が不足し切迫した状態で相談に来られる方も多く、すぐに就労支援へつなげることも少なくありません。そのため仕事のマッチングが難しいことが課題です。そこで、就労定着支援の取組みとして、3か月を目安に、就労後に電話や手紙で様子を伺うなどのアプローチを実施しています。
他にも、調布ライフサポート担当の職員は、社協の貸付業務を兼務しています。担当の髙杉友美さんは「困りごとの相談を受けた時、貸付の必要の有無などの判断を同時にできて、支援をスムーズにすすめることができている」と話します。
この事業を受託したことで、他機関とのかかわりが増え、協働・連携した取組みの蓄積から、より社協への信頼が高まりました。社協に相談があったケースを他機関へ紹介する場合には、事業の理解がすすみ、支援の輪が広がったことを実感しています。また、地域にある多様な機関との関連性が深まりました。
「今後、支援の出口として、地域にどうつなげていくか。時間をかけて掘り起こし実現したい」と、多門さんは話します。今後も社協活動を通じて、新たな地域の資源開発へのつなぎ等の取組みが期待されます。