代表 髙村 ヒデさん
富山型デイサービス「一緒がいいね ひなたぼっこ」は、江戸川区の南葛西住宅と呼ばれる団地内の1階にある区立「あったかハウス」で、毎月第3日曜日、毎週水曜日と金曜日に開かれています。「ひなたぼっこ」は、富山型デイサービスの理念に基づき、赤ちゃんから高齢者まで、障害のある人も健常者も、誰もが一緒に身近な地域で楽しく過ごせる居場所として活動しています。利用定員は概ね15人程度です。平成23年6月、「江戸川・地域・共生を考える会」代表の髙村ヒデさんが、仲間5人と共に立ち上げました。
富山型デイって?
赤ちゃんから高齢者まで、障害の有無にかかわらず、誰もが一緒に身近な地域でデイサービスを受けられる場所。それが「富山型デイサービス」です。この形は、平成5年、病院を退職した惣万佳代子さんを含めた3人の看護師が開設した民間デイサービス「このゆびとーまれ」(富山市)から始まりました。富山市の広い民家を使い、家庭的な雰囲気のもと、年齢や対象者を限定せずに柔軟に福祉サービスを提供する形として全国に知られるようになりました。
富山型デイ、そして惣万さんとの出会い
保育士だった髙村さんは、社会貢献を学ぶため区が設立した「江戸川総合人生大学子ども支援学科」に入学し、在学中の20年1月、富山型デイサービスのことを知りました。翌月にはさっそく富山市の「このゆびとーまれ」を訪問し、惣万さんと会い、富山型デイの理念に衝撃を受けました。新潟県南魚沼市出身の髙村さんは、「実際に富山型の見学に行ったら、自然体でまるで田舎の茶の間のような雰囲気。私が生まれ育った田舎の心地良い環境を彷彿させられた。高齢の女性が縁側で赤ちゃんをあやしている姿を見て、これをぜひ江戸川区でやりたい!と心に決めた」と話します。さらに、団地の広場で、子どもたちに買ったばかりのみかんを嬉しそうにふるまう高齢の女性が「みんなが一緒だからおいしいね、たのしいね。月1回でもみんなが一緒に居られる場所が欲しいわね」と言ったそのひとことが、髙村さんの背中を押しました。こうして、富山型デイサービス「一緒がいいね ひなたぼっこ」を24年6月に開設しました。
好きなことを好きな場所で
ゆったりとした広いスペースで、子どもたちと高齢者が一緒にカルタで遊んだり、ボランティアの人が来て歌や人形劇を楽しんだり、みんなで食卓を囲んでお昼を食べたりします。自由にのびのびと過ごせる「ひなたぼっこ」を気に入り、障害のある子どもとその親たちも長年、一回も休まず通っています。プログラムはあえて設けずに、誰もが好きなことを好きな場所で、自由に思い思い過ごします。お昼は、調理から配膳まで、みんなで分担します。障害のある子どもも特別扱いせず、スタッフが見守りながら昼食の配膳をお手伝いしてもらったりします。
富山型デイは小規模であることも特徴で、利用定員が少ないことは、その分スタッフの目が行き届き、他の利用者とも親密になり、自分らしく過ごすこともできます。
誰もが安心して自由に過ごせる居場所
ここは一人暮らしの高齢者や、障害のある子ども、障害のある大人などの幅広い世代が利用しています。しかし、高齢者と障害のある子どもや大人が一緒に過ごせる施設はまだ少ないため、「誰でもどうぞという居場所が、ひとつはあっていいのでは」と思っています。
参加したての頃、硬い表情で座って様子を見ていた高齢者が、次第に障害のある子どもと一緒にカルタ遊びをはじめて笑顔に変化していきました。同時に、障害のある子がにこっと笑っているのを見ると「光をみた」思いがします。
ここを利用している誰もが、安心して自由に、そして笑顔で過ごしている様子を見られることは、成果であり、何よりも「ここを大好きだ」と言ってくれる言葉に応えたいと思います。
障害のある人が働ける居場所づくりをめざす
今、「ひなたぼっこ」を利用している障害のある子どもたちが働ける居場所となるように、事業化をめざしています。「このゆびとーまれ」では、以前ここを利用していた障害のある子どもが、そのままスタッフとして生き生きと働き、お給料をもらっています。「ひなたぼっこ」を通して、それぞれが自分のできることで人の役に立ち、社会に参加し、共働、共育、共感の精神を育み、自信をもって輝いて過ごしていける居場所になることをめざしています。
配膳のお手伝い
みんな一緒に食卓を囲んで
〒134-0085 江戸川区南葛西1-1-1-101(南葛西住宅1階)
江戸川区での居場所づくりにむけて仲間を募り、平成23年6月、会を立ち上げた。富山型デイの活動場所を身近な住宅地域に求め、団地の集会室にて24年6月開設。24年11月NPO法人として設立。現在、区立「あったかハウス」に拠点を移し、毎月第3日曜日、毎週水曜日・金曜日10時〜14時に開催。