(社福)石巻祥心会
地域の中にある障害者施設として
掲載日:2017年12月12日
ブックレット番号:1 事例番号:4
宮城県石巻市/平成24年3月現在

 

専門職ボランティアの受入れ調整

数日が経過すると、全国の障害福祉関係者から「ボランティアに行きたい」という問合せが入るようになりました。当初は、法人で問合せを受けていましたが、問合せが増加するにつれ、徐々に調整が困難になっていきました。

 

そんな中、新潟県中越地震を経験した社会福祉法人「りとるらいふ」の方から「ボランティア受入れのコーディネートをさせて欲しい」との申し出がありました。ボランティアの募集からローテーションの編成、オリエンテーションまで、りとるらいふが一手に行い、1週間単位で福祉避難所へボランティアを派遣する仕組みが整いました。1チーム8人程度で1人チーフを決め、引継ぎはチーフが1~2日間残り、支援をつないでいきました。

 

途中からは神奈川県知的障害福祉団体連合会が引き継ぎ、7月3日までに述べ約200人のボランティアが活躍しました。鈴木さんは「ボランティアの皆さんがいてくれたことで利用者にも職員にも大きな安心感が生まれた。また、外部でボランティア調整をしてくれたのは非常に助かった。既に人手が足りていても、支援の申し出はなかなか断りづらい。そうした時に第三者がコーディネートをしてくれたことで調整がスムーズにいった」と話します。また、そのほかにも、独自で炊き出しに来てくれるボランティアや音楽隊を組んでボランティアに来てくれる人もいました。

 

 

6つの事業所を徐々に統合 通所サービスを再開

一方、各通所施設では、利用者を避難所として受け入れていたため、なんとか自宅に戻った利用者が通所サービスを使えない状況が起きてしまいました。そこで、避難所となっていた6つの事業所を徐々に統合させ、震災から約3週間後の4月1日に通所サービスを再開、4月21日からは送迎も再開しました。

 

在宅被災障害者の実態把握

地域の障害者の実態把握についてはさまざまな団体が独自に調査をしていました。その結果、重複や漏れが出てきていました。そこで、祥心会の相談支援事業所を含む市内3か所の相談支援事業所が宮城県と石巻市と調整して、障害者手帳の個人情報の開示により、沿岸地域の全障害者宅を訪問することとなりました。埼玉県からの応援職員と協働し、2人1チームでGW明けから訪問調査を開始しました。

 

訪問調査では、在宅生活をしている障害者から「家にきて聞くだけ聞いて何もしない」と怒られることも少なくありませんでした。震災後、さまざまな団体が各家庭を訪問していたものの、それっきりになってしまっていたからです。とは言え、訪問すると、サービスを利用する必要性のある方がおり、居宅介護サービスや通所サービスにつながったケースもいくつかあります。ニーズを拾っても応えられないことがないよう、事業所の定員を超過して利用者の受入れを行いました。

 

しかし、中には訪問者が死体の第一発見者になってしまう場合もあり、過酷な環境下での訪問調査となりました。沿岸地域の障害者の戸別訪問が終了するまでおよそ3カ月かかりました。

 

仮設グループホームの建設へ

本来、施設に入所している方が、グループホームや別の事業所へ避難している現状がありました。そうした方々が一刻も早く施設に戻れるように支援する必要が出てきました。

 

とはいえ、家を失い、行き場を亡くした福祉避難所の障害者とその家族に一般避難所に戻ってもらうことは考えられません。行政にもかけあい、福祉避難所にいる障害者が優先的に仮設住宅に入居できないかと問い合わせましたが、当時は難しい状況でした。

 

そんな折、4月6日に日本財団が視察に来られ、事情を話したところ仮設グループホームを建設できないかという話になり、建設を決定。6月下旬に完成し、7月3日に福祉避難所の閉鎖となりました。

 

法人として被災者支援に取り組む

石巻祥心会は、法人として被災後すぐに災害対策本部を設置、そして、本部の統括責任者を置きました。これにより、施設が各地に点在していても情報が一元化できたため、さまざまな対応がスムーズにいきました。また、各地に施設がありますが、できるだけ利用者と職員が一か所に集まるように指示を出しました。それぞれの施設で対応するよりも、職員に余裕が出るためです。鈴木さんは「それぞれの現場の責任者が顔を合わせる機会を作り、情報を共有した。災害時には情報を一元化しないと混乱が起きる可能性があるので、法人として窓口を一本化できたのは大きかった」とふり返ります。

 

その他、石巻祥心会では一般の被災者へもさまざまな支援を行っています。訪問入浴車を活用したお風呂の提供、避難所を回ってのゆで卵の炊き出し、授産施設で作っているバイオディーゼルを燃料として消防者等の緊急車両に提供など、法人の持つ強みを活かして、地域の障害者のみならず一般の被災者の支援を行いました。

取材先
名称
(社福)石巻祥心会
概要
(社福)石巻祥心会
http://www.i-shoshin.or.jp/
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