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府中市社会福祉協議会 地域活動推進課 課長補佐 吉井康之さん、
同課コーディネーター担当 主事(地域福祉コーディネーター)小川和樹さん
平成28年9月に設立した東京都地域公益活動推進協議会は、(1)各法人、(2)地域(区市町村域)の連携、(3)広域(東京都全域)の連携の三層の取組みにより、社会福祉法人の「地域における公益的な取組み(以下、地域公益活動)」を推進しています。東京都地域公益活動推進協議会では、地域ネットワークの立ち上げのための事務費や、複数法人の連携事業開始時期の事業費の助成を行うとともに、地域ネットワーク関係者連絡会等を開催し、他の地域と情報交換できる機会をつくっています。
あらまし
- 府中市では、「第3次地域福祉活動計画」(平成27~令和2年度)において、重点目標の一つに「小地域での『わがまち支えあい協議会』の設置」を位置づけ、社会福祉協議会(以下、「社協」)に配置された地域福祉コーディネーターが推進しています。市内11の文化センター圏域を単位としたそれぞれの地域で、住民、福祉・医療の事業所や専門機関、商店街、行政機関等、さまざまな関係者が地域の課題を話し合い、解決するための取組みをすすめており、そこに社会福祉法人も参画しています。身近な地域のために自分たちにできることを、顔の見える関係の中で連携・協力して取組むことで、さまざまな可能性とつながりが広がっています。
11エリアの「わがまち支えあい協議会」に社福法人も参加して活動する
府中市では、府中市社協を事務局に、平成26年度末に「第3次地域福祉活動計画」(計画期間:平成27~令和2年度)を策定しました。計画では、小規模な地域で住民相互の支えあいを推進するための「わがまち支えあい協議会(地区社協)の設置」と、その立ち上げをすすめ、困りごとのある個人の課題を地域へ投げかけ、地域全体で解決したり、地域だけでは解決できない課題については専門職との調整・つなぎを行う「地域福祉コーディネーターの配置」が重点目標として位置づけられました。
この計画の進行と同時期の、平成27年6月に「社会福祉法人連絡会」が開催されました。7法人16名が参加し、地域公益活動に市内法人としてどう取組むかを検討しました。
府中市社協から、取組みの方向性として「各地域の実情を踏まえた社会福祉法人のネットワークづくり」「『ニーズの発見と気づきのシステム』づくり」「ニーズを踏まえた支援・事業の創造」「地域の取組み状況等を発信し、広域で共有するための取組み」の4点について提案がありました。これが第3次地域福祉活動計画で目指すものと同じ方向性であることから、ともに地域福祉活動計画を推進していくことについて、参加法人から賛同を得ました。
具体的には、市内全域での法人の組織体づくりから始めるのではなく、市内11か所ある文化センターの各エリアですすめる「わがまち支えあい協議会(以下、「わがまち」)」の活動に、各法人が積極的に関与し活動していくことになりました。
また、府中市では、社会福祉法人に限らず、医療法人、NPO法人、株式会社など、法人の種類を問わずさまざまな施設・事業所等に呼びかけ、取組みをすすめています。市内の福祉や医療を担う施設・事業所は社会福祉法人だけではなく、「わがまち」を推進する上でも、地域の住民とさまざまな団体が関わり、ともに考え、活動していくことを目指しているためです。
近隣の施設・事業所で「ご近助会」をつくり、地域のサロンを支援
現在、「わがまち」は11のうち3エリアで立ち上がり、8エリアで立ち上げに向けた準備会が行われています。立ち上げ済み、準備中といった段階を問わず、各エリアで、地域の課題解決に向けた具体的な活動がすすめられています。
そのうちの一つが、平成30年4月に立ち上がった、四谷エリアの「わがまち」である「ささえあい四谷」での活動です。約2年前から、月一回、平日の昼間に、誰でも参加できるサロンである「菜々(さいさい)のつどい」を開催しています。サロン開催時に近隣の農家等が野菜の委託販売をし、その売上げの一部を収益にすることで、サロンの参加費を無料にしています。
このサロンの運営に、平成30年8月から、近隣の施設・事業所でつくる「よつや ご近助(きんじょ)会」が関わっています。「ご近助会」は、「ささえあい四谷」でサロンの話を聞き、もともと近隣施設・事業所の連絡会を開催したいと思っていた、地域密着型複合施設「よつや正吉苑」が呼びかけ、地域福祉コーディネーターの調整の下、集まった会です。よつや正吉苑、地域包括支援センターよつや苑、介護老人保健施設ウイング、フローレンスケア、府中日新町内科クリニック、デイサービスりんりんの6施設・事業所がメンバーとなり、地域の活動を支援するため、また自施設の魅力を地域の方に伝えていくことを目的に、活動しています。毎回、サロンの一コーナーとして、その回の当番施設が、得意とすること(体操、講座、相談会等)を提供しています。「ご近助会」として定期的に集まり、サロンに向けた打合せをし、また、バザーに共同でブースを出展するなど、施設間の交流も深めています。
施設をサロン会場とし、運営には他法人職員も参加。利用者のサロンへの送迎も支援
西府エリアでは、「わがまち」の立ち上げに向けた「西府準備委員会」を実施しています。その活動の一つとして、精神障害の方が通う就労継続支援A型事業所「パルテ」を会場に、「わがまちサロンにしふらっと」を開催しています。普段はコーヒーや利用者が作ったパンを提供する喫茶スペースで、月に一度、サロンを開いています。運営には、会場の事業所の職員だけでなく、近隣の他法人の施設・事業所の職員もスタッフとして関わっています。
このサロンでは、「西府準備委員会」において、地域の方が「サロンに参加したいという人が近所にいるが、車いすを利用していて一人では参加できない」と話をしていたのを受け、サロンへの送迎のニーズに応えていたことがあります。地域福祉コーディネーターが間に入り、有料老人ホームとつないで、デイサービスの空き時間を活用し、参加者を車で送迎する対応をしていました。こうした形で、各施設が地域の困りごとやニーズを知ることで、「これならできる」ということを実践しています。
「わがまちサロン にしふらっと」の様子
小中学校での「総合的な学習」で現場の職員が講師になる
「わがまち」の活動とは別に、府中市では、小中学校での「総合的な学習」の時間に、地域福祉コーディネーターとともに、学校の近隣の複数の施設・事業所の職員が「地域の専門職」として出張ボランティア講座の講師を担う取組みも実施しています。
施設職員による認知症サポーター養成講座や車いす体験、ガイドヘルプ体験、高齢者疑似体験等と、社協の地域福祉コーディネーターによるボランティア活動の話をセットで開催するなど、それぞれの施設・事業所が専門性を発揮できるよう、さまざまな形で授業を行っています。実施にあたっては、年2回の「福祉協力校連絡会」などで各学校が集まる機会を利用して、社協から協力や理解を呼びかけており、学校との連携がとりやすい状況もあります。平成30年度には、69回の講座を実施し、延べ43事業所163人の職員が講師として参加しました。
小学校での「総合的な学習」の講座の様子
職員が地域とつながる意義や社会資源としての役割を実感できる機会
府中市社協地域活動推進課課長補佐の吉井康之さんは、「施設や事業所の規模や種別によっては、『わがまち』など地域での活動に、なかなか参加する人員を割けないこともある。学校での出張講師の活動等、施設・事業所に地域と関わってもらえる選択肢を複数用意し、できる形で関わってもらう機会を作ることが重要」と話します。また、「現場の職員の方が『わがまち』や学校での講座等、身近な地域の活動に参加することで、単に言葉で伝える以上に、地域とつながる意義や、自施設が社会資源としての役割を果たせることを実感できるという声もあがっている」と、理解の広がりを感じています。
今年度は、「わがまち」の活動がすすんできたこのタイミングで、「ご近助会」のように身近な地域で施設が連携できる場を増やしたり、社会福祉法人を含めた市内全域の関係者が集まる場を設けていくことを予定しています。今後は、それぞれのエリアでの「わがまち」や学校での取組みについて、市内全域の関係者が情報交換をしながら、発展させていくことをめざしています。
http://fsyakyo.or.jp/