東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ
若手介護職員が自分たちの言葉で「介護の仕事の魅力」を伝える (東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ)
掲載日:2020年4月21日
2020年4月号 連載

ケアリーダーズの集合写真

 

あらまし

  • 福祉人材の確保・育成・定着に向けたさまざまな取組みの一つとして、福祉施設や事業所では、福祉を学んだ新卒学生だけでなく、未経験者や主婦層、高齢者、外国人など多様な人材に対し、採用や育成・定着のためのさまざまな工夫やアプローチを行っています。多様な背景を持つ人たちが福祉の仕事に関わるきっかけや、働く環境をつくるための取組みや工夫等を取り上げます。

 

前号までは「福祉人材の確保・育成・定着に向けた取組み」として各施設の取組みや工夫について取り上げてきました。今号では、番外編として高齢者福祉・介護の仕事を広く都民に知らせ、魅力を発信するためにさまざまな活動を行う「東京ケアリーダーズ」(以下、ケアリーダーズ)の取組みを紹介します。
 
ケアリーダーズの構成メンバーは、東社協の業種別施設部会連絡会の一つである東京都高齢者福祉施設協議会(以下、高齢協)の会員施設・事業所で働く概ね30歳以下の現役の介護職員です。自分たちの言葉で介護の仕事の魅力を伝えること、次世代を担う若年世代に介護の仕事の素晴らしさをアピールすることを目的に、平成28年9月に結成されました。活動内容は、就職イベント等でのシンポジストやスピーカーとしての出演、各種福祉に関連するイベントでの歌やダンス等による出演、PRチラシ、動画への出演など、多岐に渡ります。リーダーである社会福祉法人大三島育徳会 特別養護老人ホーム博水の郷 ユニットリーダーの番本鷹也さんは「介護のイメージは〝大変〟〝休みがとりづらい〟などネガティブなものが少なくない。固定化されがちなイメージを払拭するためにも、現場職員である私たち自らが活動し、魅力を発信することに意味がある」と話します。

 

歌やダンスで介護の魅力を発信

ケアリーダーズとしての初めての活動は、平成28年に高齢協が主催した介護の研究発表会「アクティブ福祉in東京 ,16」の中でした。ケアリーダーズの任命式が行われた後、歌とダンスを披露しました。その後、第1期の任期を終える平成31年3月までは、各種福祉に関するイベントやメンバーが勤務する施設等で歌やダンスを披露し、歌って踊れる介護職員という新たな発想で活動することを通して、幅広い世代に関心を拡げ、介護の魅力を伝えてきました。メンバーで社会福祉法人浴風会 南陽園介護福祉士の早川広夢さんは「日常やその他の業務がある中で時間をつくり、メンバーとともに練習に励んだ。慣れないダンスを披露するのはとても緊張したが、良い経験になった」と話します。
 

アクティブ福祉 in 東京‘19の活動の様子

 

次世代と現場の架け橋となる環境づくり

平成31年度からは新メンバーを迎え、「第2期」として活動を再スタートしています。第1期以上に若年世代に介護の魅力を伝え、未来の福祉人材を育てることに重点を置いた活動に取り組み始めています。その活動の一つとして、令和元年8月に都立家庭・福祉高校(仮称・令和3年度開校予定)の学校説明会では、介護体験の講師を務めました。体験は、中学生が「高齢者疑似体験」と「車椅子体験」を順番に行うもので、高齢者と接する際の姿勢や、動きに応じた介護者の立ち位置、スロープでの車椅子の操作方法等の介護技術を伝えました。講師を務めたメンバーで社会福祉法人三育ライフ シャローム東久留米 介護福祉士の小林祥子さんは「一生懸命学ぼうとする中学生の姿勢が印象的だった。自分よりも年上の方を支援する介護という仕事の難しさややりがい、魅力を伝えることで、日頃の業務を見つめ直すきっかけや気づきになり、とても有意義な時間となった」と話します。
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そのほか、令和元年9月に開催された「アクティブ福祉 in 東京 ,19」では、「ケアトーク~あなたの知りたい介護について~」と題し、学生向けの相談ブースを設けました。当日は、介護の仕事を行う上での悩みや疑問に関する質問に対し、現場で働いている目線で楽しい点や大変だと思う点などを話しました。番本さんは「ブースを設けたのは平成30年に続き2回目。今回は倍以上の参加があった。学生だけでなく、現場で働く介護職員の方、外国人留学生の方の参加もあり、さまざまな質問が飛び交った。これまではどちらかといえば発信する側としての活動が多かったため、参加者と直接やりとりすることを通して介護の魅力を伝えることができ、充実感があった」と話します。
 
アクティブ福祉 in 東京‘19の活動の様子 「ケアトーク〜あなたの知りたい介護について~」

 

定例研修会等の場によって介護の魅力を再確認

番本さんは「介護の魅力を発信することがケアリーダーズの活動の大きなねらいである。それだけでなく、他施設の同年代・同職種の仲間との横の繋がりができたことにより視野が広く持てるようになった。また、同年代ならではの悩みも共有することができ、自己研鑽、介護の仕事のやりがいを再認識する場となっている」と話します。
 
また、2ヶ月に1回、定例研修会の機会を設け今後の方向性を検討するほか、アナウンサー、芸人、大学講師等の著名人を講師に招き、効果的に介護の魅力を伝えるための情報発信の方法や介護職員としての自分をアピールする方法、介護ロボット・ICTの活用といった介護を取り巻く現状や法律などについて学んでいます。ほかに年4回、高齢協が発行している機関誌「アクティブ福祉」では、都内高齢者福祉施設の先進的な取組みを取材することで、メンバーの介護職としての知識向上にもつながっていると言います。早川さんは「活動を通して、改めて魅力を伝えることの難しさを感じている。今もどうしたら介護の魅力を伝えられるか試行錯誤中のため、定例研修会を通して学びを深めたい」と話します。
 
 

定例研修会の様子

 

今後について

第2期の活動がスタートし、1年が経ちました。小林さんは「介護業界に限らず、対人援助職のやりがいについて発信していきたいと思っている。保育分野など、他分野とも連携していきたい」と話します。早川さんは「今後も継続して福祉のイベントや就職フォーラム等で介護の魅力を伝えていきたい。また、小学校・中学校・高校に対し、介護を知ってもらう活動も視野に入れたい」と話しました。番本さんは「できれば、まだ福祉や介護の先入観があまりない小学生を対象にし、魅力を伝える活動を行っていきたい。そして、その小学生たちが将来的に介護の仕事に就いてみたいと思えるように活動したいと思っている」と話します。
 
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若手職員自らが悩み、考え、一歩ずつ前進しながら介護に向き合う姿をありのままに発信することで新しい世代へと福祉の輪が広がっていきます。
 
 
取材先
名称
東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ
概要
東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/kourei/tokyocareleaders.html
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