「パン工房PukuPuku(運営:社会福祉法人いたるセンター)」は、平成21年に環状八号線沿いの杉並区南荻窪にオープンしました。区内唯一の就労継続支援A型事業所として、利用者の自立に向け就労スキルの向上と地域社会で生活していくための社会性を身につけることに重点を置いています。また、いきいきと働ける環境を整備し、事業を通して社会に貢献している実感が得られるよう支援しています。定員は20名で、主に知的障害のある利用者が、スタッフと共にパンの製造・販売に従事しています。10年以上製造に携わる利用者の方は「パンづくりは楽しい!」と話します。
パンづくりは毎朝5時から始まり、朝6時台に焼きはじめます。10時すぎには焼き上がり、お店は焼きたてのパンの香りでいっぱいになります。最も多くパンが並ぶお昼の時間帯には、店内はお客さんでにぎわいます。平日はお年寄りや子ども連れの方が多く、土曜日には家族で訪れるお客さんもいます。
お客さんに焼きたてのパンを
いたるセンターでは、創立当時「いたるパン」というパンの製造事業を行っていました。利用者が通所施設に滞在する時間に合わせてパンをつくっていたため、朝食やランチといったお客さんの食べたい時間帯に焼きたてのパンを提供することができず、一般のパン屋さんと競争することが難しかったと言います。
そのような「いたるパン」から得た教訓を活かし、さらにオンリーワンのパンをつくることをめざしました。厳選小麦100%、天然酵母100%、塩やバターも天然で良質な素材を使用し、長時間熟成してイーストフードや添加物不使用。おいしいことはもちろん、子どもにも安心して食べてもらえるパンとして、安心・安全にもこだわりました。
「本物のおいしい焼きたてのパンを届けたい」「地域のお客さんに愛され親しまれるお店をつくりたい」という想いが「パン工房PukuPuku」の誕生するきっかけとなりました。
おいしさの秘密
「パン工房PukuPuku」では、低温で約12時間かけて発酵させた、天然酵母100%のパンをつくっています。発酵中の酵母が”ぷくぷくっ”と泡を出す様子から店名がつけられました。お米と小麦で昔ながらの製法を用いて培養した「ホシノ天然酵母」を使用し、保存料やイーストフード等は一切使用していません。安心とおいしさの秘密は、店名の由来となった酵母の”ぷくぷくっ”にありました。
地域に愛されるパン
令和元年6月からは、杉並区立のすべての保育園へ給食用とおやつのパンを納品しています。保育園からは「パンがおいしくなった」との声もいただき好評です。保育園への納品が確立したことで、受注生産のため安定した生産体制を組めるようになりました。オープンしてから約10年間、地域で安心・安全なおいしいパンづくりを継続してきたことが実を結びました。保育園への安定した納品のため、お店のカフェスペースをキッチンスペースへと改装し、生産体制の強化を図っています。
その他にも、幼稚園や高齢者施設への納品も増えてきています。外販活動では利用者自らが現場に立って販売活動を行っています。区役所や地域のイベントへの出店・出品も積極的に行い、地域のさまざまな団体との交流も深めてきました。また、障害者施設の自主生産品の購入機会を提供する「ハッピースマイルフェスタ(※1)」に参加し、都心のビジネス街での販売も継続しています。
(※1)https://grouphappysmile.wixsite.com/happysmile
就労支援の充実を
生食パンなどの高級品の販売実績も伸びてきています。しかし、現在の厨房は狭く、厨房機器の配置が思いどおりにならないことや、導線の悪さ、手仕事が主流で機械化できないこと等が課題としてあげられています。施設長代理の池田史暢さんは「就労支援をどのように取り組むか、毎週ミーティングで話している。作業性をどうやってアップさせるかの話は尽きない」と話します。利用者がのびのびと活動し、就労スキルを向上させることも無理なくできるようにするため、製造現場の移転や再整備も計画されています。
今後は、就労に困難を抱える方のための新たな枠組みとなる「ソーシャルファーム」の認証制度(※2)が都で導入されることを受け、法人として参画・挑戦していくことも視野に入れています。
就労支援を充実させ、障害のある方の自己実現の場としての確立をめざし、「パン工房PukuPuku」の取組みはこれからも続きます。
(※2)「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例(令和元年12月制定)」
(JR荻窪駅より徒歩10分、環状八号線沿い)
営業時間:9:00~19:00
(定休日:日曜・一部祝日)
※営業時間が変更になることもあります。詳細は電話にてご確認ください。
http://www.itarucenter.com/11_pukupuku/index.html