広島県広島市/平成27年3月現在
災害復旧が長期化するにつれ、被災者は非日常的な生活が続くことによるストレス、今後の生活の見通しが立たないこと等により、体調不良が起きてきます。そのような中でも、「自分よりもっと苦しんでいる人がいる」と遠慮してしまい、自身の体調不良や悩みを表出しにくいこともあります。
そのような状況を察知した安佐北区災害ボランティアセンターは、看護師やケアマネジャー等を組織化し戸別訪問を行いました。
住民が自発的に泥出しをしていた
8 月20日朝、安佐北区社会福祉協議会事務局長の三村誠司さんと同石田浩巳主任は車で被害現場を確認しました。道路に石や土砂が流れ出し川のようになり、家が道路まで流れされていたり、電信柱が倒れている状況を目のあたりにしました。そして、住民が自発的に生活道路の泥出しを行っている姿もありました。事務所に帰り、28の地区社協会長の安否を確認することができました。
午後になると、地元のNPO法人や小規模多機能連絡会の方が駆けつけてくれ、被害状況を話し合う中、災害ボランティアセンターの立ち上げを検討しました。その間、小学校に開設された避難所を回り、ニーズを聞き取りました。そして、8月22日に安佐北区災害ボランティアセンターを開設し、23日に2つの避難所にサテライトを併設しました。発災から9月末までに約1万3千人のボランティアが活動し、1日平均約50名でした。
立ち上げ時から、地元住民や災害支援活動家災害復旧・復興支援コーディネーター前原土武さんなど、外部の人たちの声を受けとめ協力しながら運営しました。
広島市安佐北区社協主任の石田浩巳さん(左)
災害支援活動家災害復旧・復興支援コーディネーターの前原土武さん(右)
【広島市の概要】
1980年 | 政令指定都市 |
1985年 | 人口100万人超え |
1994年 | アジア競技大会開催 |
1999年 | 6月29日豪雨災害
死者31人、行方不明者1人、傷者59人、全壊101件、 半壊68件、床上浸水1,284件、床下浸水2,763件 |
2001年 | 芸予地震
死者1人、傷者193人、全壊65件、半壊688件 |
2014年 | 平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害
死者74人、傷者69人、全壊179件、半壊217件、 床上浸水1,084件、床下浸水3,080件 |
【広島市安佐北区地区の状況】
地区社協 | 28 |
総人口 | 150,612人 |
人口(0歳~14歳) | 18,881人 |
(15歳~64歳) | 88,939人 |
(65歳以上) | 42,792人 |
65歳以上人口 | 28% |
総世帯 | 65,935世帯 |
「自分より苦しんでいる人がいる」
地元有志の看護師や保健師等が被災者を見回る中で、「1階は土砂に埋もれ、2階だけで生活している方がいる。避難所で生活しながら家の片づけを行っている人も疲れてきている」などの声を石田さんは聞いていました。また、地域包括支援センターやケアマネジャーが要介護認定を受けている高齢者の訪問活動からも、被災者が我慢している様子を把握していました。
地元のNPOの方から聞いた状況をふまえ、被災者の状況を皆で共有し、チームで支えるため、災害ボランティアセンター内に「被災者サポート班」を設置しました。これは、看護師、ケアマネジャー、社会福祉士、民生児童委員、自治会役員等がチームとなり、被災者宅の戸別訪問等を行うものです。地元の民生児童委員に「気がかりの方はいますか」と事前に相談し、看護師等が2人1組のペアで訪問します。4地域に1~3チームが編成されました。石田さんは、「被災者は『自分よりもっと苦しんでいる人がいる』と遠慮してしまい、体調不良や悩みを我慢してしまう」と指摘します。被災者サポート班は、「困ったことはありますか?」と聞くと本当のことを話してくれないので、看護師が血圧を測りながら「夜眠れていますか?」と体調を気づかうように尋ねました。すると、「何かあったらすぐに家を出られるように服を着たまま寝ている」「ボランティアが家の片づけをしてくれるので、病院に行けない」等の声を聴くことができました。災害ボランティアセンターのことを知らず、家の片づけをお願いできることを知らない方もいました。そして、戸別訪問の後、地域包括支援センター、保健センター、民生児童委員等と毎日ミーティングを開き、情報共有しました。継続した訪問や支援が必要な方の確認をしました。
戸別訪問で被災者の体調を尋ねる様子
http://shakyo-hiroshima.jp/asakita/about/index.html