(右から)文京区社会福祉協議会 文京ボランティア支援センター
係長 根本浩典さん
主査 伊藤真由子さん
文京区社協の文京ボランティア支援センターでは、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響で生活に困っている文京区内在住の単身世帯の大学生・専門学生・大学院生を対象に、ひとり3kgのお米を無料配布する緊急支援『学生パントリー』を7月中旬から9月まで断続的に開催しました。事前にイベント予約サイトの「Peatix」を用いてチケットを配布することで完全予約制とし、当日の密集を避けるようにしました。
配布したお米は『学生パントリー』を開始する直前に関係団体から寄附いただいたものです。お米を配布すると同時に、学費や生活費、住居や家賃など、暮らしのことも相談できる場としました。
文京区だからこそ、学生を対象とした支援を実施する必要があった
新型コロナが全国的に蔓延し始めた今年3月以降、文京区社協に近隣の関係団体や住民からたくさんの食糧や生活用品などの寄附が集まりました。当初はそれを活用し『文京フードパントリー』として、主に生活福祉資金の申請のため来所された方などに配布していました。同センター係長の根本浩典さんは「7月頃、新型コロナの影響をふまえた生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金と総合支援資金の特例貸付の利用状況を社協内で振り返った。文京区は都内でも大学等の数が多く、学生寮も多い地域であるにもかかわらず、学生の利用が少なく、社協内でもコロナ禍の学生の生活状況を十分に把握できていない状況が分かった。この状況から学生を対象とした支援を実施する必要があると感じ、他県・他地域での実践を参考に、学生パントリーを実施することとした」と言います。
お米の配布をきっかけに、気軽に相談できる環境を
『学生パントリー』の取組みは文京区社協のホームぺージやFacebookなどで周知しました。取組みを知った大学等の先生や学生の口コミで徐々に希望者が増え、期間中41名の利用がありました。同センター主査の伊藤真由子さんは「利用した学生からは”4月以降、講義等がオンラインになり、友人との直接的なつながりがなくなり気が滅入ってしまっていた。誰かと直接対面して話すこと自体久しぶりで、安心できた”という声が多く聞かれる。当日は個室を用意することで密集を避けるだけでなく個別に対応できるようにした。お米の配布をきっかけに気軽に学生が雑談・相談ができる環境をつくった」「約半数は留学生の利用だった。同じ国のコミュニティで助け合って生活している一方で、母国からの支援が得られにくくなり、コロナ禍でアルバイトも十分にできない状況の中で、金銭的に困窮している学生が複数いた。そのような学生には必要に応じて経済的な支援関連の情報提供を行った。自分で問い合わせすることが難しい学生については窓口に電話して状況を伝えるなど申請等の入り口までを支援することもあった。また、日本語が苦手な学生に対しては小型の翻訳機を活用してコミュニケーションを図った」と話します。また「取組みをFacebookなどで知った住民の方が”学生に活用してください”とレトルト食品などを寄附してくださったこともあった。『学生パントリー』の取組みが住民の地域活動に結びついたことにとても嬉しく感じた」と話しました。
『学生パントリー』が学生の地域活動への興味・関心につながれば
今後について、根本さんは「福祉を専攻する学生であっても、社協の存在は知っていても、役割や活動の内容まで理解している人は多くはない。『学生パントリー』を利用した学生には、お米と一緒に社協のパンフレットやボランティア活動等のチラシも渡している。まだ例はないが、社協の活動に興味を持った学生が今後ボランティアなどに参加してくれれば嬉しい」と話します。伊藤さんは「多くの学生は卒業後に地元や就職先付近の地域へ転出するため、文京区の住民として地域活動に参加することはあまりない。『学生パントリー』を間接的な支援のチャンスと捉え、文京区や地域活動に興味を持つきっかけにもつながればよいと思っている。そのためにも『学生パントリー』でつながった学生に対し、社協ではなく地域の居場所に場所を移してお米を配布するなど、地域と学生を結び付けるような取組みを検討している」と話します。
『学生パントリー』開催チラシ(日本語・英語表記)
※9月18日にて、終了しています
配布したお米(ご寄附でいただいた魚沼産コシヒカリ)
http://www.bunsyakyo.or.jp/