(社福)有隣協会 自立支援センター荒川寮
主任生活指導員 肥後盛朝さん
あらまし
- 自立支援センター(※)で主任生活指導員として働く肥後盛朝さんに、仕事のやりがいや大切にしている姿勢について、お話しいただきました。
- (※)平成12年度に東京都と特別区(23区)は「路上生活者対策事業に係る都区協定書」を結び、共同で路上生活者対策に取り組んでいる。
その一環として、自立支援センターは23区を5つのブロックに分け、ブロック内の各区に5年ごとに交代で1か所ずつ設置される。
直接人の役に立つ仕事がしたい
大学を卒業後、16年程IT業界で働きました。納期に追われ、徹夜続きで仕事するなど、プライベートな時間はありませんでした。30代後半になり、体力的にも辛くなり、会社を辞めました。再就職しようと思った時、これまでは企業の売上のために働いてきましたが、ノルマや納期がなく、直接人の役に立つ仕事がしたいと思いました。そこで分かりやすく思いついたのが福祉業界でした。ここで初めて福祉に関心を持ち、資格や実務経験不問だった自立支援センター文京寮(当時)に応募したのがこの分野で働き始めたきっかけです。
多角的な視点から支援する
自立支援センターは、家やお金に困っており、就労意欲のある方を対象に、6か月間住みながら、仕事や家を探し、自立をめざすための施設です。現在、私が配属されている荒川寮は今年の7月に単身男性専用として開設したばかりですが、現在30名弱の方が入寮しています。
肩書は生活指導員です。生活に関する相談を聞いたり、体調が悪い人には通院を促したりと、6か月という限られた時間の中で幅広く利用者さんを支援するのが仕事です。
6か月で自立をめざす施設なので、利用者さんが苦労しながらもアパートを契約して自立していく姿を見るのは充実感があります。紆余曲折を経て部屋の契約まで行えたある知的障害のある利用者さんのことも印象に残っています。自立に向けて時に厳しく、時に励ましながら支援していく中で、相手の気持ちを分かろうとすることが「伴走して支援していく」ということなのだなと思いました。
支援の姿勢としては、多角的に、客観的に、柔軟に支援することを意識しています。利用者さんから一見難しいことを相談された場合にも無下に否定するのではなく、それを達成するためにはどのようにすれば良いか、いろいろな視点から考えることは支援の基本ではないかと思うからです。この姿勢は前職で、クライアントの要望に応えるためにはどうすれば良いか、常に考えていた経験が活かされていると思います。
これまでの経験が支援に活かされる
入所される方の中には、長く路上生活をされていたことから、仕事探しやお金の管理に慣れていない方もいます。
利用者さんの相談にのる時など、想像以上に、これまでの自分の人生経験を活かすことができると思いました。
例えば、前職を辞める時、貯金がなく、税金を滞納してしまった時期がありました。その時は分割の交渉をして、2~3年かけて払いました。このような経験や引っ越し、転職活動などの経験を利用者さんに話すことで、力になれることを実感しました。
また、同僚が働きやすい環境をつくることも意識しています。福祉の仕事は支援者にある程度心と体に余裕がないと支援できません。前職の経験を活かし、管理表の見直しなど業務効率化の提案をしたり、「無理していない?」「手伝うよ」といった声かけを意識的にしています。職場の同僚がいかに気持ちよく働けるかという環境の改善もやりがいにつながっています。
相手の立場に立つことが大切
福祉業界で働き始めた当初は、福祉の専門知識や「業界の一般常識」とされる専門用語に戸惑いを覚えました。しかし、利用者さんや同僚と接するうちに、相手の立場に立って自分の言葉で分かりやすく伝えることも大切なのではないかと思うようになりました。経験を積んで自信がついてきたのだと思います。
自分のわずかな経験が活かせるこの仕事は天職かと思うほどぴったりです。これからも利用者と直接向き合って、職場の仲間と共に多角的に、柔軟に支援していきたいと思います。
利用者さんと話している様子
http://yurin.org/