あらまし
- 荒川区にあるジョイフル三ノ輪商店街に約1年前にオープンした街の図書館「なにかし堂」を運営する野口貴裕さんにお話を伺いました。
カメレオンのような場所
なにかし堂は、誰もが使える街の図書館です。子どもたちの放課後の遊び場として、中高生や大学生の居場所として、時には高齢者の方の健康相談の場として、利用する人によって使い方が変化する場所です。
自分たちのやりたいことに取り組むことはもちろんですが「こういうものない?」という地域の方からのリクエストにも応えられるような場所でありたいと思っています。例えば、子どもを持つ地域の親御さんからの声をきっかけに、令和3年4月から塾を始めました。関わる人によって、この場所のあり方は変幻自在です。
ほかにも、大学生の背中を押すことのできる存在でありたいという気持ちがあります。なにかし堂に関わる中で、なんとなく興味を持っていることが具体的になったり、挑戦したい気持ちが生まれたり、学生にとっての「何かが始まるその一歩」をこの場所から踏み出してくれたら嬉しいです。
予定とは全く違う形でのオープン
大学時代は、独学で教育について勉強していましたが「教育関係の専門書は値段が高く手に入れにくい」と感じることが多くありました。そこで、専門書を共同で使うことのできる図書館のようなものがあったらいいと考えるようになり「教育に特化した図書館をつくりたい」という思いで、5、6年前から動き始めました。なかなか物件が見つからなかったのですが、1年半ほど前に偶然この物件に出会いました。学校の先生向けのワークショップの実施などを予定していましたが、新型コロナの影響で、開催が難しくなりました。そのため、利用者を学校の先生に限定せずに、入口を開けていると、思っていたよりも、多くの地域の方々がふらっと立ち寄ってくれました。このことから「地域に住むさまざまな世代の方に向けた居場所にしよう」と思い、令和2年6月に正式にオープンしました。
地域の声が反映されるように、2か月に一度、なにかし堂の運営方針や使い方に関するオープン会議を行っています。スタッフだけでなく、なにかし堂の立ち上げ前から関わりのある学校の先生にファシリテーターとして参加してもらったり、地域の子どもから高齢者の方まで、さまざまな世代の方々に参加してもらったりしています。みんなが使う場所であるからこそ、みんなで話し合う機会を大切にしています。
商店街の面白さ
なにかし堂の強みは商店街の中にあることだと思っています。商店街は、周りの目が常にあるので、地域の子どもや親御さんにとって安心できる場所です。自分たちのような世代がこの商店街に積極的に関わることで、今よりも多くの人が行き交うような空間となり、地域の方同士がつながることができるのではないかと考えています。
幼少期は、両親が共働きだったこともあり、祖父母をはじめとしたさまざま大人に囲まれて過ごしました。また、学校になじめず、不登校だった子が身近にいたこともあり、親や学校の先生以外の大人と関わる環境があることの大切さを実感しています。なにかし堂や商店街がそのような居場所となれればいいと思っています。
一人ひとりの人生に生きがいあふれる瞬間を
この先は、地域で子どもたちの成長を見守り、応援できるようなしくみを定着させていきたいです。「子ども一人を育てるには一つの村が必要」という言葉があるように、多くの大人たちが関わり、子どもがつまずいた時には、頼れる周りの大人の選択肢が多くあるという環境を思い描いています。
そして、子どもや学生、大人たちそれぞれに「今日は楽しかった。また楽しいことがあるかもしれない」と思うことのできる瞬間が訪れてほしいと願っています。「生きがいを感じられる機会や体験を、どうつくり出せるか」をテーマに、時に寄り道しながら、今後も探究・実践し続けていきたいです。
「なにかし堂」の詳細についてはこちらから
https://nanikashido.org/