OCNetが行う日本語教室の様子
OCNetの活動内容
一般社団法人OCNetは「言語や文化、習慣などさまざまに異なる人たちと、普段の暮らしの中で交流できる場をつくり出し、広げていくこと」を目的に設立されました。活動の原点は、外国人からの生活・労働相談です。在留資格や教育、労働、住宅、医療などの生活全般の相談を、多言語で、年間2000件程度受けてきました。そのほかにも、生活のさまざまな場面で問題を抱える外国籍の方と共に考え、解決の道をめざし、日本語教室や学習会、講座の開催などの活動を続けています。
日本語教室は「にほんごのひろば」と「子ども日本語クラス」の2つを開講しています。「にほんごのひろば」は大人が対象で、平日に実施しています。当初は、日本語初心者のための教室として、学校のようにプログラムを組んでいました。現在は、参加者の日本語のレベルがさまざまであったり、参加人数が毎回異なったりするため、スタッフがそれぞれのレベルに合わせてクラスを編成し、日本語を教えています。2004年頃から、「子どもに日本語を教えてほしい」という問合せが増えたことを受け、小中学生向けに「子ども日本語クラス」を始めました。OCNetのスタッフの天明尚子さんは、「最近、以前に日本語教室に参加していた方から『孫にも日本語を教えてほしい』などの連絡があった。地域で長く活動を続けているからこそのこと」と話します。
09年には、大田区から、大田区中国帰国者センターの運営・管理を受託しました。中国残留邦人で日本に永住帰国してきた方たちへの生活相談や日本語教室などの支援全般を行っています。同じくOCNetのスタッフの葵佐代子さんは「中国帰国者センターや相談の活動を通して、読み書きできない人が一定数おり、特に女性に多いことを実感した。そういった人の存在を忘れてはいけないと思う」と言います。
OCNetの喫緊の課題はスタッフ不足です。天明さんは「主に60~80代のスタッフが中心となって活動しており、若い世代の確保が難しい。ただ、コロナ禍で『国際交流など何か自分にできることはないか』という30代からの問合せが増えた。新型コロナによる活動への影響はあるが、このような問合せが増えたことは嬉しい」と話します。続けて、活動や日頃の思いについて「『国籍関係なくみんな一緒、何も変わらない』という気持ちを持って過ごすことが大切」と話します。
レガートおおたの活動内容
10年に、OCNetをはじめ、大田区内で国際交流や日本語教室などの活動をしている複数の団体の人が集まって設立されたのが、一般社団法人レガートおおたです。現在、レガートおおたでは国際都市おおた協会から3つの事業を受託しています。一つ目は「多言語相談窓口」です。年間2500~2600名ほどの相談を受けており、日本語教室の紹介や子どもの学校のこと、いじめ、翻訳など多岐にわたります。レガートおおたの代表理事の石井さわ子さんは「新型コロナの影響で、生活困窮やDV、失業などに関する相談が増え、内容が複雑化し、難易度が上がり、より深刻になっている。外国籍の方が使える制度は限られており、在留資格によっては何もできないケースもあるが、とにかく何でも聞く姿勢で活動している」と話します。
レガートおおたの相談の強みは「伴走支援」です。「この相談はここでは受けられないからほかの機関に行ってほしい」と対応するのではなく、つなぎ役となり、問題の解決をできるところまで一緒にすることを大切にしています。
二つ目は「おおたこども日本語教室」です。大田区立の小中学校に入る前の外国籍の子ども向けに行っています。通年で受入れをしており、スタッフがマンツーマンに近い形で教えています。
三つ目は「翻訳・通訳派遣事業」です。証明書等の翻訳や、大田区内の小中学校や保育園、福祉事務所などへの通訳派遣を行っています。
委託事業とは別に自主事業も行っています。日本語教室では、初級からビジネスレベルまで、目的に応じたクラスを土日に開講しています。そのほか、有償での翻訳・通訳派遣も行っており、児童相談所や高校からの依頼を受け、派遣をします。
18年からは、OCNetや他団体の有志、高校教員、弁護士などと共に、高校支援プロジェクトにも取り組んでいます。都内の高校からの要請に応じて、日本語授業や学科授業のサポートをしたり、在留資格についてなど、さまざまな相談を受けたりしています。
新たな取組みにも挑戦
「多言語相談窓口」には、「学校や役所からお知らせが来たが、何が書いてあるか分からない」という相談が非常に多く寄せられています。また、外国人相談や多文化共生に関する取組みが少ない区市町村もあり、大田区外からの相談は約2割を占めています。委託事業の多言語相談窓口として受けられない内容などにも広く対応しています。石井さんは「外国人相談の場合、関係機関や事務所などに相談員が一緒に行くことによって、うまくすすむことが多いと感じる」と言います。
そして、22年4月に新たにオンライン相談を開始しました。書類を送ってもらい、オンラインでその場で翻訳や説明をします。ほかにも、外国籍の家庭と学校との面談の際にはオンラインで同席し、通訳を行います。今後、活動を広げていく予定です。
石井さんは「オンライン相談には限界があるが、相談できる場所がない地域で暮らしている方々の入り口になりたいという思いで行っている。入り口にすら立っていない人に何とか情報を伝えたい」と話します。OCNetのスタッフでもあり、レガートおおたでも活動をしている葵さんも「オンラインのメリットはもちろんある。しかし、人と人とが直接会って話すことはこれからも大切にしていきたい」と話します。
伴走支援を通して、ありのままを受け入れ合う
今後の活動への姿勢について、葵さんは「部屋で相談を受けて話すだけでなく、『一緒に歩く』ことを、これからもできる限り続けていきたい」と言います。
石井さんは「活動の中で『もし私がこの人(相談者)の立場だったら』という気持ちを忘れないようにしている。みんな平等で、一人ひとり身近にいる人のことを大切にし、つながることが大切。また、DVに関する相談が多く寄せられているが、多文化共生の分野でもジェンダーの視点を取り入れた取組みが増えてほしい。私自身もその視点を大事にし、活動を続けていきたい」と、思いを語ります。
OCNetが行う日本語教室の様子。
参加者それぞれのレベルに合わせ、日本語を教えている。
http://www.ocnet.jp/ja/index.html
(一社)レガードおおた
http://legatoota.jp/