笹塚十号のいえ
商店街の元八百屋さんを活用したふらっと立ち寄れる地域の居場所
掲載日:2024年11月11日
2024年11月号 み~つけた

 

困りごとや不安を気軽に相談できる街に

笹塚駅北口の十号通り商店街をすすむと「笹塚十号のいえ」があります。「屋根のある公園」をコンセプトに、ちょっとした休憩ができたり、地域のイベント等を開催したりと、地域に住む多世代の人たちが集う居場所です。「笹塚十号のいえ」を運営する(一社)TEN-SHIPアソシエーション代表理事の戸所信貴さんは、渋谷区内の福祉施設や地域包括支援センターで勤務していた時に、生活上の困りごとや不安を抱えているにも関わらず、誰かに打ち明けたり相談することができないまま、「希望」を少しずつ諦めてしまい、課題が深刻化してしまったり、孤立・孤独状態に陥ってしまうケースをたくさん見てきたといいます。

 

加えて、新型コロナウイルスの影響で、友人や近所づきあいの交流が減り、日常生活での困りごとや不安に対しての相談先が少ない現状をなんとかしたいという想いから、十号通り商店街で「まちのお手伝いサポーター」をはじめました。戸所さんは「住民の心配事や不安な事などに対して相談に応えたり、自宅を訪問して電球を替えたり庭の手入れをしたりと、街の便利屋として生活のちょっとした困り事のお手伝いをしながら住民の課題を把握しつつ、つかず離れずの距離感で住民を見守ってきました。そうした中、地域の住民同士がつながり合い、顔見知りや緩やかな繋がりをつくることで、相互に見守り、相談することができる常設の拠点をつくりたいと思い、『笹塚十号のいえ』プロジェクトを立ち上げました」と開設の背景を話します。

 

ちょうど同じころ、商店街で長く愛されてきた八百屋が閉店することになりました。「八百屋さんは98年もの歴史があり、地域の誰もが知っている場所なので、ここに居場所をつくったら『何だろう?』と足を止めてもらいやすい。居場所の拠点として最適な立地だと思いました。また、昔からここは『子どもを自転車に乗せたまま買い物ができる商店街』と言われていたそうです。『今日はこれとこれ』と言えば、店の人が自転車のカゴに入れてくれる。それほど商店街と地域の人とのコミュニケーションが盛んでした。今は、店が軒並みなくなっていき、かつての活気もなくなりつつあります。居場所を通じてこの状況をなんとか食い止めたいという気持ちもありました」と話します。

 

戸所さんは、「笹塚十号のいえ」の拠点として再活用したいと店主に相談したところ、「地域に役立つなら」と快く受け入れてくれたそうです。改築費用は、クラウドファンディングで募り、2024年2月に「笹塚十号のいえ」がオープンしました。プロジェクトには、戸所さんの想いに共感した企業やNPO法人、大学なども加わり、共に運営に携わっています。2週間に一度、運営委員会を開いて、課題などを共有する場を設けています。

 

住民同士が見守り、助け合う居場所

「笹塚十号のいえ」は、週3回、地域にひらかれた居場所として運営しています。商店街の買い物ついでにひと息ついたり、隣に座った人とおしゃべりしたり、誰でも自由に過ごせます。フードパントリーや福祉作業所でつくる製品の販売会など各種イベントも開催され、さまざまな人でにぎわっています。

 

2024年10月には、この取組みが評価され「2024年グッドデザイン賞」を受賞しました。「笹塚十号のいえ」は、これからも地域に根づき、誰ひとり取り残さないあらゆる人の居場所として地域の人たちを温かく迎え入れ、見守り続けます。

 

笹塚十号のいえ

  • 場  所: 渋谷区笹塚2-41-18(笹塚駅から徒歩5分)
    オープン: 火・木・土 11:30~18:30
取材先
名称
笹塚十号のいえ
住所
東京都渋谷区笹塚2-41-18
概要
Instagram
https://www.instagram.com/sasazuka10ie/
Facebook
https://www.facebook.com/p/%E7%AC%B9%E5%A1%9A%E5%8D%81%E5%8F%B7%E3%81%AE%E3%81%84%E3%81%88-61556022287205/?_rdr
タグ
関連特設ページ