委員 たんぽぽ 施設長 髙橋加寿子さん
委員長 は~と・ピア2 施設長 松下功一さん
当事者本人の声を部会活動の中心に
約490の知的障害児・者の支援施設等で構成される知的発達障害部会。事業計画の冒頭で「利用者主体の支援」を重点目標として掲げています。それを体現しているのが「本人部会」であり、その活動をサポートする「本人部会支援委員会(以下、支援委員会)」です。当事者本人の意見を部会活動や施策提言に反映していくという方針の下、2010年に発足しました。
「本人部会」は特別委員会として位置づけられ、本人自らが主体的に動いて参加・主張していくことを目的に活動しています。メンバーは、自宅やグループホーム・入所施設で生活する方、企業で就労している方や就労継続事業所の利用者などさまざまで、年10回の定例会議には毎回15名前後が参加しています。支援委員会は次第や議事録作成、議題の細かな中身の説明を担い、場の調整役として“しゃべっていいんだ”という空気感を大切にしながらサポートしています。
たくさん話したい方、その場にいることで満足される方など、各自のペースを大事にしつつ、言葉に出すことが難しくても○×での意思表示や、写真付きの資料を見ながらの選択など、多様な参加のあり方を工夫しています。今後は医療的ケアが必要な方など、自主的に集まれる方に限らない、“参加”を更に広げていくことも考えています。年1回、外出イベント等も行っていますが、今年度は本人委員の「部会らしく真面目な勉強会をやりたい」との意見を受け、「お金のこと・暮らしのこと」をテーマに開催予定です。
支援委員会の活動のもう一つの大きな柱は、部会総会(年3回)や東京大集会での本人部会による意見表明のサポートです。支援委員会委員長の松下功一さんは「総会での意見表明は10年以上続けていますが、大勢が集まる場で当事者本人が壇上で話すことは、当初は支援者も想像していない場面でした」と振り返ります。支援委員のひとりの髙橋加寿子さんは「障害特性上の難しさもありますが、発言の機会があり、経験を積み重ねる中で本人委員は力をつけていきました。本人が語ってくれる“自分のこと”は支援者の学びであり、本人の存在や暮らしが見えているかを私たちに問いかけてくれます」と、本人の声を聴く意味を語ります。
真の“本人主体”を実現するために
多様なメンバーの経験や考えを共有する本人部会は、意思決定支援における意思形成や意思表出支援の実践の場でもあります。支援者はつい先回りして考えがちですが、支援委員の提案が最善と捉えられ、本人委員が考えることを阻害してしまわないよう、常に原点の「みんなで話し合って決める」に立ち返ることを意識しています。松下さんは「知的障害のある人はよく分からなくても信用してしまうこともある。その危うさも意識しながら誠意をもって応えていかなくてはならない」と話します。髙橋さんは「こちらが本気で向き合っているのかを本人委員は見ている。これまでの関わりの中で認めてくれているのかなとは感じています」と微笑みます。
本人部会の存在やその場の雰囲気を知らない施設職員も多く、まずは知ってもらうこと、そして「自分の施設の利用者には参加は難しい」と考えず、つなげる意識を持つ職員を増やしていくことが望まれます。髙橋さんは本人委員に、2月に開催する福祉マラソンにボランティアとして参加することを提案しています。「本人が中心にいることを広く浸透させる機会だと考えています。楽しそうに活動している本人や支援者の姿が、部会活動のあたりまえになってほしい」と話します。“つながりを増やすことが本人の暮らしを豊かにする”。この想いも共有しながら、支援委員会はこれからも真摯に本人と向き合います。
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/chitekisyogai.html