(中央)調布市社会福祉協議会 事務局長 橋本ゆかりさん
(右)地域福祉推進課 課長 高橋順子さん
(左)「ここあ」 係長 坂本祐樹さん
あらまし
- 2023年度の文部科学省の調査では、不登校の状態にある小中学生は日本全国に34万6,482人いることが明らかになり、初めて30万人を超えました。今号では、生きづらさを抱える子ども・若者やその家族からの相談を受け止め、地域や他者とのつながりの中での体験機会づくりを通じた支援を行う調布市社会福祉協議会に取材をしました。
「ここあ」が取り組んでいること
調布市子ども・若者総合支援事業「ここあ」(以下、「ここあ」)は、子どもや若者を対象に学習支援・相談・居場所事業に取り組んでいます。子どもの貧困や、居場所のない子どもたちが多い状況などに対応したいという調布市の構想を受け、調布市社会福祉協議会(以下、社協)が2015年度より受託しています。
年代による切れ目のない“人生軸での支援”
主に中学生以降の10代後半から20代前半の本人や家族から相談が寄せられています。特に最近は不登校に関する内容が増え、「ここあ」係長の坂本祐樹さんは「入口は不登校の相談でも、聞き取りをすすめていくと、友人関係のトラブルや家庭内不和、ネットやゲーム依存など、背景は多様で複雑になっています。小学校から不登校の状態が続いているケースも多く、課題が先送りにされている状況が見受けられます」と話します。
そして、中学校から高校、高校から大学と切れ目があることによる課題もあるといいます。なんとか中学校を卒業して、全日制・定時制高校に進学しても中退してしまったり、通信制高校を卒業しても、学生時代を通じて他者とのコミュニケーションや体験機会がほとんどないまま、高校卒業後の人生をどうしていくのかが置き去りにされる状況も少なくないそうです。18歳以降は制度の切れ目でもあり、学校やこれまでの支援者とのつながりが途切れやすく、そうした現状の中、「ここあ」では年代で区切った支援ではなく、子ども・若者一人ひとりに寄り添い、切れ目のない“人生軸での支援”を大切にしています。
子ども・若者支援の今後と社協が取り組む意義
坂本さんによると、「ここあ」の居場所や相談事業で関わりのある子ども・若者たちの多くに、発達の特性や抱えている生きづらさがあります。学校や身近な大人から理解されにくく、徐々に自信や自己肯定感をなくしてしまい、それが孤独感や不登校、ひきこもりにつながっていることも多いといいます。
「ここあ」では、調布の地域と連携して体験機会をつくることに意識して取り組んでいます。例えば、高齢者が主体になるゲームを用いた交流の場づくりでは、「ここあ」の利用者でゲームが得意な若者に依頼し、運営を手伝ってもらいました。“自分の得意なことが誰かのためになる”。そんな経験が自信になり、若者は就労に前向きになっていったそうです。
一方で、こうした “人生軸での支援”には、支援の出口を設定しづらいという難しさがあります。課長の高橋順子さんは「若者支援には働くことへの支援も欠かせないため、就労準備なども『ここあ』が担っているのが現状です。新規の相談も増加する中で、職員の担当するケースも増え続けています」と、課題について触れます。続けて、事務局長の橋本ゆかりさんは「調布市の子ども・若者支援を社協だけで担えるとは考えていません。関係機関や市内で活動する団体の皆さんと、課題を共有しながら話し合いを重ねて、一緒に取り組める先を増やしていきたいと考えています」と、多機関との連携の必要性を強調します。
最後に、坂本さんは「勉強や就職という軸ではなく、子ども・若者の生活を考える“人生軸での支援”をできることが社協の強み。『ここあ』でさまざまな経験をしながら、生きていく自信をつけていってくれたら嬉しいです」と、想いを話してくれました。
調布市子ども・若者総合支援事業ここあ
https://www.ccsw.or.jp/jigyou/kodomo/cocoa