高齢協 災害対策検討委員会 委員長
社会福祉法人亀鶴会 特別養護老人ホーム神明園
園長 中村正人さん
災害時における業務継続の実践性を強化
東京都高齢者福祉施設協議会(高齢協)は、都内約1,200の高齢者福祉施設・事業所で構成される部会です。今年度の事業計画の重点目標の一つに「感染症・災害対策の推進」を掲げ、これまでの感染症への対応や自然災害対策で得た知見を活かし、大都市東京における高齢者の多様な生活の場の安全と安心のために取り組んでいます。高齢協では「災害対策検討委員会」を2010年度に設置し、2017年度からは常設の専門委員会として、現在、各地域ブロック選出の委員等、約20名の施設長が活動しています。
介護施設・事業所においては、2024年4月に事業継続計画(BCP)の策定が完全義務化されました。現在、災害対策検討委員会では、各施設・事業所での、発災時の業務継続の実践性・実効性を高める取組みに力を入れています。委員長の中村正人さんは「委員会と研究機関が共同実施した調査の結果からも、災害に関する研修への参加が、職員の意識向上につながると考えています。BCPがあっても、それを職員一人ひとりが読んで理解しているか、また、災害時に確かに実践できるかというと、難しいのが実際です。各施設で職員の意識を高め、災害時を想定した実践を積み重ねることが大切です」と語ります。
施設内研修で活用できるツールを普及啓発
そこで、委員会では、災害やBCPへの関心を高める施設内研修の実施と、その研修ツールとして、避難所運営ゲーム「ハグ社会福祉施設バージョン」の普及啓発に取り組んできました。ゲーム一式を会員施設に貸し出し、委員を研修ファシリテーターとして派遣しています。昨年度は延べ13施設、今年度は12月までに8施設で実施され、好評を得ています。
今後はさらに、福祉施設等のBCP策定支援を目的とした災害想定ゲーム「キズキ」の普及啓発も予定しています。「KIZUKI」には「通所(デイサービス)ver.」「障害者施設ver.」「保育施設ver.」などさまざまな種類があります。制作元のNPOと日頃から情報交換を重ね、2024年11月に、中村さんが所属する羽村市特養施設長会の監修で「震災編 高齢者介護施設夜勤汎用ver.1」が完成しました。
2025年1月には委員会内で、これを体験する「KIZUKI研修会」を開催しました。委員からは「発災時がイメージでき、職員の関心が深まるきっかけになる」「施設内の備品の見直しにつながる」などの感想が聞かれました。来年度には、委員を中心に各地域で「KIZUKI」等の研修を実施し、各施設へ広げる取組みのほか、KIZUKI「水害編」の作成に向けたワーキンググループの設置などを予定しています。
今年度は、熊本県で2024年10月に開催された「ぼうさいこくたい2024」に委員が参加し、活動内容をポスター展示し、反響を得ました。また、東京管区気象台と協働し、地域ブロックでの防災気象情報の利活用説明会の開催もすすめています。中村さんは「災害時に高齢者施設が“弱者”になるのではなく、地域への役割を担えるよう、各施設での実践力を高める取組みを今後も推進していきます」と語ります。
委員会内研修会の様子
KIZUKI震災編 高齢者介護施設夜勤汎用ver.1
特養での深夜帯の地震発生を想定し、夜勤の職員体制のもと、
次々発生する事態への対応を判断するゲーム。チーム対戦方
式で、被災時の行動を体験的に学べる。