(2)調布市社協の各事業について
調布市社協は都内でも早く平成25年度から地域福祉コーディネーターの配置が進んだ地域です。生活支援体制整備事業、生活困窮者自立支援事業も受託しており、地域で個別支援と地域支援を行う体制が整っています。また、調布市子ども・若者総合支援事業のほか、高齢者、障害者等幅広く運営し、福祉の各種別の専門性を有しているのが特徴です。
① 地域福祉コーディネーター事業
調布市では、1期前の調布市地域福祉計画(2012年度~2017年)および第4次調布市地域福祉活動計画に基づき、平成25年度から調布市社協に地域福祉コーディネーターを配置しています。南部地域と北部地域への各1名のモデル配置から始まり、平成27年度には本格実施となって、西部地域と東部地域にも各1名ずつ配置されました。平成30年度には整理された福祉圏域に合わせて担当地域が8圏域に変更され、同時に2名増員されて、8圏域のうち6圏域に配置となっています。さらに令和元年度に2名増員され、8圏域すべてに地域福祉コーディネーターが配置されました。その財源は、平成25年度は東京都の包括補助、平成26年度は地域福祉等推進特別支援事業、平成27年度~29年度までは地域における生活困窮者等のための共助の基盤づくり事業をもとに補助事業として配置されており、平成30年度からは国のモデル事業(地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制の構築事業)が財源となりました。そして、令和3年度から重層的支援体制整備事業(移行準備事業)が財源となったことで委託事業に変わっています。
調布市社協の地域福祉コーディネーターは、圏域内で常駐する拠点を定めずに活動しています。積極的にアウトリーチを行っていることと、インフォーマルな住民による常設の居場所やボランティアセンターの6か所のブランチなどを活用していることから、特に動きにくさは感じていないとのことです。全員が社協の事務所にいて、そこから地域に出ていく体制を取っていることで、地域福祉コーディネーターの孤立を防ぎ、フォローし合うことができています。また、拠点を定めないことで、圏域をまたいだ取組みをすすめやすいと言います。
② 生活支援体制整備事業(地域支え合い推進員)と地域福祉コーディネーター
調布市の生活支援体制整備事業は、市に第1層生活支援コーディネーターを配置し、調布市社協に地域支え合い推進員(第2層生活支援コーディネーター)を配置しています。平成29年度から、8圏域のうち、すでに地域福祉コーディネーターが配置されている圏域に重ねて配置をすすめていきました。平成29年度に2名配置された後、令和3年度以降は毎年2名ずつ増員されて、令和3年度4名、令和4年度に6名、令和5年度に8名の配置となりました。8圏域全域に1名ずつの地域支え合い推進員が配置されたことで、各圏域のコーディネーターは、地域福祉コーディネーターと合わせることで2名ずつ配置される形になりました。生活支援体制整備事業は健康福祉部高齢者支援室が所管の事業ですが、地域支え合い推進員は高齢者の分野に限らず、地域福祉コーディネーターと協力して同じように地域の課題解決に動いています。また、ひきこもりや不登校、子ども食堂のような全域的な課題については、8人の地域福祉コーディネーター全員が担当圏域を超えた1層コーディネーターのような対応をしたり、複数人でチームを作ることもあります。
③ コーディネーター間の情報共有、コーディネーターの育成、資質向上の取組み
現在、地域福祉コーディネーターと地域支え合い推進員を合わせて16名のコーディネーターがいます。全員が揃っての係会議を月1~2回開催していますが、各自の予定や困っていることの相談などは毎朝のミーティングで共有するようにしています。地域福祉コーディネーターだけの会議は月2回、また地域福祉コーディネーターと市の福祉総務課との会議が月1回あります。地域支え合い推進員が市の第1層コーディネーターと状況を共有する会議も開催しています。このように会議が月に複数回はありますが、日頃から状況を共有することを大事にしています。また、大学の先生による年6回のスーパービジョンも行っており、この数年で増員を重ねてきたコーディネーターの育成や資質向上にも力を入れています。なお、スーパービジョンは、コーディネーター全員が揃っているときには、地域福祉活動計画の策定や推進の共有をするようにしています。
④ 生活困窮者自立相談支援事業(調布ライフサポート)
調布市社協は平成27年度から生活困窮者自立相談支援事業(調布ライフサポート)を受託しています。調布ライフサポートの職員も8圏域の地域担当制を取っています。地域福祉コーディネーターと隣り合っていることからお互いに相談しやすく、両担当の連携は以前よりもすすんできていると言います。複雑化・複合化した課題に協力して対応しやすいので、調布ライフサポートを社協が受託しているメリットを感じているとのことです。例えば、地域包括支援センターから地域福祉コーディネーターに相談があった「8050」や多重債務の世帯のケースを調布ライフサポートにつなぎ、地域福祉コーディネーターとライフサポートの地域担当が一緒に訪問することもあります。また、調布ライフサポートでは、相談のゴールとして、就労支援だけではなく、地域福祉コーディネーターのインフォーマルなつながりを活用できています。
⑤ 調布市子ども・若者総合支援事業「ここあ」
調布市社協の特徴的な事業に調布市子ども・若者総合支援事業「ここあ」の受託があります。平成27年11月より始まった「ここあ」は、子ども・若者に対する相談支援とともに、学習支援や居場所の提供を行っています。「ここあ」は4名の職員で担当圏域を分けずに対応しています。「ここあ」に入った相談に地域福祉コーディネーターがかかわることで、子どもや若者の課題を地域の課題として活動につなげるという役割を果たしています。例えば、起立性調節障害があるケースに「ここあ」と地域福祉コーディネーターが連携して対応したことで、起立性調節障害を地域で理解してもらうための映画の上映会を開催することができました。また、「ここあ」に通っている高校卒業世代の仕事がうまくいかないという相談が、地域福祉コーディネーターが把握した地域に貢献したいという企業につながり、就業体験が実現したこともあります。ほかにも「ここあ」への相談を地域福祉コーディネーターが共有することで、地域の親子向けのワークショップや中学校の特別支援学級の授業につながるなど、地域に向けた企画に展開していくことがあり、子ども・若者の課題に対する地域の応援団を増やすことができると感じています。調布市社協では、以前から高齢分野や障害分野の事業を実施していましたが、それらに比べると、本事業受託前は子ども・若者分野へ取組みが十分ではなかったとも言えます。現在は、子ども・若者のニーズがより把握できるようになり、「ここあ」の事業を社協が実施していることに意味を感じています。
生活困窮者自立相談支援事業(調布ライフサポート)や調布市子ども・若者総合支援事業「ここあ」としても、地域福祉コーディネーターの存在により各部署の連携を深めているとも言えます。
⑥ 高齢者、障害者、子どもの各事業との連携に向けて
調布市社協は、高齢者、障害者等福祉分野を幅広く、それぞれの種別の事業を実施しています。各種別の事業を通して家庭の課題が見えてくることもあり、それぞれの分野で地域の各分野の実践に関わる機関とつながっていることは調布市社協の強みです。
しかし、各分野の委託事業が増えていくと、社協職員としての共通意識を持ちづらくなることもありました。そこで、令和5年度にすすめた第6次地域福祉活動計画の策定では、部署を問わず1圏域5~6名程度の職員が入って、市全域の計画のほかに8つの圏域ごとの計画づくりを行いました。各分野の委託事業を担っている職員が、計画策定を通して、社協が委託事業を実施する意味や地域とのつながりを考えることができ、全職員が地域のソーシャルワーカーだと立ち返る機会になりました。今後は策定された計画を通して、各事業が地域と接点を持つとともに、そのことが各種別の事業のプラスになると感じられるとよいと考えています。
(3)調布市社会福祉法人地域公益活動連絡会の取組み
調布市社会福祉法人地域公益活動連絡会は平成29年7月に設立され、調布市社協が事務局を担っています。現在はフードドライブとなんでも相談窓口に取り組んでいます。連絡会の事業は、総務課事業担当が担当していますが、地域福祉コーディネーターもフードドライブの周知や配分先の調整を行っています。フードドライブを通して企業とつながるなどの成果もありました。なんでも相談窓口は、幹事会の8法人のみで実施している事業で、各法人が受けた相談を地域福祉コーディネーターにつなぐしくみとなっています。件数はまだ少ないですが、なんでも相談窓口を実施することは地域福祉コーディネーターの周知にもなります。今後は、実施法人を増やし、さまざまな分野で受けた相談を地域福祉コーディネーターにつなげるルートができていくといいと考えています。複雑化・複合化した課題に対応していくために実施する重層的支援体制整備事業には社会福祉法人の力が求められます。各分野の社会福祉法人が持つ専門性を課題解決に発揮することで、相談支援事業や参加支援事業の幅が広がることが期待できます。
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