東京都福祉人材センター
コロナ禍における福祉人材センター −福祉業界へ新たな求職者を迎えるために−
掲載日:2021年1月12日
2021年1月号 NOW

 

あらまし

  • 東京都福祉人材センターでは、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大に伴い、令和2年4月7日に発令された緊急事態宣言後も窓口業務を継続しました。
    新規求職者には福祉の未経験者も増えています(図)。
    一方で、中止や縮小を余儀なくされた事業もありました。
    今号では、コロナ禍におけるセンターの取組みから、新たな求職者の姿や業界としてどのような発信をしていくべきかを考えます。

 

 

「コロナで離職。介護は求人が多いと聞いた。働きながら取れる資格もあるか?」(40歳代)、「会社を辞めた。もともと人と接する仕事、人の役に立つ仕事をしたかった。福祉への転職を検討しているが、業界のことがわからない」(30歳代)、「コロナで仕事がなくなった。長く続けられ、人の役に立つ仕事を探したい。医療職は働き始めるまでに時間もかかりそう」(40歳代)、「求職活動する中で福祉の求人に興味がわいた。具体的にはどんな仕事か?」(50歳代)、「自営業。コロナで仕事が減った。ヘルパーの資格はあるが、未経験。自分にできるだろうか」(40歳代)、「コロナで離職。お金を得るだけでなく、人の役に立つ仕事を探したい」(50歳代)、「接客の経験あり。障害のある知人がヘルパーに支えられて生活しているのを見て、そんな仕事をしてみたいと思った」(40歳代)、「福祉は未経験。興味はあるし、応募できそうな求人もあるが、一般的なイメージしかない」(30歳代)、「資料を見ても福祉の仕事はよくわからない。分野、資格、仕事内容について聞きたい」(30歳代)、「離職して知人の塾を手伝う中で子どもとふれあう仕事に興味がわいた」(40歳代)、「周囲から福祉の仕事に向いているのでは?と言われたので、話を聞きたい」(20歳代)

 

コロナ禍で新たな求職者が増加

東京都福祉人材センター(以下、センター)では、緊急事態宣言後も感染予防の徹底に努めながら相談窓口を継続しましたが、当時、続けられなかった事業もありました。その一つは、センターのスタッフがハローワーク等へ出向く「出張相談」です。令和2年7月9日にようやく全面再開でき、その後は11月末までに51回(保育分野に特化したものを含めると75回)の出張相談を重ねた中での相談内容(一部加工)が冒頭の事例です。そこには、コロナ禍の求職者の姿を垣間見ることができます。相談者の7割近くが福祉の仕事は「未経験」。特に未経験者は、福祉の仕事に「長く続けられる」、「人の役に立つ」といった印象を持つ一方、「具体的にはどんな仕事か」、「自分にもできるだろうか」といった不安を持っていることがうかがえます。

 

同様の傾向は、他の事業でも見られます。「介護職員就業促進事業」は、離職者等が介護施設等に雇用されながら介護職員初任者研修等を受講し資格を取得することを支援する事業ですが、11月1日までの雇用者数は900名(以下、実績はいずれも「速報値」)で昨年度年間実績の1・4倍に増えています。また、介護職員初任者研修等の受講と資格取得後の就職を支援する「介護職員資格取得支援事業」でも、11月末時点の申込者数676名で昨年度の年間実績の548名をすでに上回るペースです。こうした事業のニーズが高まる背景に福祉への転職を考える現下の未経験者が「短期間での就職をめざしたい」、「できれば何らかの資格を取得しておきたい」と望んでいる様子もうかがえます。

 

また、「TOKYOチャレンジネット介護職支援コース」は、住居を失うおそれのある方に一時住宅等を提供しながら、介護職員初任者研修を受講していただき、介護職への就労を支援する事業ですが、今年度は、上半期の登録者が昨年度同時期の2倍近くの1・8倍に増えています。「就職への意欲」も高く、9割以上の方が実際に介護職に就きました。

 

登録者のうち、仕事を失ったり、収入が減少するなど「新型コロナの影響を受けた」方は64・6%です。前職は「飲食・調理」が20・3%と最も多く、「建築・土木」が13・9%、「運輸・配送」が11・4%と続きます。このように、飲食業など「人と関わる」仕事をされていた方が多いのも今年度の求職者に見られる特徴の一つです。

 

感染防止しながら地域密着相談面接会

センターでは、区市町村社協、地元自治体、ハローワーク等と共催し、地域内の事業所による「地域密着相談面接会」を今年度は28地域で32回開催する予定でした。身近な地域で各法人が出展するブースから具体的な話を聞くことのできる相談面接会です。けれども、感染拡大のため、6~8月に予定していた回をはじめ、8地域11回分を中止せざるを得ませんでした。

 

そうした中、地域の事業所から開催を望む声もあり、センターでは相談面接会を主催する区市町村社協から意見を聴きながら、開催に向けた『感染拡大防止ガイドライン』を7月に作成しました。これに基づき9月12日以降、12月末までに16地域で相談面接会を開催することができました。そのうちの2地域はオンラインでの実施です。今後の感染状況は予断を許しませんが、1月以降に開催予定の6回分についても引き続きガイドラインに基づき実施を予定しています。

 

すでに開催した地域では、1地域あたり平均68・5名の参加が得られています。ある地域の相談会では、主催した区市町村社協の職員は「感染防止を徹底するため準備は大変だったが、開催して良かった。思いのほか、福祉のしごとに興味を持ってくれる『未経験者』が地域にいて驚いている」と話してくれました。

 

感染防止対策に努めながらの地域密着相談面接会

 

体験型の事業の中止と代替の取組み

センターでは、感染拡大に伴い12月に予定していた2回分の「福祉の職場体感見学ツアー」を中止しました。このツアーは少人数で施設・事業所を訪問し、先輩職員等からの話を聞く事業です。今年度は各回の定員を減らし、時間も短くするとともに、参加前2週間の健康管理票の提出を参加の条件とするなどの感染防止を徹底し、8〜11月に6回のツアーを開催してきました。毎回、定員を超える希望があり、参加者からは「実際の現場を見ることができて良かった」、「職場の雰囲気がよく分かった」といった声が聞かれます。参加者のうち「福祉の資格を何も持っていない」方は32・3%。一方、介護の基礎的な資格の一つである「介護職員初任者研修修了者」も36・9%の割合でした。このことからは、初任者研修等の資格を取った方でも具体的な職場を見学し雰囲気を知りたいというニーズもうかがえます。

 

今年度、センターで実施できた福祉施設・事業所を訪れる「体験型」の事業はこのツアーが唯一です。次世代に向けた「フクシを知ろう!おしごと体験」、一般大学生を対象にした「助成金付インターンシップ」等も中止となりました。

 

介護人材確保対策事業の「職場体験事業」は昨年度に805名が体験に臨みましたが、今年度は実施が叶いませんでした。また、113か所の保育所が夏休みに704名の高校生を受け入れる予定だった「高校生向け保育の仕事職場体験」も直前に中止せざるを得ませんでした。体験を楽しみにしていた高校生に向けて、受入れを予定していた保育所の方々がメッセージをくださりました。それをセンターでは『やっぱり保育園って素晴らしい!』と銘打ちホームページに掲載し、高校生たちに届けました。「会えるのを楽しみにしていた」、「機会があったら、ぜひ園へ遊びに来てください」。そんな温かいメッセージがあふれています。  

 

福祉職場を知ってもらうために効果的な「体験型」の事業ができないことは大きな痛手です。センターでは、代替の取組みとして、福祉職場の様子を具体的に伝える「普及啓発動画」を制作する取組みをすすめています。また、「自己分析」「応募書類」「面接」をテーマにした就職支援セミナーや入門者向けセミナーを毎月、定員を縮小しながら開催していますが、より多くの方に届けられるよう、それらの内容を「ミニ動画」でホームページに掲載しています。

 

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近年、ネットによる求職活動が盛んになってきています。センターの「福祉のお仕事」サイトでも「ネットによる自主応募」が年々増加してきています。さらに、コロナ禍は情報の流れ方を大きく変えました。そうした変化もふまえ、センターでは、新たな求職者に対する情報発信の工夫に引き続き取り組んでいきます。

 

https://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/siensemimar.html

就職支援セミナー ミニ動画掲載サイト

 

https://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/fukushinoshigoto.html

福祉のしごと ミニセミナー動画サイト

 

https://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/hoiku/kokosei.html

保育の仕事職場体験 高校生のみなさんへ

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概要
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https://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/index.html
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