慢性疲労症候群(CFS)当事者 佐藤まゆ子さん
多くの人に正しい情報を届けたい
掲載日:2017年11月29日
2017年8月 704号 くらし今ひと

佐藤まゆ子さん

 

あらまし

  • 慢性疲労症候群(CFS)当事者として、同じ病気をもった人を支える活動をしている佐藤まゆ子さんにお話を伺いました。


私が発症したきっかけは、平成19年33才の時に罹患した「はしか」でした。回復後も異常な体調不良が続いたのですが、どの病院に行っても「異常なし」。休職もできませんでした。前年までフルマラソンを完走していた私が、会社までのたった15分の道のりで息が切れてしまう。また、仕事ではパソコンを使った作業や、経費精算等に以前の倍以上の時間がかかるようになりました。数字を理解する認知力や思考力も低下していたのです。発症する以前の私を知る上司や同僚がいれば私の変化に気づいたかもしれませんが、異動したばかりだったので、仕事に対して周囲から誤解されないよう、無理して頑張っていました。しかし、その後職場で倒れたのをきっかけに35才から休職し、復職できず退職しました。36才の時に「慢性疲労症候群」(以下、CFS)と診断を受け、翌年に大阪市立大学の専門医から私の今後の見通しについて話がありました。それまで余計な不安を持たないように前向きに考えていましたが、「就労までは数年・十年単位で考えて」と言われ、はじめてCFSから回復する困難さを痛感しました。「もう少し早くCFSのことを知っておけば」と後悔しました。

 

患者同士のSNSが情報源

今後の収入のことなどを考え不安になった時、患者同士のSNSを使った情報交換の場で、指定難病でないCFSでも障害年金を受給できることを知りました。初めて申請した時はこの病気の認知度の低さのため、受付窓口でまで「そんな病気はない」と言われ申請用紙すらもらえないなどとても苦労しました。そこで、患者仲間から助言をもらい、CFSに理解のある社会保険労務士の方に複雑な手続きを代行してもらい、障害年金を受給することができました。

 

きちんとした情報を広めたい

患者は体調が悪い中、自ら病院情報や治療方法、福祉支援の手続き方法等の情報を探しまわらねばなりません。こうした問題を少しでも解決したいと考え、共同代表で「Action for ME/CFS Japan」(以下、AFCJ)という団体を立ち上げました。私たちは少し動くだけで激しく体力を消耗するため、活動に制限があり、インターネットを活用し情報発信を行っています。サイトでは、CFS研究の第一人者である先生の医療講演会の動画の掲載や、ポスター掲示を依頼したり、誰もが正しい情報を得られるよう活動しています。「きちんとした医学的・客観的な情報を患者のため、その周囲の方のために伝えたい」と思います。この病気の正しい情報を理解し知ることで、見た目ではわかりにくい病気の対応方法がわかります。CFSになり就業継続が難しいと思っても、周囲の少しの配慮があれば、時短勤務や在宅勤務で就労を継続できるかもしれません。今の私は、外出は月数回で、徒歩移動は困難なため電動車椅子を利用しています。外出先で横になれるスペースを確保してもらう等の配慮で外出が可能になります。また、症状に合う薬を調合できる医師に出会え、1日に外出できる時間が増えました。メイクやオシャレをして、近所へ買い物に出かける時は、ウキウキした前向きな気持ちになり、日々の暮らしの質が高まります。

 

自分の人生を大事にできる環境を

今後は、福祉支援面の活動として、CFS患者でも利用できる制度や年金申請の方法等、自立した生活を送れる可能性と必要な情報をどう伝えるか方法を考えています。本人が「病気だけが人生ではない、自分らしい生きがいがある人生」を持ち、そうすることで自分も周囲も心地良い生活になるような取組みや活動を続けていきたいと思っています。

 

なるほどWORD

  • 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(略称:ME/CFS)【用語説明】
    慢性疲労症候群(CFS)は、健康な人が突然激しい全身の倦怠感におそわれる原因不明の病気。強い疲労感とともに、微熱・頭痛・筋肉痛・脱力感・思考力の障害、抑うつなどが長期にわたって続くため、健全な社会生活が送れなくなる。一般的な慢性疲労とは全く異なる疾患。
取材先
名称
慢性疲労症候群(CFS)当事者 佐藤まゆ子さん
概要
ME/CFS AID Japan
https://mecfs-aid-japan.org/

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