宮城県気仙沼市/平成24年3月現在
宮城県気仙沼エリアへの派遣
東日本大震災に伴い、知的発達障害部会は3月12日被災地に所在する都外施設の状況を確認しました。そして、3月23日NPO法人東京都発達障害支援協会と合同で「東京合同災害対策本部」(以後、対策本部)を立ち上げました。被害が大きく他からの支援が入っていない宮城県気仙沼エリア(気仙沼市、南三陸町)を中心に支援することとし、3月28日、第一陣を派遣しました。まずは、現地の状況を把握するために、名簿に基づき施設のリストアップを行い、船形コロニーに先導していただきながら、エリア内の各施設に連絡をして状況やニーズをうかがいました。その中で、支援の拠点を、知的障害者等の総合的な地域生活支援を行っている社会福祉法人洗心会に、宿泊の拠点を都外施設はんとく苑に置かせていただくことにしました。
現地職員や地域と信頼関係を築く
支援は、5泊6日を基本に6人のチームで活動をすることとしました。4月初旬までは、洗心会の入所施設や、生活介護事業所(短期入所、日中一時支援)等で、現地職員の疲弊、人手不足をフォローする形で活動しました。
その後、4月中旬ごろから洗心会の相談支援事業所を中心に支援を行いました。当初、交通は遮断し、物資も不足し、障害者が点在する中で、8人の相談支援員でどう支援していけばよいか分からない状況でした。また、支援員自身も被災し、何とか仕事をしている状況であり、多数の支援団体の視察等に対応しきれない状況でした。そこで、対策本部では、派遣職員のコーディネートに加え、さまざまなボランティアや支援物資などを一元的にコーディネートする人が現地に必要と、「現地コーディネーター」として4月中旬から滝乃川学園施設長の高瀬祐二さんが派遣されました。派遣チームは、まずは、相談支援員が本来の働きに戻れるよう支援を行うことにしました。相談支援員が地域の障害者の安否確認とニーズ調査を行い、具体的に何らかの支援が必要な場合等は、派遣職員が相談支援員の手足として解決に当たるという活動の形ができました。高瀬さんは、「『相談支援員の黒子に徹しよう。どう解決するか考えてから行動しよう。任されたものは、すぐに100%で応えよう。』を徹底した」と話します。派遣チームは、「隣の学校にしばらく通うことになったが車がなく歩行器を運べない」という重度心身障害児の保護者からの相談や、視覚障害者からの「屋根瓦が落ちて困っているが誰に頼んでも片付けられない」「蜂の巣を取ってほしい」等、さまざまな相談に応えていきました。
寄せられる地域からの多様なニーズ
このように相談に即応することを心がける中で、地域の方々が「頼むと何でも応えてくれる」と信頼感を持ってくれるようになり、4月後半から、洗心会に様々な相談が入るようになりました。
【障害者の就労受入れ事業所の泥出しボランティア】
水産加工場などが継続を断念する中で、多くの障害者はすでに解雇されている状況でした。しかし、障害者を雇用している企業から、「結婚式場を片付けてほしい」という依頼が入り、継続的に支援を行うことになりました。当時、気仙沼エリアでは、県外からのボランティアの受入がほとんど行われていない状況で、派遣チームが泥出しをしていると、隣の家の方が見物にきて、「もっとボランティアが入ってくれると良いのに」と語っていたのが印象的でした。
【特別支援学校の送迎支援】
4月下旬、気仙沼市の気仙沼特別支援学校が再開しましたが、通学路途中の橋が震災で流されたため、送迎用のバスが運行できなくなっていました。「送迎が来ないため学校に通えない」と相談を受けた派遣チームは、小回りがきくワゴン車で送迎を始めました。毎朝午前7時に南三陸町の生徒を迎えに行き、片道2時間半かけて学校まで送りました。不安の強い子どももいて、送迎には、障害児支援の専門的力量が必要でした。子ども達一人ひとりに支援のためのマニュアルが作られ、生徒の利用数は、5人から始まり2週間後には16人になりました。
【夏休み中の支援~子どもクラブ】
8月には、「子どもクラブ」を行いました。気仙沼エリアには元々、障害児のサービスはほとんどありませんでした。夏休み中、保護者にとって負担が重くなることを心配していたところ、「夏休みに子どもたちの預かりができないか」と問合せがありました。そこで、洗心会の相談支援事業所が主催、派遣チームが現地運営を行う「子どもクラブ」を現地の小学校で実施する運びとなりました。また、東京の特別支援学校の先生方に派遣の協力をお願いし、遊具なども運んでくれました。
また、(社福)泉里会「ケアホームめぐみ」でも、夏休みの障害児の日中一時支援を行いました。当初、「ケアホーム」の中で日中一時を利用している子ども達が走り回っている状況でしたので、「難民を助ける会」に依頼し、子ども達の遊び場として大きなプレハブを寄付していただくお手伝いもしました。
東京でのコーディネート~チーム作りを大切に
東京で、派遣職員のコーディネートに力を尽くした正夢の会理事の山本あおひさんは、「初期の頃は特に、被災地に対して何もできなかったという気持ちで、派遣者が混乱して帰ってきていた」と話します。そこで、5月からは派遣前に東京でオリエンテーションを行うことにしました。オリエンテーションでは、前の回に行った派遣職員が自分の言葉で被災地の状況や支援について話してもらうことにしました。また、「チーム作り」を心がけ、派遣前からメールのやり取りをする等し、目標を決めてから支援に入りました。今でもメンバー同士付き合っているチームもあり、「東京の事業所に横のつながりができた」と山本さんは話します。
http://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/chitekisyogai.html