世田谷区福祉人材育成・研修センター
地域に密着した取組みで「世田谷区の福祉人材」を育てる
掲載日:2017年12月21日
2017年2月号連載

せたがや福祉区民学会 第8回大会「全体会」の様子

 

■あらまし

  • 「世田谷区福祉人材育成・研修センター」は、世田谷区内のさまざまな福祉事業所で働く介護や看護の担い手の確保支援をはじめ、サービスの質の向上、多職種連携など、地域社会が求める福祉人材の育成をめざし、年間約70本のさまざまな研修を展開しています。また、小・中学校と連携して総合的な学習の時間に福祉の仕事について出張講座も行っています。研修の実施に当たっては、区内の福祉事業所を代表する方からの意見や提案を事業に活かすなど、地域に密着した総合的な福祉人材育成を担うセンターとしてその役割を担っています。

 

地域密着の研修センターとして

世田谷区は、区民福祉の向上には、専門性を備えた良質な福祉人材の確保、育成が不可欠として、平成19年4月に研修センターを設立しました。以来10年にわたり社会福祉法人世田谷区社会福祉事業団が運営し、地域の特性を生かした事業を展開しています。

 

研修センターでは、(1)人材育成(研修など)(2)人材発掘・就労支援、(3)その他事業者支援などを行っています。研修の実施にあたっては、国や世田谷区の動向、介護保険事業者の実情や意向を生かすため、区内介護保険事業者や専門職団体を代表する方、東京都福祉人材センター、区の高齢、障害、医療などに関わる所管課職員をメンバーとした研修運営検討会を設置しています。具体的な取組みとして、人材育成では、「階層別研修」において、世田谷区の地域特性や福祉の動向などについて学び、世田谷区の福祉を担う一員としての自覚を持てるよう工夫しています。

 

平成27年度からは、地域包括ケアシステムを担う人材育成を最重要課題として、従事者向けに多職種参加型の研修や認知症ケア研修を拡充しました。区内の福祉サービス事業者や大学、医師会、歯科医師会、薬剤師会などに協力いただき福祉、介護、医療の連携強化に取組んでいます。「多職種で学ぶ医療連携研修」に参加した歯科医師からは「グループホームに入居している方の口腔ケアの状況を知ることができ、参考になった」など共に学び合う関係が生まれています。また、体系的に学べる「認知症ケア研修」の講師(東京都認知症介護指導者)に、研修で学んだことを地域にどう活かせるか企画段階から参画いただきました。

 

このように、同じ地域で働く人たちがそれぞれの職務に活かせるよう共に学びあい、チームとして利用者のサービス向上につなげていくことが、地域に密着した研修センターならではの特徴となっています。さらに、一般区民向けには、世田谷区総合事業生活援助サービス従業者養成研修(平成28年度開始)や同行援護従業者養成研修、介護職員初任者研修などを実施(一部社会福祉法人の自主事業)して、一人でも多くの方が福祉や介護について理解を深め、就労につながるよう、人材の発掘や育成に取組んでいます。

 

「世田谷区福祉人材育成・研修センター」会議室の様子。

 

「せたがや福祉区民学会」を設立

平成21年12月には、世田谷区の福祉施設や事業所で働き、学び、研究する者と区民や行政、大学等で構成する会員制の組織として「せたがや福祉区民学会」(以下、学会)が設立されました。研修センターは、その事務局を務めています。学会の支援は、地域や事業者を側面から支援する重要な役割です。学会は年に一度会員の実践や研究を発表する「大会」を開催しています。開催場所は、学会に加入する区内6大学が持ち回りで提供しており、平成28年度は東京都市大学で開催され、488名の参加がありました。開催にあたっては、加入大学の学生が道案内や書記等のボランティアとして参加するなど、若い力にも支えられています。

 

学会設立当初は、高齢分野の発表が中心でしたが、これまで8回の開催を重ね、延べ380事例の実践研究発表が行われました。近年では福祉の領域も広がり、障害や児童、まちづくりなど地域での多様な取組みと、発表者も専門職だけでなく、区内で学ぶ学生や、区民、民生児童委員、地域団体、行政など幅広い方々が発表しています。「障害分野では実践を発表できる場が少なく、年に一度でも発表する機会があり自分の目標になる」「学会に参加し、自身の職場に持ち帰り活かすことができる」など区内全体の福祉向上に大きな役割を担っています。

 

 

「地域を知る姿勢」を世田谷で学ぶ

学会をきっかけとした大学生の活動も生まれています。せたがや福祉区民学会学生交流会「せたがやLink!(以下、リンク)」(※)は、大会時の喫茶休憩スペースである「ほっとスペース」の運営を任されています。今年は、若年性認知症デイサービスの利用者や職員、世田谷ボランティア協会の職員等とともに、来場者に飲み物を提供しました。他にも、学会を通して知り合った専門職や機関の力を借りながら、「せたがや介護の日」の運営協力も行っています。また、街歩きのイベント「みんなで歩こう!!」では、リンク以外の学生や区民を対象に、世田谷区内を通る大山道を池尻大橋から代官屋敷をめざして歩きました。途中ガイド役から、史跡の説明を聞いたり、若者の自立や就職を総合的にサポートするセンターや区立平和資料館にも立ち寄りました。普段、大学に通っている中では気づかないたくさんのことを学び、地域を知る大きな契機となっています。リンクのこのような活動は学会大会でも発表されました。

 

センター長の阿竹恵さんは、あらゆる方に「”広い意味での福祉“を広めたい」と言います。「福祉は”しあわせ“という意味ですから全ての分野のどんな産業にもつながります。学生が将来、福祉専門職に就かないとしても、福祉区民学会やリンクなどの活動を通して、地域には多様な人々が暮らしていることなど地域を知ることで、自分の選んだ職業の中に福祉の視点を見出す契機になるのではないかと思います。世田谷区で大学生活を送る中で、大学で学ぶことだけではなく、”世田谷という地域で学んだこと“があったら嬉しい」と話します。そして、「”地域を知ろう“という姿勢が身についていれば、出身地に戻っても、新たな地でもどこにいても福祉の視点を持った活動につながっていきます。私としては、世田谷に住みたい、世田谷で働きたいと思って下さったらなお嬉しい」と話します。

 

専門職同士の顔が見える関係づくり、そして、共に学ぶ場を活かし、地域での実践を生み出していく取組みが今後も拡がっていくことが期待されます。

 

第8回大会「パネル型発表」の様子「せたがやLink!」

 

(※)せたがや福祉区民学会学生交流会「せたがやLink!」は、世田谷区内にキャンパスを置く、昭和女子大学、日本大学、駒澤大学、東京都市大学、日本体育大学、東京医療保健大学の福祉に関心のある学生で構成。平成25年度より活動。

取材先
名称
世田谷区福祉人材育成・研修センター
概要
世田谷区福祉人材育成・研修センター
https://www.setagaya-jinzai.jp/

設置主体は世田谷区で、平成19年4月の開設時より(社福)世田谷区社会福祉事業団が委託を受けて運営。センター長:阿竹恵さん、次長:千葉律さん
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