山形県山形市/平成26年3月現在
山形市福祉推進部次長(兼)介護保険課長の西村吉弘さんと長寿社会課課長補佐の武田吉浩さんは「山形市では災害時要援護者の対象を要介護3以上や75 歳以上の単身・高齢者のみ世帯等を対象としている(※)。これは、避難所まで避難することに支援を必要とする方々を中心にしたもの。避難所からさらに、保健師がスクリーニングして福祉避難所で対応する方をどう絞り込むかが課題。特別養護老人ホームには要介護度の重い方をお願いすることになるかと思うが、具体的に動けるようなマニュアルづくりが必要と考えている。また、災害時要援護者名簿は手上げ方式で災害時要援護者名簿を作成して1,900 人が登録している。今後は要支援者までを含めてどう広げていくかも課題になる」と話します。
山形市では総務部防災対策課が一般避難所の運営を担当し、福祉避難所の指定と運用は福祉推進部が担うことになっています。西村さんは「防災セクションではなく福祉推進部が福祉避難所を所管することは、指定先としてお願いする福祉施設と連携をとってすすめることができるので、やはり取組みがすすめやすい」と指摘します。
- ※①身体障がい者1級及び2級の所持者、②療育手帳Aの知的障がい者、③特別児童扶養手当1級対象児、④重度心身障がい(児)者医療の受給者、⑤介護保険法における要介護度3以上の認定者、⑥75歳以上の単身高齢者及び75歳以上の高齢者のみの世帯、⑦上記以外で、避難支援を希望する者
相互応援協定参加施設が合同で訓練を実施
相互応援協定を実効性のあるものとするため、村山地区ではさまざまな訓練に取組んでいます。村山地区の本部施設であるながまち荘の主任介護員(兼)介護支援専門員の岩崎勝也さんは「どういう訓練が必要かは暗中模索で考えながら実施している」と話します。
平成25 年3月11 日には、村山地区の応援協定施設42 施設が参加して多層階の施設での避難訓練を実施しました。同年10 月10 日には、夜間総合訓練を実施。夜間を想定して日中に訓練を行うのではなく、これは実際に夜間に実施し、県の村山支部担当者と応援協定施設から14施設が訓練を行う施設に集まって夜間に火災が発生したときの避難訓練を一緒に行いました。そして、同年11 月7日には集中豪雨により山形市の一部で断水が発生してブロック内の1施設が被災したことを想定して、相互応援協定に基づいて「本部⇔副本部⇔リーダー施設⇔各施設」のルートで電話・メールによる情報伝達と備蓄品等を調達する訓練を行っています。
これらの訓練の積み重ねでは、相互応援協定に参加する施設が訓練に参加して、ともに訓練を行うことでそれぞれに経験値を高めることにつながっています。「経験がないところに体験を通じて意識を高めるのが会員組織のトップの仕事だ」と峯田さんは強調します。
こうした施設における積極的な取組みがすすんできたことに対して、山形市社会福祉協議会地域福祉部門ふくしのまちづくり係主任の結城英彰さんは「市内には30 の地区社協があり、1,400 人の協力員がいて社協は民生児童委員とも関わりがある。社協では災害ボランティアセンターの設置運営の訓練は行っているが、それを福祉施設との取組みと結び付けていくことが課題」と話します。
県内全域のネットワークを構築
平成23 年3月11 日の東日本大震災では、山形県内でも大きな揺れがあったものの、幸いにも施設には被害がありませんでした。この時点で県内全域での協定はまだ結ばれていませんでしたが、4つの地区全てに協定があったため、ネットワークがある程度、構築されていました。そうした基盤があったことで、同年4月末には山形県内の特別養護老人ホームで158 人の要介護高齢者を宮城県等から受け入れています。そのうち村山地区の特別養護老人ホームでは、61名を受け入れました。宮城県から緊急に搬送されてきた要介護高齢者を受け入れたながまち荘管理課長の阿部久さんは、「カタカナで名前がわかるだけの方もいらっしゃって、情報が乏しい中での受入れだった」とふり返ります。緊急時に積極的な受入れができた一方で、より一層しっかりとしたネットワークを構築していくことが課題となりました。
7月13 日には、皇太子殿下が東日本大震災の被災者へのお見舞いと地方事情ご視察にながまち荘を訪問されました。その際、より強固なネットワークを作ることを約束した峯田さんは精力的にその取組みをすすめ、翌8月24 日には県内4ブロックを結ぶ「山形県高齢者福祉施設防災ネットワーク協定」を締結しました。これによりブロックを超えた県内の相互応援体制も整えるに至りました。県内110施設がこのネットワークに参加していますが、老施協の会員になっていない施設もこのネットワークに入っています。
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