左から
地域課長 川崎展裕さん、地域福祉部長 堀圭介さん
事務局次長 波多江重則さん、施設課長 武田明彦さん
平成29年7月5日から6日にかけて発生した九州北部豪雨は、福岡県と大分県に甚大な被害をもたらしました。死者36名、行方不明者2名、住家の全壊・半壊が約1千100件(平成29年12月25日現在)に上るなど特に被害の大きかった福岡県では、現在も多くの方が仮設住宅等での生活を余儀なくされています。発災から災害ボランティアセンター(VC)閉所までの取組みを福岡県社会福祉協議会に伺いました。
初動~災害ボランティアセンターの立上げ支援
福岡県社協では、5年前の集中豪雨(平成24年7月九州北部豪雨)の経験をふまえ、大雨が予想された7月3日の段階で「災害救援情報」を発行し、市区町村社協や福祉施設に対して厳重警戒を呼びかけました。5日には常務理事を本部長とする福岡県社協災害救援本部を設置し、市区町村社協や福祉施設へのファックスや電話による情報収集を開始。さらに朝倉市、添田町、東峰村には先遣隊を送って現地調査を行いました。幸い福祉施設に大きな被害はなく、避難所も行政が対応していたため、福岡県社協では災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P)等の団体と協力し、災害VCの立上げと運営支援に注力することになりました。
災害救援情報は7月3日~10月16日まで計21号を発行
災害VCの立上げはスムーズにいかない点もありました。朝倉市では事前に設置場所が決められていなかったため場所探しが難航。7月9日に朝倉球場に本所を開設しつつ、さらに甚大な被害のあった杷木地域の老人福祉センターに団体受付サテライトを開設しました。しかしその後、仮設住宅建設のため朝倉球場が使用不可となり、本所は8月2日に杷木地域の別の拠点に移転することを余儀なくされました。また、用意していた災害VCの各種様式が実態に即していなかったため直前に見直しを迫られるなど、ハード、ソフトの両面で課題がありました。
東峰村でも村の中央に架かる橋が崩落し村が分断されたため、当初から小石原地区と宝珠山地区の2か所に災害VCを設置しなくてはなりませんでした。
社協による職員派遣
人的支援については、被害が大きかった3市町村社協では災害時相互支援協定に基づく近隣社協による支援準備がすすめられており、また福岡県社協では、田川市郡内での支援協力で対応できた添田町を除く2社協からの要請に基づく市区町村社協職員の派遣協力依頼をすすめていました。こうして発災から一週間後の7月12日から、3市町村5か所に設置された災害VCのうち4か所への職員派遣が始まりました。その後、職員派遣は県内にとどまらず、九州・中国・四国ブロックの社協にも広がりました。福岡県社協地域福祉部長の堀圭介さんは「これほど長期化するとは思っていなかったが、多くの協力をいただいた」と感謝しています。
また福岡県社協も通常業務を休止させることなく、全局対応で3市町村社協に職員を派遣し続けました。これにより「朝夕の県社協災害救援本部による情報共有と現地の調整が一定程度できた」と話します。
ボランティア活動を支える取組み
8月からは現地でのボランティア活動を環境面で支える取組みとして、福岡県老人福祉施設協議会と福岡県知的障がい者福祉協会の協力により会員施設の職員を災害VCに派遣しました。炎天下での活動による体調不良や怪我等、安全面を見守る看護師と、活動者と資機材を現場まで移送する送迎スタッフです。これまでも福祉施設職員が有志で災害ボランティア活動に参加することはありましたが、今回はより専門性を発揮できるよう組織的に調整しました。
また、夏休みの時期になりボランティア活動者数の減少が懸念されたため、継続的な参加を促す取組みとして、県内の市区町村社協が主催するボランティアバスの運行費用の助成も行いました。1回につき最大10万円の助成金を支給するもので、12社協が実施した33件に助成しました。財源は福岡県社協に寄せられた支援金を活用しました。
県社協による情報発信
地域福祉部地域課長の川崎展裕さんは、これまでの災害対応の経験からインターネットを活用したタイムリーな情報発信の必要性を感じていました。今回、支援Pの応援で環境整備が進み、ウェブサイトで「災害救援情報」や災害VCの活動状況を随時更新したり、フェイスブックでの情報提供を始めることができました。川崎さんは「活動者数やニーズ件数等のデータを掲載したことで、5年前と比べてマスコミやボランティアからの簡単な問合せが格段に減った。リアルタイムで情報を届けられるようになった」と言います。
一方で課題も多く、「たとえばニーズ完了件数では、数字上は未完了でも実際には完了しているものが多くあり、『まだこんなに残っているのか』という誤解を与えかねなかった。現地のニーズ票を確認して修正したが、どのような情報を発信するのかあらかじめ整理しておき、現地と見解を共有しておくことが必要だった」と言います。
ボランティア活動者数が減ってきた段階での情報発信についても「もっと具体的なところを示せればよかった」と言い、「どこのエリアでどのような状況だからこれだけの人が必要なんだということを、地図や写真を使ってわかりやすく発信できたら、発災から時間が経っても参加してくれる人や長く関わってくれる人が増えたと思う」と振り返ります。
また災害時の状況は刻一刻と変化していきますが、個人を含めた多様な主体による発信がSNS等で瞬く間に拡散され、タイムラグが生じたり情報が錯綜したりすることがあります。広域の団体として、現場職員やネットワークを活用して収集した情報をある程度まとまった形で整理し、正確に発信していくことがより一層求められます。
県内の災害VCは10月末までに閉所し、これに伴い福岡県災害救援本部も廃止されました。避難所も11月末までにすべて閉鎖され、避難者の多くはみなし仮設住宅や建設型仮設住宅等で生活再建に向けた暮らしを始めています。
福岡県社協では、今後も被災地の市町村社協と連携しながら復興に向けた取組みをすすめていく予定です。
■福岡県内災害ボランティアセンターにおけるボランティアの参加状況等(7/8~10/29)
■社協職員派遣状況一覧
※近隣社協間における災害時相互支援協定に基づく派遣を除く
http://www.fuku-shakyo.jp/