(左)キラリっ子ファミリーカフェ代表 中村 ひとみさん
(右)副代表 稲場 彩美さん
立川市子ども未来センターを中心に活動している子育てサポートコミュニティ「キラリっ子ファミリーカフェ」は、発達に不安がある子どもを育てる保護者が交流できる居場所です。キラリっ子ファミリーカフェではそういった子どものことを〝凸凹のある子〟と呼んでいます。
代表の中村ひとみさんも、発達に凸凹のある子どもの保護者です。子どもが小学校の通級指導教室(週に数時間、少人数あるいは個別で必要に応じた指導を行う。以下、通級)に通っていたときに親の会がありました。そこで同じ悩みを持つ他の保護者と話すことで、癒されたり励まされていました。しかし、親の会の存続が難しくなり、中村さんは「毎日、発達に不安や凸凹のある子を育てていて、悩んでいる保護者同士が交流できる場をつくりたい」と立川市社協に相談しました。
副代表の稲場彩美さんも発達に凸凹のある子どもがいます。稲場さんも同じ境遇の保護者と話す場がほしいと考えていて、同時期に立川市社協を訪れていました。そこで二人は出会い、平成29年4月キラリっ子ファミリーカフェを立ち上げました。活動をはじめたことで、これまで親の会では話すことができなかった通級を利用していない保護者や他市に住む保護者、未就学児の保護者にも出会えて、人とのつながりが広がりました。
子育てに関する迷いや不安をみんなで支え合う
キラリっ子ファミリーカフェでは、毎月おしゃべり会を開いています。おしゃべり会には、3つのルールがあります。「①チクチク言葉(批判やダメ出し)は使わない」「②ふわふわ言葉(励まし、肯定、共感)で話す」「③知り得た話を外部に漏らさない」です。
活動をはじめた頃は、子育ての迷いや不安から落ち込み他の参加者たちに励まされていた保護者が、最近は先輩としてアドバイスしている場面も見られます。中村さんは「先輩ママも誰かの役に立てているという実感が得られて嬉しそう。来たときは暗い顔をしていても、帰るときはみんな笑顔になっている」と言います。「同じ悩みを抱えている人や困りごとを乗り越えた人たちに話を聞いてもらうことで、将来に前向きになれたりホッとしたりして、あたたかい涙も見られる」。そう話す稲場さんはペアレントメンター(発達障害のある子どもの保護者が講習を受講した後、悩みを傾聴し寄り添いながら情報提供する相談相手)としても活動しています。
発達に凸凹がある子どもは周囲の友達から否定されてしまう経験も少なくありません。ときには保護者が責任を負うこともあるため、親の自己肯定感が低い傾向があります。キラリっ子ファミリーカフェは、普段褒められず心が削られるような苦しい思いをしている保護者が、他者から認められ共感してもらえる居場所になっています。
おしゃべり会が終わればそれぞれの社会に帰ります。帰った先の社会で辛いことがあると、その苦しい思いを持って、またおしゃべり会に参加します。中村さんも稲場さんもこのサイクルを改善したいと思っています。
中村さんは「子どものために〝お母さんスイッチ〟を入れて自分を抑えている保護者が多い。子どもに対する支援だけではなく、子どもに寄り添う保護者へも手を差し伸べることが大切」と強調します。そして、「子どもの感じ方や記憶の仕方がみんなと少し違ったり、発達の仕方がゆっくりだったり、気持ちをコントロールすることが苦手だったり。子ども自身の困りごとを知ってもらって、周りのあたたかい心が育てば少しずつ社会は変わっていく」と話します。
発達障害啓発週間にむけて
4月2日は世界自閉症啓発デー。同日から一週間は発達障害啓発週間です。キラリっ子ファミリーカフェでは、今年はじめて「『あの子の気持ちを知ってみよう』体験スタンプラリー」を立川市子ども未来センターにて開催します。当日は不器用な子どもの気持ち、言葉が不自由な子どもの気持ち、見え方が違う子どもの気持ちを理解する疑似体験などを企画しています。稲場さんは「障害を知らない人や気づいていない人に知ってもらいたい。そのうえで発達に凸凹のある子どもとその保護者に寄り添ってほしい」と言います。
中村さんは「最終的には、おしゃべり会に誰も来なくなる日が来てほしい。それはつまり発達特性の理解が地域で得られたということだから」と今後さまざまな障害を含む「多様性」への理解がすすんでほしいと想いを話します。
イベント期間中 掲示するポスター
発達に不安がある子どもを育てる保護者同士が支えあって子育てをしていくために設立。毎月1回、火曜日あるいは土曜日に立川市子ども未来センターなどでおしゃべり会などをしている。
https://ameblo.jp/tachikawa-kiraricafe/