福島県南相馬市/平成29年3月現在
佐藤さんは「災害時要配慮者支援センターは、直接、要配慮者を支援するのはなく、“人が集まる脳みそ”」と表現します。
このセンター構想の具体化は、「福祉避難所設置・運営マニュアル」の検討と合わせて、地域自立支援協議会の災害対策部会から「福祉避難所指定選定等検討会」へと舞台を移して検討しました。そして、平成27年3月には、福祉避難所と災害時要配慮者支援センターの設置に関する図上訓練(演習)を実施しました。
センター構想では、一般避難所で要配慮者が過ごす環境をつくりつつ、そこでは難しい要配慮者を見立てる職員がいてセンターに連絡が来ることを想定しています。また、在宅にとどまっている要配慮者は、センターからアプローチしてニーズを拾ってくる流れを想定しています。
図 災害時要配慮者支援センターが想定する福祉避難場所での受入れの流れ
人的支援・人員輸送支援の体制づくり
検討の当初から、ハード面の整備とともに、ソフト面の人的な体制づくりが課題でした。特に災害時要配慮者支援センターでは、センターの構成員を市の職員と福祉専門職で担うことを想定しており、後者の専門職をどのように確保するかを検討する必要がありました。
そこで、市が災害時要配慮者支援センターと福祉避難所を開設し、そこに人的支援の必要性が生じたとき、介護職員等の派遣を市から市内の法人に要請するための「災害時における人的支援に関する覚書」を取り交わす取組みがすすめられました。東日本大震災のように市全域に被災が及ぶような災害では人を出す余力がどの法人にもないことも考えられます。その意味では、被災が一部にとどまり動ける法人があるような災害を想定したものとなっています。
また、一般の避難所から要配慮者を福祉避難所に移すための手段を確保するため、法人に福祉車両の派遣を市から要請するための「災害時における人員輸送支援に関する覚書」を合わせて作成しました。
これらの覚書は、説明会、意向調査を経て平成27年8月に締結に至っています。また、福祉避難所を運営するための設備を確保するため、平成27年6月には市と福島県福祉機器協会との間で「福祉避難所における福祉機器等の供給に関する協定」も締結しています。
訓練で災害時要配慮者支援センターの立上げ
平成27年8月30日、福島県総合防災訓練が南相馬市で実施された際、訓練会場の一つで「要配慮者避難救助訓練」を実施しました。訓練は、津波警報で一般避難所のひがし生涯学習センターに避難した要配慮者6名を福祉避難所へ輸送し、福祉避難所で受入れるまでを行いました。その際、災害時要配慮者支援センターを立ち上げてその調整のための全体指示を訓練でやってみました。
訓練では福祉避難所の指定を受けている特別養護老人ホームの福寿園、老人保健施設の長生院に福祉避難所として要配慮者を受け入れる役を担ってもらいました。立上げを初めてやってみた災害時要配慮者支援センターについては、福祉避難所指定選定等検討会の委員がその役割を担い、実際に次のことを行いました。
①センターの設置
②災害状況・施設状況の把握 ③施設状況報告 ④要配慮者の避難状況報告依頼 ⑤要配慮者の避難状況報告 ⑥福祉避難所の選定 ⑦福祉避難所開設・要配慮者受入要請 ⑧要配慮者の輸送連絡 ⑨福祉車両への乗車完了報告 ⑩要配慮者の受入れ確認 ⑪要配慮者名簿の送信報告 ⑫福祉機器等の供給要請受入 ⑬福祉機器供給要請確認 ⑭福祉機器供給要請 |
この一連の流れを訓練しました。
佐藤さんは「想定はなんでもよい。まずは流れをつくってみて、それを訓練でやってみることで気づきがある。すると、必ず『違和感』を感じるところが出てくる。その『違和感』こそが関係者の当事者意識につながる。福祉避難所に指定され放しにならないよう、訓練を繰り返す中で多くの関係者を巻き込み、事業所がお互いに手をつないでいけることが必要」と話します。
「津波防災訓練における災害時要配慮者支援センター運営シナリオ」(PDF)
http://m-somashakyo.jp/