(社福)墨田区社会福祉協議会
 地域福祉プラットフォームを活かした、ひきこもり等の複合的課題を抱えた方へのアウトリーチ等積極的な個別支援と地域づくり ―墨田区社協における重層的支援体制整備事業の取組み  
掲載日:2022年12月27日

 包括的相談支援事業

 

地域福祉プラットフォームを担当する社協の地域福祉活動担当は、当初地域支援を実施する中で、多世代交流の会話の中でのちょっとした相談や困りごと・課題をキャッチしていました。しかし、最近は、ひきこもり関連の相談が増えている他、生きづらさを感じていて、今がつらいという相談も本人や家族から直接届けられるようになってきました。

 

本人や家族からの相談・訴えはしっかりと受け止め、何に一番困っているのか、一緒に整理する対応を心掛けています。その上で、案内できる支援機関を紹介したり、さらに整理が必要であれば、確認するために持ち帰って各機関で情報交換を行い、主訴や特性を把握した上で再度話し合う場を設けることもあります。

 

 

地域福祉プラットフォームに相談が入った時点で、既に本人や家族はさまざまなところに相談をしており、逆にどうしたらよいのかわからなくなっていることもあります。そうした際、職員が課題・望むこと等を整理し、適切な相談支援先に一本化できるようにしていきます。社協として直接、課題を解決するというよりは、支援機関に適切につながるようにしていく役割です。一方、整理が難しい問題や継続的に関わる必要性のある問題もあります。また、適切なところにつながっていてもライフステージに合わせて新たな課題も出てきます。つながりながら伴走し続ける必要があり、完全な解決策はないとも考えられます。

 

もともと地域福祉プラットフォームでは、地域包括支援センターや高齢者みまもり相談室との連携はありました。それ以外の相談機関とは、個人情報の問題等で連携は難しい状況にありましたが、重層事業が始まり区が関わることになったことで、分野を横断して専門機関同士の連携がとりやすくなったと言えます。

 

 

参加支援事業

従来は、地域づくりを主軸として支援を行ってきましたが、これまでの小地域福祉活動支援をベースとしながらも、新たに地域資源の発掘・開発を行い、社会的孤立状態にある人に対して、ニーズや特性に応じた地域資源のマッチング・伴走支援を行うことが求められています。

 

そのために、孤立している方が社会・地域とのつながりの選択肢を増やせるよう、地域への働きかけを行っています。具体的には既存団体への受け入れ要請になります。現在、地域で活動している団体(小地域・サロン、(小学校区をまたがる)拠点型サロン、地域食堂・子ども食堂、ミニデイサービスよらっしょ等)にアンケートを実施し、ひきこもりや不登校の方等社会的孤立状態にある人を受け入れることが可能かどうか、どのようなことなら受け入れ可能か(参加者としてか、準備など簡単なことあるいは得意なこと・役割を発揮しての活動者としてか)等を把握しているところです。

 

アンケートからは、小地域福祉活動等は民生委員中心に立ち上がったところが多い経緯があり、受け入れに対して理解を示している団体が多い傾向が見えてきました。また、参加者としての受け入れが多いのですが、会場準備や資料配布等の簡単な活動であれば活動者としても受け入れるという回答もあります。

 

地域福祉プラットフォームに関しても、当人が新たな役割や得意とする役割を担い参加できる場として位置づけています。

 

*ミニデイサービスよらっしょ:なんらかの事情でひきこもりがちになったり、外出がおっくうになってきた高齢者等が参加できる場として、2001年10月に開設・毎週1回2か所で実施しています。

 

*参加支援の実績報告の考え方・・・重層的支援会議を経た支援プラン作成がなくても実績としてカウントする
参加支援の過程に至る部分での支援があった場合には、本人の同意や意向を把握した上でプラン作成がなくても参加支援としてカウントしています。

 

地域づくりに向けた支援事業

 これまで社協が住民とともに行ってきた、小地域福祉活動やプラットフォームでの取組みを基盤とし、それらの既存の地域活動や地域資源に対して、個別課題(8050問題、ひきこもり・不登校等の複合的課題)を受け入れられるような働きかけ・意識付け・体制作りの支援や情報発信等が求められています。また、地域福祉リーダーの育成のため、小地域活動・ふれあいサロン連絡会議、地域福祉活動セミナーを開催し、地域福祉力を高める活動も行っています。

 

アウトリーチ等を通じた継続的支援事業

令和4年度からの重層事業の本格実施にあたり、アウトリーチを通じた継続的支援の強化のため、非常勤のCSWが1名増員されました。地域福祉活動担当としてのCSWは8名体制(常勤5名、非常勤3名)になっています。

 

地域福祉プラットフォームでの相談や困りごとが多く寄せられるようになってきており、それに伴い、地域課題の掘り起こしと気になる方への積極的アウトリーチ、状況把握を行うことが必要となってきています。

 

必要な情報を収集する際、関わりのある団体・関わった方がよいと思われる団体へは電話での情報共有・収集を行い、その後の支援を検討していきます。また、一緒に伴走的な支援を行ったほうがよいと思われる機関とは、一緒に訪問し役割分担をしながら支援を行っていきます。

 

積極的なアウトリーチとして、時間帯や曜日を問わない柔軟な対応が求められており、対象者との良好な関係構築ができるようにしていく必要があります。

 

また、仕組み上、支援会議によって役割分担や支援内容が固まれば、重層的支援会議を経なくても直接アウトリーチを行えるようになり、継ぎ目のない取組みが可能となっています。

 

多機関協働事業(参画)

 区直営で支援会議を毎月1回開催しています。支援会議および多機関協働事業実施における各課への案内や会議の実施は区が行っています。主管課及び関係部署の係長・課長15~16名が支援会議に参加し、毎回2~3件のケースを検討しています。

 

社協からは、CSW総括リーダーが会議に毎回参加し、会議の運営に協力しケースに関わる知見提供等を担っています。また、重層的支援会議にかけられる際のプラン原案の作成も行っています。

 

支援会議に挙げられた段階で、ある程度役割分担ができた場合は、アウトリーチ等の継続的支援につながります。また、初期相談支援機関だけでは方向性に行き詰っているケースや、個々につながるとよいと思っていてもつながらないケース、まだ相談に至っていないが地域で課題となっているケース等が支援会議にかけられます。

 

多機関協働における重層的支援会議は、本人同意に基づくものであり、プラン作成は昨年度は1件となっています。

 

*個人情報の取り扱いについて・・・支援会議における個人情報については、区により関係法令の手続きを経て、現在支援会議にて共有できることとなっています。更に、毎回支援会議では守秘義務に係る誓約書を提出しています。

 

(3)現状の課題・今後の展望

地域福祉プラットフォームの充実と個別ケース(複合的課題)への積極的アウトリーチ、関係構築、伴走支援を両輪で行うこととなっています。地域づくり・参加支援は、小地域福祉活動等の経験のある職員がいますが、個別ケースの対応は、CSWの力量を補っていくことが必要となっています。

 

小地域福祉活動等に取り組みつつ、地域福祉プラットフォームの運営を行いながら、個別ケースの相談が入れば対応しています。職員のスーパービジョン・研修に力をいれていきたいが至っていない状況です。現状としては目の前に来たものをこなしている状況にあり、対応できることとできないことを明確にしていく必要性も感じています。

 

また、重層事業を始めてから個別支援の割合が地域支援に比べて多くなってきています。そのバランスをどのように取っていけばよいのかが重要です。

 

さまざまな機関との連携のしやすさや、個人情報の共有といった重層事業の良さを最大限活用しながら、将来的にどのようなビジョンを持ち、進んでいくのが社協として地域福祉の推進や地域共生社会の実現にとってよりよいのか、考えていく必要があります。

 

取材先
名称
(社福)墨田区社会福祉協議会
概要
(社福)墨田区社会福祉協議会
https://www.sumida-shakyo.or.jp/
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