社会福祉法人 聖光会 理事長 石川雅昭さん
あらまし
- 自分たちの保育を顧みながら、組織全体で広報活動に注力し続ける聖光会に取材し、これまでの取組みから感じたことや大切にしていることをお聞きしました。
積み重ねてきたものを伝えていく
都内4か所の保育園を運営する社会福祉法人聖光会。そのルーツとなる保育園の設立は75年前の戦後に遡ります。年月を経て培ってきた伝統的な保育の手法を大切にしながら、社会の変化に応じた保育のあり方を問い続けてきた当法人。保育園を取り巻く環境が大きく変わり始めた7~8年前、法人や各園が積み重ねてきたことを外へ発信していく必要性をこれまで以上に強く感じたといいます。
各園のウェブサイトをつくり直すことからスタートした聖光会の広報活動は、時代の移り変わりとともにその対象も変化していきました。「広報に注力し始めた頃は、自分たちの保育への考えや取組みを広く知ってもらうことが目的でした。ただ、近年で保育分野でも人材確保が課題になり、広報活動の中でも取り組む必要性が出てきました」と、法人理事長の石川雅昭さんは振り返ります。
現在は法人や各園のウェブサイトに加え、コロナ禍以降はSNSによる広報を本格的に展開。法人ウェブサイトには各園のブログや、保育に関する一問一答などのコンテンツが設けられ、保育に対する組織の姿勢がさまざまなかたちで表現されています。SNSでは写真や動画から日々の園の雰囲気を垣間見ることができ、求人活動につながる側面も強くなっているといいます。
園のブログやインスタグラムでは、職員が日々感じたことや
思いを発信することを大切にしている。
「自己満足」で終わらない広報活動へ
こうした日々のブログやSNSの運営は職員が持ち回りで担い、組織全体で取り組むことを大切にしてきました。「特定の職員だけでなく現場を巻き込むことで、よりリアルな考えや雰囲気を表現できています。また、広報活動を通じて、職員が自身や組織を顧みることや、外部とのつながりを再認識するなど、近視眼的にならないためのきっかけにもなっています」と、石川さんはその意義を話します。
一方、「広報においては素人である」という前提に立ち、当初から広報のプロを外部から伴走者として招き、なんとなくではない、根拠に基づく広報活動がすすめられてきました。石川さんは「ウェブサイトを制作して終わりといった、広報をやること自体に意義を覚える状況は非常にもったいない。『自己満足』な広報ではなく、届ける相手を明確にしたり、効果を検証しなければ広報の意味がないと考えます。その点でも、自分たちだけでなくプロと組んで広報を考えることは有効でした」と強調します。
探りながら、自分たちの保育を表現していく
試行錯誤で広報活動をすすめてきた聖光会ですが、まだまだ課題はあるといいます。良かれと思って発信した情報が相手の求めていないものだったり、新たな商品ではなく「保育」を広報で扱うことだったり。石川さんは「保育や福祉はある種、感覚的なものを表現していかなければなりません。だからこそ、定期的に数字やプロの目線から広報を振り返ることが重要であり、自分たちのどこに光を当てて伝えていけばいいのかを探り続ける必要があります」と話します。正解はなく、取組みを積み重ねる中で実を結ぶ広報活動。聖光会は環境の変化に対応しながら、広報のあり方を問い続けていきます。
https://www.seiko.or.jp/