帰宅後の夕食の悩みを少しでも減らしたい
1954年の設立から仏教保育の方針の下、地域の子どもたちの成長を支え続けてきた(社福)三宝会まどか保育園。同園では2019年から子ども食堂「まどか食堂」を実施しています。園長の嶺岡里花子さんは「園の保護者から『帰宅後に食事をつくるのが大変』など夕食の悩みを多く聞いていて、その負担を軽くしたいと思っていました」と話します。保育士でまどか食堂代表の二見知宏さんは「園の中で支援が必要そうな家庭が何件かあり、帰宅後の生活も気がかりだったので、保育園で子ども食堂ができないか検討をはじめました。
保育園には衛生面をクリアした給食室があり、子どもの大好きなメニューを熟知しています。子ども食堂を始めるにはぴったりな環境だと思い、月1回、栄養士がつくる栄養たっぷりな夕食を園で提供することにしました」と振り返ります。子ども食堂の開催日の午後のおやつは、近所の障害者施設でつくるパンを出して、空いた給食室を子ども食堂の準備や調理に充てることにしました。運営には、保育士や調理士、まどか保育園で働いていたOBがボランティアとして関わってくれることになりました。二見さんは「勤務期間内で出られる職員は出て、勤務時間以降はOBの方に対応いただくといったように、職員の負担にならないように配慮しました」と話します。
食材のほとんどが地域の方からの寄附によるもので、補助金も活用しています。二見さんは「市の広報誌でまどか食堂のお知らせをしたのですが、それを見た地域住民や園の保護者のつながりから、『食材を寄附したい』という申し出をたくさんいただきました。野菜は近隣の農家さんから、肉は地元の精肉所から、お米は武蔵村山市の姉妹都市の長野県栄村からと、どれも市報を見て連絡をいただいた方ばかり。本当にありがたいです。この地域だけではなく、全国で子ども食堂への関心が高いことも実感しました」と反響を話してくれました。
しかし、スタートして1年ほどでコロナ禍に突入し、「まどか食堂」は一時休止することに。嶺岡さんは「コロナ禍は子ども食堂、保育園のあり方自体を考えさせられる出来事でした。職員はいるけど、園児は一人も来ない。そんな日が続き、保育園として何かできることがないか全家庭に聞いたところ、多くの家庭から出たのが『食事が大変』『食費がかかる』といった悩みでした。そこで、まどか食堂を会食形式ではなく弁当形式にして再開することにしました」と話します。職員自ら園児の家庭に出向いてお弁当を渡したり、園の駐車場にテントを張り、ドライブスルーのような形にしたりしたことも。原則、小学生以下の子どものみ対象ですが、1食100円という破格の値段もあり、大反響を呼びました。
まどか食堂から生まれた地域の商店街とのつながり
それからしばらくはお弁当販売を続けていましたが、本来の子ども食堂の目的と、お弁当販売という現在の形とのギャップを感じるようになり、すべての家庭に「今何が必要とされているか」再度アンケートを取りました。その結果、「お弁当を自宅に持ち帰ってゆっくり食事したい」という声が圧倒的に多かったため、そこでの反響からお弁当販売を主流にすることになりました。二見さんは「開催場所は、園の教室が少し手狭だったので、隣の長円寺さんの斎場をお借りすることに。隣の長円寺の住職に相談したら『地域のことならぜひ』と快く受け入れていただきました」と話します。
現在、まどか食堂は月1回、長円寺の斎場で開催され、予約制でお弁当が買えるようになっています。開催のお知らせは毎回Instagramで公開し、予約枠が瞬時で埋まるほど大人気です。保護者からも大好評で、園児も「今日はまどか食堂の日だよ!」と楽しみにしているそうです。
二見さんは「Instagramを見た地域の商店街の方から『まどか食堂の日に出店したい』と申し出があり、今では地域の商店のつながりから、パンやクッキー、お豆腐、総菜などのお店が5~6件ほど出店してくれています。開催日はマルシェのようににぎわっています」と話してくれました。お店からも「月1回のまどか食堂で販売できることが生きがい」、「子どもや地域の方々とおしゃべりをしながら販売できるのが嬉しい」など、喜びの声があがっています。お弁当を予約しなくてもお惣菜やお菓子が買えるので、夕食のおかずや軽食をここで買うことができるのは魅力的です。
保育園がやるからこそ意味がある
まどか食堂を始めて6年。新しい試みを始めています。二見さんは「2024年くらいから本来の子ども食堂のような会食形式を見直し始めています。買ったお弁当を隣の斎場で食べる場合は、おまけでスープやデザートを付けています。居場所のような側面も強めていけたら」と話します。嶺岡さんは最後に「夕食時の親の負担を月に1回でも減らして、親子でゆっくり過ごしてほしい。これからも“まどか保育園らしい”子ども食堂を続けていきたい」と語ってくれました。
まどか食堂
- 場所:武蔵村山市本町3-40-1 長円寺斎場
開催日:Instagramにて発信
開催時間:16:30~18:00 予約制・数量限定
参加費:子ども弁当 100円 小学生以下対象
問合せ先:電話042-560-1855(まどか保育園)または「まどか食堂」Instagram
https://www.madoka-hoikuen.com/
社会福祉法人三宝会まどか保育園Instagram
https://www.instagram.com/madokasyokudou/