福島県浪江町/平成30年3月現在
福島県いわき市から国道6号線を北上していくと、「帰還困難区域」を通り抜けた先から浪江町が始まります。やがてその道は市街地へと入っていき、行き交う人の姿が見られ、日中だけの立ち入りができた平成26年8月27日に店を開いたコンビニエンスストアのローソン浪江町役場前店が姿を現します。その隣には、平成28年10月27日にできた浪江町仮設商業共同店舗施設「まち・なみ・まるしぇ」。浪江町に暮らしの息吹が聞こえてきます。
このすぐ近くにあるのがNPO法人Jinの「浪江町サラダ農園」です。浪江町のこの地域が「避難指示解除準備区域」に再編され、日中のみの立ち入りが可能になったのは震災から2年の月日を経た平成25年4月でした。NPO法人Jinは、すぐに元の所在地のあった場所で事業所を再開し、農業を営み始めました。日中しか浪江町には立ち入ることができなかったため、Jinが取組み始めた復興に賛同する高齢者、障害者が、二本松市や本宮市の仮設住宅、南相馬市の事業所を車で出発し、復興の地を耕し続けてきました。
図 津波の被害を受けたエリアと帰還困難区域の間に
事業所があった「浪江町サラダ農園」
そして、それからさらに4年間の月日を経た平成29年3月31日。事業所のあった地域の避難指示が全面解除する日を迎えました。そのときには、既に「浪江町サラダ農園」の栽培するトルコギキョウをはじめとする花は、極めて品質の高い商品として市場に出るものとなり、高齢者、障害者たちが営む野菜づくりも順調にすすんでいました。それは、日中の限られた条件のもと、高齢者、障害者とともに切り拓いた復興のいしずえです。そして、平成29年9月には栽培に一から挑戦してきたブドウも見事な粒を実らせることに成功しました。また、農園を訪れる人が思わず立ち止まるうさぎたちも、たくさんの命を育み元気に過ごしています。
避難指示の解除を迎えた日をNPO法Jin代表の川村博さんは、こうふり返ります。「昨日から続く今日が来た感じですね」。それはそれは昨日と変わらない明日へと続く今日でした。今日がゴールではなく、地域の暮らしは営み続けるものであることを感じさせる言葉です。解除や事業所の再開は一つの通過点。その地域で暮らし、復興へと歩み人には、真の「自立」という、めざしたい明日があるからの今日です。
浪江町サラダ農園で栽培に成功したブドウとトルコギキョウ、
そして、元気なウサギたち
浪江町サラダ農園