「大島マリンズfc」(以下、「マリンズ」)は、大島では島内唯一の小学生のサッカー(フットサル)チームです。チームは平成6年に結成され、現在監督を務めているのは、大島社会福祉協議会主事の今津登識さん。今津さんは、24年に息子さんがチームに入ったことをきっかけにコーチとなりました。2年目に当時の監督が島外へ転勤となったため、監督を引き受けたところ、その年の10月16日に土石流災害が発生しました。被災した元町地区を中心に混乱が続いていましたが、当時、子どもたちは外で遊ばないようにといった自粛ムードがありました。
小学校のグラウンドにガレキを置かざるをえなかった
発災後、今津さん自身も社協職員として災害支援の業務に追われていましたが、子どもたちのことを考えると、「むしろ、サッカーの練習をさせ体を動かさせてやった方が良いんじゃないか…」と思いましたが、当時はそれをかなえてあげることができませんでした。
マリンズが練習を再開できたのは発災から1か月後でした。そして、発災前に練習していたつばき小学校のグラウンドでの練習を再開できたのは、さらに先の半年後のことでした。グラウンドが使えなかったからです。つばき小学校は、土石流災害の被害があった元町にあり、被災現場のすぐそばにありました。そのため、そのグラウンドには被災現場から運ばれたガレキが積まれました。小学校のグラウンドにガレキを置かざるを得ない。それは、命にも関わる捜索活動が懸命に行われる中で起こったことでした。
今津さんは「現場から一番近くて広い場所が小学校のグラウンドだった。それはやむを得ないことだろう」と話します。しかし、ガレキそのものはグラウンドから撤去されたものの、今もなお、小さな破片は残ってしまいました。学校やPTAが呼びかけてみんなでその破片を拾いましたが、全てを拾いきることはできませんでした。今津さんは、正月休みや昼休みに仲間も手伝ってくれる中、コツコツとその破片を拾い続けました。「グランドが被災したわけではない。そこに残ってしまった破片を一度はみんなで拾い、もう気にしなければそれまでだが、一度気になると、照明に反射する破片を見つけて拾ってしまう」と、拾い続けるその気持ちを話します。
今津さんが拾い集めたガレキの破片の一部