あらまし
- コロナ禍を経て地域の子どもや子育て家庭の孤立がさらに課題となっている地区も多いのではないのでしょうか。
- 今回は立川市社協が市と共に設置をすすめている地域の拠点「地域福祉アンテナショップ」(※)で気になる子どもたちを見守るトワイライト事業を行っている地域福祉コーディネーター(以下、地域福祉Co)と主任児童委員の皆様にお話を伺いました。
左から、立川市社協 地域福祉Co丸山あかねさん、主任児童委員 植益志保子さん、主任児童委員 杉本みちるさん、立川市社協 地域活動推進課 地域づくり係長 小山泰明さん
事業立ち上げから現在まで
2016年2月、立川市社協が参加をしている立川市子ども・若者自立支援ネットワークが「子どもの貧困」をテーマに研修会を実施しました。それをきっかけに、羽衣町・錦町のエリアでは、主任児童委員と継続的に子どもの支援について話し合いを実施しました。そのなかで2018年から始まった活動が「子どものトワイライト事業」です。はじめは、両親が共働き世帯の子どもの孤食の課題に対応することを目的にスタートしました。
開始時はアパートの一室で行っていましたが、取り壊しにより学習館等へ会場を変更しながら開催を続け、現在は週1回17時~20時まで、「地域福祉アンテナショップ」の「はねきんのいえ」で開催され、未就学児から中学生の子どもたち数名が通っています。時々この事業を卒業していった子どもが立ち寄って話をしに来てくれることもあります。学校の長期休みの期間にはトワイライトではなく、朝食を一緒に食べる等の週1回の見守りに切り替えます。また、地域のイベントに誘うなど思い出づくりに一役買うこともあります。
運営は主任児童委員2名と立川市社協の地域福祉Co2名が中心となっています。1日の最後には振り返りの時間を設け、子どもたちの様子を共有しています。
(※)地域福祉アンテナショップ
身近な場所で、誰でも相談でき、ふらっと立ち寄れる場所。
立川市内に「全部型」と呼ばれるおおむね週2~3日開設しているものが4か所、「協働型」と呼ばれるおおむね月2日以上開設しているものが9
か所ある。立川市地域福祉計画及び地域福祉市民活動計画(あいあいプラン21)では「地域福祉アンテナショップ」の設置が重点推進事項になっており、立川市内全域での設置がすすめられている。
↑ はねきんのいえ外観
さまざまな子どもの環境やコロナ禍を経て
子どもの孤食を解消することをきっかけに始まった事業ですが、地域の子どもたちのさまざまな背景やコロナ禍もあり、だんだんと利用する子どもたちの様子に変化がみられています。運営を担うスタッフの皆さんは「当初は子どもだけ、という意識でしたが、子どもを支援するには家庭全体を見ていかないといけないという認識に変化していきました」と口を揃えます。
例えば、親がお酒を飲んでから迎えに来たり、トワイライト事業に来ていない幼いきょうだいが夜ご飯を食べていない家庭がありました。スタッフ同士で話し合い、その親御さんと幼いきょうだいも含めてトワイライト事業で夜ご飯を食べることを提案しました。親御さんには子どもとの関わりが分からないという悩みがあり、スタッフはまずその悩みを受け止め、子どもとどう接して行けばよいかを一緒に考えていきます。
また不登校の子どもが来てくれた時には、トワイライト事業が外に出るひとつのきっかけとなり、学校に通う時間が少しずつ長くなってきたという嬉しい出来事がありました。
はじめは試し行動をとる子どもも多いですが、継続して通っているうちにご飯を食べられるようになったり甘えるようになったりと子どもの姿は変わっていくと言います。年単位で関わりながら、家庭のそのままの姿を受け入れ、親子をジャッジしない姿勢を意識しながら支援しています。
地域の関係機関と一緒に
トワイライト事業はクローズドの場所として、主任児童委員、児童館、学童保育所、学校の養護教諭等の関係者・団体から「学校の遅刻が多い」や「幼いきょうだいの世話をしているようだ」等の地域で気になる子どもをつなげています。現在は開始から5年が経過し、地域の関係機関への認知度も上がり、小学校の養護教諭から直接連絡が来たり、小学校の校門前であいさつ活動をしている子ども会の会長からの「いつも遅れてくる子どもがいる」「最近暗い顔をしている子どもがいる」という情報から、学童や児童館にその子どもの情報を聞いて参加につなげることもありました。
オープンな場でないので、この事業に誘う際には最大限配慮していると言います。「どうしてうちの家庭を誘うのか?」という不信感をぬぐい、安心して通ってきてもらえるよう「親御さんに楽になってもらいたい」「この場はお父さんお母さんの味方である」という思いを伝えながら関わり、この場においでと言える関係性をつくるまでに1年かかることもあるそうです。
また地区内には児童養護施設等を運営している至誠学舎立川があり、児童養護施設の施設長や心理士がこの事業に関わってくれています。スタッフが相談することもあり、大変助かっているそうです。そのほかに看護系や教育系の大学生のボランティアも来てくれています。参加している子どもたちにとっては少し先の将来を考えるきっかけとなると同時に、大学生たちも自身の貴重な経験としてくれているそうです。しかし、大学生は資格取得のため3・4年生になると忙しくなることが多く、今後はボランティアの確保が課題となっています。最近では近隣の通信制の高校生がボランティアに来てくれる関係が新たにできたそうです。
今後目指すものとは
主任児童委員のおふたりは「今後中学生の居場所づくりを考えていきたい」と話します。特に不登校の中学生の日中の居場所や学習支援等、貴重な3年の中学生生活のあいだにこれから生きていく術を一緒に模索してくれるような場所の必要性を感じているそうです。
また地域福祉Coの丸山さんは「子どもたちのステージに合わせた地域資源をつくっていきたい」と語ります。小学生には地域とのつながりづくりや体験学習、中学生には進学相談や学習支援ができる場、高校生には働くことのイメージがわくような職場見学等の場があるといいのではと考えています。ただ、これらのことはトワイライト事業でできることではなく、立川市社協には12名の地域福祉Coがいるので、別地区のCoとも連携しながら、さまざまな課題をもつ子どもたちをネットワークで見守り送り出す関係づくりを目指したいと言います。あわせて立川市社協地域づくり係長の小山さんは「立川市全域でみてもこのトワイライト事業はとても貴重な資源となっている」と話します。トワイライト事業を起点としながらさまざまな地域資源につなげられるようなネットワークづくりをすすめていくことを目指します。
今回「子どもたちを対象としたトワイライト事業」と聞いて、夕方の時間に子どもたちが集う居場所を想像しながらお伺いしましたが、家庭をまるごと支援している姿に感銘を受けました。今後このトワイライト事業を起点に立川市でさまざまな展開が期待されます。
(取材日:令和5年12月26日)
※取組みの内容及びご紹介している皆様の部署・肩書きは取材当時のものです。
https://www.tachikawa-shakyo.or.jp/