茨城県常総市/平成29年3月現在
茨城県常総市では、「平成27年9月 関東・東北豪雨」によって鬼怒川で1か所の堤防決壊、7か所(常総市内3か所)の溢水・越水が生じたほか、堤防の漏水や護岸崩壊等により、市の1/3にあたる約40㎞2が浸水しました。それにより、死者2人、負傷者40人以上、全半壊家屋が5,000棟以上といった甚大な被害がありました。
また、多くの住民が自宅に取り残され、ヘリコプター等の救助を受けました。さらに、災害対策本部を設置した市役所庁舎が被災し、孤立しました。
鬼怒川の決壊により、市内では特養2か所、グループホーム2か所が被災しました。同じ系列の施設へ避難する等、各施設で対応が取られました。
在宅の要配慮者に対しては、ケアマネジャーが中心となって、高齢者等に早めの避難誘導を行いました。鬼怒川が決壊した後も、地域包括支援センターの専門職でチームを組み、県内の保健師とともに地域の高齢者の安否確認を行いました。
常総市では、今回の水害の経験をふまえ、検証報告書の作成やタイムラインの作成、住民への意識啓発など、新たな動きが始まっています。
平成27年9月 関東・東北豪雨の概要
(1)気象の概況
平成27年9月7日に発生した台風18号や前線の影響で、西日本から北日本にかけての広範囲で大雨となり、その後、台風18号から変わった低気圧に流れ込む南の風と台風17号周辺からの南東風が主体となり、湿った空気が流れ込み続けた影響で、多数の線状降水帯が次々と発生し、関東地方と東北地方で記録的な大雨となりました。特に9月9日~10日にかけ、栃木県日光市五十里観測所は、昭和50年の観測開始以来最多の24時間雨量551㎜を記録しました。
気象庁は9月18日に、平成27年9月9日から11日に関東地方及び東北地方で発生した豪雨について、「平成27年9月関東・東北豪雨」と命名しました。
(2)河川の氾濫
9月10日の午後0時50分頃、常総市三坂町で鬼怒川の堤防が決壊しました。この決壊を皮切りに、市内のおよそ1/3の面積にあたる40㎢が浸水する被害となりました。
決壊点近くの建物は流出し、浸水解消までおよそ10日を要しました。
(3)被害の概要
常総市内では、多くの家屋が流出するとともに、死者2人・負傷者40人以上、全半壊家屋が5,000棟以上という甚大な被害がありました。
また、多くの住民が自宅に取り残され、ヘリコプターによる救助人数は1,339人に上りました。
市担当者は、「小貝川のときの経験が、逆に油断を招いたのでは」とふり返ります。昭和61年に発生した小貝川の氾濫を経験している市担当者は、「『小貝川の氾濫時はここまで水は来なかった』『うちは大丈夫だろう』と以前の経験が住民にとって安心材料になってしまい、避難が遅れて自宅に取り残された人を増やしてしまうことになった」と話します。
防災拠点となる市役所が被災
9月9日には、台風18号等の影響により関東地方と東北地方で大雨となることが予想されていました。常総市ではその前日に発表された大雨注意報が継続していたほか、9月9日午前5時には洪水注意報も発表された後、午後4時36分には大雨警報と洪水警報が発表されました。また、鬼怒川上流部の日光市など栃木県内では大雨となっていることが報じられていました。
そして、9月10日の午後0時50分に鬼怒川の堤防が決壊し、午後2時頃には常総市役所石下庁舎が浸水しました。それに続き、翌9月11日の午前2時に本庁舎が浸水し、孤立しました。
本庁舎では、床から膝の高さにあたる50~60センチほどまで水が流れ込みました。市担当者は、「見たことのない水の量と速さだった。波が押し寄せ、藁がすごい勢いで流されていくのが見えた」と話します。
浸水のため1階が使用不可能となり、災害対策本部は本庁舎3階に設置されました。また、非常用電源設備が屋外にあったため水没し使えなくなった上、停電により固定電話も使用不能になりました。
職員の被災状況は、鬼怒川付近に住んでいたために床上浸水の被害にあった者、住宅が大規模半壊した者、避難所に家族を避難させて自分は自宅から出勤する者、避難所生活をせざるを得なくなり、避難所から出勤してくる者等、住んでいる地域によってさまざまでした。
家族と連絡が取れず、自分の家族や自宅は無事なのか、落ち着かない気持ちで避難所業務を行う職員が多くいました。
浸水地域及び溢水・決壊現場位置
(常総市・忘れない9.10より)
http://www.city.joso.lg.jp/