熊本県熊本市/平成29年3月現在
平成28年4月14日午後9時26分の熊本地震の前震発生を受け、熊本県社会福祉協議会(以下、「県社協」)では、15日に熊本県災害ボランティアセンターを設置するとともに、都道府県・指定都市社協、各種別団体との協働、また、全国の関係者からの応援派遣を得て、さまざまな支援を行ってきました。
その支援活動の一つに県社協の社会福祉施設協議会連絡会に所属する種別協議会(以下、「種別協」)による状況把握や支援があります。県社協は、この内の7つの協議会の事務局を担っており、それぞれの協議会が主体的な活動により把握した情報を集約し、調整等を行っています。
〔熊本県社協が事務局を担う協議会〕
○熊本県老人福祉施設協議会
○熊本県社会就労センター協議会
○熊本県保育協議会
○熊本県養護協議会
○熊本県身体障害児者施設協議会
○熊本県社会福祉法人経営者協議会
○熊本県知的障がい者施設協会
※ 上記のほか、熊本県社協が事務局を担っていない施設関係の協議会として、熊本県救護施設協議会がある。
種別協による被害状況の把握と支援
各種別協では、前震の翌日である4月15日から一斉に会員施設の被災状況の把握を始めました。経営者協議会を担当していた県社協施設福祉課主事の岩永理恵子さんは「FAXやメールを送信し、返信がないところは被災している可能性があるということで、電話や訪問による状況把握をすすめた」と話します。種別協により、様式や方法もさまざまでしたが、いずれも把握した内容は、「①利用者の状況、②職員の状況、③建物・設備の状況、④物資や支援の必要性」等で、その後の緊急支援につなげています。項目を定めて、自由記述で回答してもらう形をとっている場合が多く、調査時点以降も状況が変われば同じ様式で連絡をしてもらうよう依頼しています。
これらは事務局を担う県社協職員が中心に状況把握を行った協議会のほか、協議会の役員が県社協事務所に詰めて状況確認した協議会や、会長の施設に役員や事務局職員を招集してすぐにその後の対応を話し合った協議会などもありました。いくつかの協議会の地震直後の対応について、時系列で紹介します。
これら各協議会の活動状況から、地震直後の当座の支援は、県内の施設や協議会役員によって自発的にすすめられたことがわかります。続いて近隣県の関係者からの支援、全国からの支援と日を追うごとに広がっています。
また、いずれの協議会も、全国からの窓口となる拠点を設けたうえで、さらにいくつかの拠点となる施設や法人を定め、そこから地域の各施設とのパイプをつくっている点に共通点が見られます。被災状況やニーズを把握するとともに、物資や支援を届けるための双方向のルートをつくるうえで、中間に位置する拠点が重要な役割を果たしました。
県社協施設福祉課長の江口俊治さんは、各種別協による地震後の活動を通じて、「被災状況が深刻な施設から少し離れた地域にある施設が拠点施設となるハブ方式が有効だった」とふり返ります。そして、「今後の福祉施設の災害対策として、①利用者、職員、施設設備の状況把握ができる体制をつくっておくこと、②情報や物資の流れの拠点となるハブ施設を考えておくことが必要」と話します。
また、事例4のリデルライトホームの事例にあるように、熊本県社会福祉法人経営者協議会会長であり、社会福祉法人リデルライトホーム理事長の小笠原嘉祐さんは、「本震を受けて、すぐに益城町や阿蘇地区に人を派遣して被災状況の確認を行うとともに、経営協の役員を自分の施設に集め、役員の法人がブロックごとの拠点となる支援物資供給ルートを設けた。県外からの窓口として物資を受け取るにあたり、①流れを切らないこと、②物資を断らないことを重視した」といいます。また、「各拠点や各施設への配送は、平等に配ることよりも、必要な施設が必要な物を持って行くこととし、拠点施設から先の各施設への配り方は、それぞれの拠点施設に任せて主体的に実施してもらった。支援物資や応援派遣職員のルートは、複数の協議会により重なる部分もあるが、災害時に支援を届けるためには必要」と指摘しています。
多くの社会福祉施設関係者による経験に基づく言葉は重く、今後の災害に備えた検討に生かしていきたい視点です。
(左)熊本県社会福祉協議会 施設福祉課長 江口俊治さん
(右) 施設福祉課主事 岩永理恵子さん
http://www.fukushi-kumamoto.or.jp/