熊本県/平成30年3月現在
事業所が休止となっても、大切にしてきた理念を貫く
熊本地震は激甚災害に指定されたため、施設の改修費は国からの助成金が申請できました。甲斐さんは、「資金の不安は大きかったので、助成を受けられるのは大変ありがたい」と言います。けれども、助成金の査定が終わるまで建物を現状維持しなければなりませんでした。建物の下に埋まっている水道管は破損状態を確認することができず、支障がない地上へ配管を移すなど、すぐに改修ができないことによる対応も必要でした。
改修工事後の第二城南学園の管理棟2階多目的ホールには、縦の大きさが異なる窓が混在しています。全壊を免れた管理棟は損壊した箇所の補修工事をすることになったため、元々の大きさの窓と改修後に枠組みを小さく変更した窓の両方が残ることになったのです。「改修工事は損壊の原因を確認しながらの工事になる。全壊も大変だが、改修も相応の困難がある」と甲斐さんは話します。
第二城南学園は、平成29年3月31日に復旧工事が完了しました。全壊した城南学園のB棟は、震災から約1年近くになる平成29年3月から解体新築工事が開始しました。建物の基礎ができ始めると、「B棟なかと?」と心配していた利用者からも「おうちできるね」と笑顔が見られるようになりました。井上さんは、「『復旧がすすんでいる』と目に見えて分かったことが希望になったのだろう」と話します。新しいB棟が完成し、全体の復旧が完了するのは、平成30年3月の見込みです(平成30年2月現在)。「震災から1年半経って、ようやく日常が戻ってきた」というのが井上さんの実感です。
左の窓の上下が右の窓より小さく改修された
避難後の生活を想定した「避難生活計画」の必要性
法人では、今回の経験を踏まえて災害時のマニュアルづくりの検討を始めています。重視するのは「柔軟性」です。「毎年接近・上陸する台風のことは心配していたが、今回の震災とその後の状況はまったく予想していなかった」と話す甲斐さんは、「今後さまざまな災害に備えていくには、完璧な避難計画の策定を考えるよりも、『計画を策定中の状態』が必要だと思う」と言います。関係者が日常的に災害対応を考えて活動していくことで、ネットワークも実体性がより強まることが期待されます。
また甲斐さんは「避難後の生活」についても、その事前対策の重要性を伝えます。「『今回は城南学園のA棟が使えたが、入所棟がすべて使えなかったらどうするか』『職員も被災している中、少ない人数でどうローテーションを組んでいくか』……。被災後の環境下で、安全を確保しながら基本的な生活習慣を維持していくことや復旧をすすめることを考えていく『避難生活計画』も必要」であると言い、これも状況に応じてその都度修正できる形であることが望まれます。
震災の記録を残し、この経験から感じたことや考えたことを伝えていく作業も、法人が大切にしている役割のひとつです。「数字や写真だけではなく、さまざまな想いや交わした言葉も含めて残していくことが次につながっていく」と、甲斐さんは話します。
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