(社福)岩手県社会福祉協議会
会員の相互支援をすすめる取組みと、県外・県内における災害派遣福祉チームの実践
掲載日:2018年6月14日
ブックレット番号:7 事例番号:74
岩手県/平成30年3月現在

平成28年台風10号における支援活動

熊本での活動から半年を待たずに、今度は岩手県内で発生した災害対応のため、再び災害派遣福祉チームが編成されました。

平成28年8月30日に岩手県に上陸した台風10号では、死者21名、行方不明者2名、住家の全壊・半壊が約2,700棟となるなど、県内沿岸部を中心に甚大な被害が発生しました。岩泉町では小本川の氾濫により平屋建ての高齢者グループホームが浸水し、入所者9名が犠牲になりました。その施設の向かい側にある老人保健施設も浸水のため使用できなくなり、入所者が内陸部の盛岡圏域にヘリコプター搬送されることになりました。31日の午前中、機構本部(県本部)から災害派遣福祉チームにヘリポートでの受入れ支援を行うよう指示があり、マニュアルにはない内容でしたが、急遽対応することになりました。同時に、県本部および事務局で情報収集を行い、被害の大きかった岩泉町へ先遣調査チームを派遣することを決定しました。

 

9月1日と2日、先遣調査チームは岩泉町内6避難所のうち、比較的規模の大きい4避難所を視察しました。そして町福祉担当課と協議のうえ、約200名が避難する最大規模の避難所である町民会館へ1チームを派遣することを決定。9月3日には第1次チームが現地入りし、県保健師チームおよび巡回DMATと情報共有を行ったほか、避難所運営者である教育委員会や行政職員とも顔合わせをしました。加藤さんは「岩泉では保健師も福祉チームも動くだろうという共通理解があったのでスムーズに活動に入ることができた。熊本支援の経験も役立った」と言います。避難所受付近くに福祉相談コーナーを開設し、夜間の見守りのため保健師とともに夜勤者の配置を決めました。

 

夕方には、台風12号の接近により孤立していた集落の住民をヘリで避難させるとの情報が入り、県本部の指示を受け、翌日再びヘリポートで待機することになりました。当初は見守り対応の予定でしたが、新たに開設される温泉ホテルの避難所へ搬送されることとなったため、急遽、世帯単位でのスクリーニングを実施。この対応をきっかけに温泉ホテル避難所への派遣も決定し、2つの避難所にチームが常駐することになりました。状況が刻々と変化していく中、岩手県災害派遣福祉チームは初動から活動先避難所の決定まで臨機応変に対応していきました。

 

孤立地区住民避難所のためのスクリーニング

 

避難所における滞在型支援

岩泉町内の避難所でも熊本での活動と同じく、多職種の複数名で構成されるチーム員が要配慮者への直接的ケアや相談援助、キッズルームの運営など子どもの支援、地元の福祉関係者による取組みを支えるコーディネートなど、高齢・児童・障害の分野を問わずに対応を行いました。

 

 

9月6日には保健・医療・福祉連携会議が開かれ、お互いの活動状況を共有しながら顔の見える関係をつくっていきました。避難所における他職種連携をすすめるうえで、避難所に常駐し要配慮者の状況をよく知る災害派遣福祉チームは、巡回型の支援チームをつなぐ「ハブ」機能を果たすことができました。

これには現地に常駐していた事務局員の存在も影響しています。災害派遣福祉チームは組織としては常駐していますが、チーム員は5日程度を1クールとして次々に入れ替わっていきます。今回は事務局員が現地に常駐していたため、現クールと次クールのチーム員同士の引継ぎや、チーム員と関係団体・関係機関をつなぐコーディネーターの役割を果たすことができました。加藤さんは「今回の活動でチーム内外をつなぐコーディネーションが非常に重要であることが分かった。チーム員は一度避難所に入るとなかなか現場を離れられない。現場に入るチーム員とは別に、さまざまな場面で調整を行うメンバーがいるとよい」とコーディネーターの必要性を指摘します。

 

災害派遣福祉チームの活動は約1か月続きましたが、活動避難所における保健師・看護師配置が常駐型から巡回型に切り替わったことや、対象とするニーズが減少し地元関係者での対応が可能になったことから、地元関係者と協議の上、10月7日に派遣を終了することになりました。チームでは終了時期を見据え、あらかじめ連携会議で今後の対応について協議してもらうなど、地元関係者へのスムーズな引継ぎを心がけました。

 

 

取材先
名称
(社福)岩手県社会福祉協議会
概要
(社福)岩手県社会福祉協議会
http://www.iwate-shakyo.or.jp/
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